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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三話 女難、当たった!その七

「安心するのじゃ」
「それじゃあ」
「ではじゃ」
 占い師さんは詩織さんとの話の後でだった、次は。
 僕だった、僕が占い師さんの前に座るとだった。占い師さんはすぐにこう言って来た。
「これはいかん」
「これはとは」
「御前さん自身はとてもいい人でじゃ」
 フラグが来た、この場合のいい人と言われると大抵碌なことがない。僕は直感的にそう悟った。そして実際にだった。
「御前さん自身にも責任はないのじゃが」
「それでもなんですね」
「うむ、御前さんには女難の相が出ておる」
「女難ですか」
「色々あるじゃろうな」
「あの女難っていいますと」
 僕に女難があるとすれば原因は一つだった、あいつだ。
 あいつのやけに明るいそれだけに忌々しい笑顔を頭の中に思い浮かべながらだった、僕は占い師さんに尋ねた。
「親父ですか」
「御前さんはこれまで親に苦労させられてきたのう」
「桁外れの浮気者ですから」
「それじゃ」
 まさにという指摘だった。
「御前さんの女難はじゃ」
「親父が原因で、ですか」
「これから数多くの、千難万苦の難が起こるであろう」
「七難八苦じゃないんですか」
「そんな甘いものではない」
 山中鹿之介を超えていた、それも遥かに。
「凄いことになるぞ、しかし」
「まだあるんですか」
「御前さんは極限まで苦しいことにはならぬな」
 その千難万苦の中でもだというのだ。
「その難と同じだけよいこともありじゃ、それに」
「それに?」
「最後は幸せになる」
「ハッピーエンドですか」
「うむ、そうなる」
「ならいいですけれど」
「しかし相当な女難じゃな」
 占い師さんは僕の顔を、水晶玉を見ずに言って来る。
「ここまではっきりと顔に出ておるのは珍しい」
「そうなんですか」
「わしは水晶玉だけでなく人相見もするが」
 それで僕のことはわかるというのだ。。
「御前さんはこれから色々あるがな、いいことも悪いことも」
「それでも最後はですか」
「幸せになる、頑張ることじゃ」
「わかりました」
「そして周りは悪人はおらぬな」
「ええ、それは」
 詩織さんも畑中さんもいい人だ、、お屋敷で働いてくれているシェフの人も運転手の人もだ。クラスの皆も担任の先生もいい人ばかりだ、僕は人間関係ではかなり恵まれている。
「幸い」
「それはこれからもじゃ」
「僕の前に出て来る人は」
「悪人はおらん、ただし癖は強い」
「癖はですか」
「それはある、しかしな」
「悪い人はいないから」 
 僕は自分から言った。
「安心していいんですね」
「そのことはな」
 そうだというのだ。
「だから安心するのじゃ」
「わかりました、それじゃあ」
「うむ、これから何があっても希望は常にあり最悪の事態には決してならぬからな」
 だからだというのだ。
「くじけぬことじゃ」
「そういうことですね」
「御前さんは難があってもそれ以上に幸福の星が後ろにある」
 何か随分といいことを言われていると思った、占い師さんのお話を聞いていて。
「そのことを忘れるでないぞ」
「それじゃあ」
「お金は貰った」
 占い師さんはここでにこりと笑って来た、童話に出て来るみたいな魔女そのものの顔だが笑顔は随分と優しいものじゃった。
「有り難うな」
「有り難う、ですか」
「こちらも商売をさせてもらったからな」
 だから有り難うというのだ。
「よかったわ」
「そう言ってくれますか」
「実は孫に店を譲ってここに出店を出したところだったのじゃ」
「そういえば前にここに来た時はおられませんでしたね」
 はじめて見た、実際に。
「お店持っておられたんですか」
「西宮の方にな」
「それでこの街にいらしたんですか」
「そうじゃ、これでも占いをして六十年」
 かなりの年季だ、年季だけではないにしても。
「その腕が言う、御前さんは末吉じゃ」
「色々あってもですね」
「案ずることはない、ではこれからも何かあればな」
 その時にというのだった。
「わしは何時でもここにおるからのう」
「千円を持ってですね」
「はっはっは、その通りじゃ」
 占い代は持って来いだった、この辺りはお約束だった。 
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