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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四話 三人目の人はその八

「それでも」
「行きましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 僕は八条荘の玄関に畑中さんと一緒に扉に出た、すると。
 茶色の髪をショートにした小柄な一五〇位の女の子がいた、童顔で中学生みたいな感じだ。目は丸く大きくてしかもはっきりとしている。
 唇は小さくて赤い、やや日焼けした肌に。
 黄色いシャツに青のジーンズにシューズ、小柄だけれど胸はわりかしあるだろうか。その女の子がだった。
 僕達の前にいてだ、にこりと笑って言って来た。
「はじまましてかな」
「はじめまして」
 僕も畑中さんも女の子にこう返した。
「ええと、確か」
「今日からここに入居することになったんだ」
 何か男の子みたいな喋り方で言って来る。
「宜しくね」
「うん、畑中さんから話は聞いてるよ」
「あたしの名前は水橋美沙」
「水橋さんっていうんだ」
「美沙でいいよ、年齢は十七歳」
 自分の方からどんどん言ってくれた、有り難いことに。
「北海道から来たよ」
「あっ、北海道生まれなんだ」
「札幌で生まれ育ってね。親は普通のサラリーマンだけれど」
 それで、という口調の後で来た言葉は。
「親が沖縄に転勤になって」
「沖縄には行かなかったんだ」
「そっちにあたしの進みたい資格取れる学校でこれといったのがなかったんだ」
「資格?」
「あたし忍者になりたいんだ」
 何で?と思った、忍者と聞いて。
「まあ表の仕事は体育の先生だけれどね」
「忍者って」
「沖縄って忍者の場所じゃないでしょ」
「北海道もそうじゃないのかな」
 松前藩があってアイヌの人達がいるのは知っている、けれどだった。
「あそこも」
「そう、けれど甲賀の人がいてさ」
「それでなんだ」
「それでその人に忍術を教わってたけれど」
 それでもと言うのだった。
「その人に言われたんだ、親が転勤したけれどこっちに残ろうとしたら」
「忍術の勉強に」
「自分に教わるよりこっちに来てね」
 この神戸の八条町にというのだ。
「それでなのよ」
「神戸に来たんだ」
「ここにいい忍術の道場があるのよね」
「ああ、そういえばあるね」
 探偵もやってるらしい、忍術の道場が確かにこの町にはある、僕もその道場の前を何度か通っている。あそこのことかとすぐに察した。
「忍術の」
「そこに通うつもりなんだ」
「それで忍者になるんだ」
「武芸を身に着けてね」
 僕にどんどん話してくれる。
「ついでに八条学園ってさ」
「明日から通うんだよね」
「そう、あそこ大学の体育学部いいよね」
「体育教師になりたいんだったよね」
「そっちの方でもいいって言われてね、忍術の先生に」
「それでなんだ」
「こっちの学校に通うことになったの」
 こう僕達に話してくれた。
「これから宜しくね」
「うん、それじゃあ」
「ところで管理人さんよね」
 水橋さんは僕の顔を見上げて言って来た、小柄なので見上げる形になっている。 
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