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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三話 女難、当たった!その八

「お金さえあればな」
「何時でもですね」
「わしの占いで御前さん達の悩みを払わせてもらおう」
「じゃあその時は」
「宜しくお願いします」
 僕だけでなく詩織さんも占い師のお婆さんにお礼を言った、そうしてだった。
 二人で一緒にだった、商店街から八条荘に戻った、そうして夕食を食べてお風呂に入って休んだけれど寝る前に書斎で本を探した。
 そこに畑中さんが来てだ、僕に尋ねて来た。
「どの本をお探しでしょうか」
「はい、文学とかの本を」
「文学ですか」
「最近そうした本も読んでいまして」
 本当のことだ、高校生にもなれば文学の幾つか位読んでみようと思ってだ、それで文学の本を探していたのだ。
「それでなんです」
「それでしたら」
 畑中さんは僕に応えてくれてだ、すぐにだった。
 書斎の左の方に行ってだ、そうしてそこの本棚から一冊の本を取り出して僕に取り出して来た。その本はというと。
「こちらはどうでしょうか」
「源氏物語ですか」
「はい、谷崎潤一郎の現代語訳ものです」
 見れば新々訳と書いてある。
「名作です」
「源氏物語ですか」
「ご存知ですね」
「はい、学校の授業で習いました」
 序文とどんな作品かはだ。
「紫式部ですよね」
「平安時代、そして我が国を代表する文学作品の一つです」
「それの現代語訳ですか」
「源氏物語の現代語訳は幾つかありますが」
「そんなに多いんですか」
「はい、これまで多くの作家が現代語訳してきています」
 それだけ魅力のある作品ということだろうか、ちなみに僕は平家物語なら吉川英治のものを去年読破している。
「その中でもです」
「その谷崎訳はですか」
「最も新しいこれがです」
 その新々訳がというのだ。
「私としては最もいいと思います」
「源氏物語の現代語訳の中で」
「他には円地文子や与謝野晶子、田辺聖子がありますが」
「あっ、お聖さんもですか」
 ついついこの呼び名で言ってしまった、田辺聖子は関西人にとってはこの呼び名で通っている作家さんである。
「あの人も源氏物語を訳していたんですか」
「左様です」
「へえ、そうだったんですか」
「訳文としては非常にいい出来で読みやすいです」
 そのお聖さんの源氏物語もというのだ。
「源氏物語の原文は難解なことで有名ですが」
「その源氏物語がですか」
「非常に読みやすくなっています」
「それはよさそうですね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「田辺さんの作品の特徴が強く出ています」 
 それで、と言う畑中さんだった。
「それで好みが分かれます」
「っていうとやっぱり」
「登場人物が。古典の登場人物であるのですが」
「それでもなんですね」
「大阪の市井の女性の様な感じになっています」
 所謂大阪のおばちゃんである、何しろお聖さん自身が大阪生まれの大阪育ち、何でも通っていた学校gはお嬢様学校だったらしいがそんなものは微塵も感じさせてくれない見事なまでの大阪の女の人だからである。
 その結果だ、あの人の作品の女の人はというと。
「そこに抵抗があるのなら」
「どうもですか」
「谷崎訳は違うのです」
「谷崎の雰囲気ですよね」
「しかしこちらの方が源氏物語の登場人物の雰囲気が王朝の趣が強く出ています」
 そうだというのだ。
「源氏物語独特の」
「ううん、それがその源氏物語ですか」
「谷崎源氏はそうです」
「そうですか。ただ」
「義和様としてはですか」
「僕としては読みやすくて親しみやすい方がいいです」
 読む作品の傾向はだ。
「人間味があって」
「それなら田辺源氏ですね」
 お聖さんのそれだというのだ。 
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