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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四話 三人目の人はその四

「あの人和服で登校したけれど」
「制服は?」
「なかったの?」
「何か好きじゃないらしいんだ」
 小夜子さんから聞いたことをここで皆にさらに話した。
「洋服は」
「それで制服も」
「駄目なの」
「許可は得ているらしいけれど」
 和服での登校と授業を受けることは、というのだ。
「それでも洋服苦手らしいんだ」
「あれっ、じゃあ体育の時とかは」
「どうなるのかしら」
「どうなるのかな」
 僕も知らない、このことは。というか今の今までそこまで考えられなかった。
「まあ体育の時はね」
「体操服かジャージか」
「どっちかだよな」
「下は半ズボンかスパッツ」
「それかジャージ」
 とにかくジャージが多い、八条学園もブルマはない。というかブルマなんてもの本当に実際にまだ採用している学校があるのかどうか。
「それしかないわよね」
「どう考えても」
「まあそうだよね」
 僕も皆のその言葉に頷いて返した。
「体育ならね」
「体操服でしょ」
「普通に」
「そういえば小林さんA組だけれど」
 女の子の一人が言った。
「あそこ確か今日体育あるわよ」
「あっ、早速」
「その体育なんだ」
「その時にわかるわね」
 小夜子さんが体育の時に着る服がだ。
「今日に」
「そうだね。それじゃあ」
 僕もその娘の言葉に頷いた、そしてだった。
 そのうえでだ、僕はとりあえず皆に小夜子さんのことをプライベートなことと知らないこと以外は話した。知っていて話せることだけを。
 そして日常の学園生活に入った、だが。
 ここでだ、僕は理科の実験の授業で理科室に向かう時に体操服姿の女の子達とすれ違った。何度も言うがブルマなぞもうこの世に存在しない。
 皆半ズボンかスパッツ、ジャージだ。そうしたことを期待している人達にとっては実に味気ない一団だった。
 そしてその娘達の中にだ、僕は見た。
 小夜子さんがいた、見れば。
 淡い赤のジャージだった、上下共。露出は全くないそのジャージ姿でだった。
 女の子達に囲まれてあれこれと話をしている、その話はというと。
「小林さんスポーツもいいじゃない」
「バスケ本当に本格的にしたことないの?」
「大丈夫、小林さんならすぐにレギュラーよ」
「絶対になれるわよ」
 よく見れば皆女子バスケ部の娘達だ、僕と一年の時に同じクラスだった娘もいる。
 その娘達がだ、小夜子さんにしきりに言っていた。
「だからね、どう?」
「バスケ部入らない?」
「うち何時でも部員募集してるから」
「遠慮しないでいいのよ」
「楽しい部活だからね」
「是非ね」
「で、ですが」
 戸惑いながらだ、小夜子さんは彼女達に礼儀正しく答えていた。
「私はもう」
「茶道部?」
「それと華道部よね」
「日本舞踊部も入って」
「あと書道部にも」
「もう四つも入っていますので」
 話を聞いていて凄いと思った、入学初日でもう四つの部への入部が決まっているなんて。僕はバスケ部だけだ。
「ですから」
「無理?こっちは」
「バスケ部は」
「そうなの」
「な、何と言いますか」
 どうも断りきれないらしい、小夜子さんは。それで戸惑いながら女子バスケ部の部員の娘達に必死に応えていた。 
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