八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四話 三人目の人はその二
「それは」
「普通では」
「普通じゃないです」
断じてだった、このことは。
「小夜子さんのお箸ですけれど」
「はい」
「先の方しか濡れてないですよね」
僕が指摘したのはそのことだった。
「一センチ位しか」
「お箸が」
「本当に日本の食事作法を身に着けている人は」
このことは僕も聞いただけだ、実際には見たのがはじめてだ。何でもとあるやたら長く続いているならず者そのものの新聞記者が主人公の料理漫画で描いてあったそうだけれど。
「そうだと聞いています」
「お箸がですか」
「はい、ですから」
それでだとだ、僕は小夜子さんに言った。
「小夜子さんは」
「食事作法が、ですか」
「完璧です」
少なくとも僕が見たところだ。
「姿勢も動きも」
「そうですか」
「とても。ですから」
それでだとだ、僕は食べながら小夜子さんに話していく。僕の箸の濡れ方なんて言うまでもないことだった。
「凄いですよ」
「そうですか」
「ですから自信持っていいです」
「私もそう思います」
「私もです」
畑中さんに詩織さんも小夜子さんに言う。
「小夜子様はです」
「もっと自信持っていいです」
「見事な方です」
「大和撫子っていいますか」
「大和撫子ですか」
小夜子さんは詩織さんのその言葉に反応して言った。
「常に両親に言われています」
「大和撫子になれ、ってですか」
「そうです、そしてその修行の一環として」
それでだとだ、僕達に話してくれた。
「この学園に転校して」
「そしてですか」
「はい、この寮で暮らす様に言われました」
「どういった修行ですか?」
「大和撫子は両親に頼らずともそうでなければならず」
随分難しい話だと思った、聞いていて。
「そしてです」
「そうしてですか」
「はい、その中で真の。心の強さを身に着け」
僕は小夜子さんの話を聞いていて大和撫子はそうなのかと思った、何か随分と厳しい禅宗みたいなものかとさえ思った。
「また誠ある友人もと」
「お友達をですか」
「見付け友情を育む為に」
「一人暮らしをして、ですか」
「そして最後には」
「最後には?」
「旦那様を」
この言葉にだ、僕は何か時代がかったものを感じた。その感じたという感情が若しかしたら顔に出たかも知れない。
「生涯のご主人様を見付けよと」
「ご主人をですか」
「そう言われています」
「そうですか」
「若しそうした方がおられれば」
少し下の方を見つつだ、小夜子さんは僕達に話していく。
「是非共と」
「そうですか」
「はい、そう言われてこちらに参りました」
「八条学園、八条荘に」
「今日から早速です」
この八条荘に住んでというのだ。
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