八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三話 女難、当たった!その六
「それでは」
「じゃあまずはね」
僕は占い師さんに二人分、二千円を払ってから詩織さんに言った。
「詩織さんからね」
「私からですか」
「うん、レディーファーストでね」
それでと答えた僕だった。
「そうしない?」
「いいんですか?私が先で」
「いいよ、どっちにしても占ってもらうしね」
「それじゃあ」
詩織さんは僕に遠慮がちに答えてくれた、そしてだった。
まずは詩織さんが占ってもらうことになった、詩織さんは占い師さんの向かい側の席に座った。占い師さんが使うのは水晶玉だった、紫の柔らかそうな敷ものの上にそれがある。
占い師さんは少しの間その水晶玉を見ていた、それから詩織さんにこう言った。
「御前さんはよい方じゃ」
「私が、ですか」
「うむ、よい方じゃ」
まずはこう言うのだった。
「心根は清らかでしかも誠実でな」
「私は」
「そう言うところがな」
まさにというのだ。
「よい証拠じゃ」
「そうなのですか」
「一人になったのう」
「はい、母が死にまして」
「しかし今は一人ではない」
その通りだった、八条荘に入って。
「そしてこれからどんどん賑やかになってじゃ、そして」
「そして?」
「御前さんはその中で沢山の友達と」
それにと言う占い師さんだった。
「かけがえのないものに巡り会えるじゃろう」
「かけがえのない、ですか」
「もうそれは傍にあるかのう」
占い師さんは詩織さんに話す。
「既にな」
「それは一体」
「それはわしにもわからん」
そこまではというのだ。
「しかしじゃ。そのかけがえのないものがじゃ」
「それがですか」
「御前さんの人生を幸せにしてくれる」
「私の」
「御前さんはこれまでお母さんにとても大事にしてもらったな」
「はい、とても優しくて」
それにと答える詩織さんだった。
「私をいつも大事にしてくれました」
「そのお母さん以上にじゃ」
「かけがえのない、ですか」
「それが御前さんを幸せにしてくれる」
そうだというのだ。
「御前さんの人生は素晴らしいものになるじゃろう」
「そうですか」
「御前さん程星回りのよい娘さんはおらぬ」
何か随分凄いことを言っていた、僕にもそれはわかった。
「人生を楽しむのじゃ、よいな」
「わかりました」
詩織さんは信じられないといった顔で頷いた、他にも学業や部活、お金のこともだった。全てがいいとこのことだった。
詩織さんは占いの後で僕のところに来てだ、信じられないといった顔で言ってきた。
「私の人生ですけれど」
「うん、聞いてたよ」
僕はこう詩織さんに答えた。
「凄いね」
「何か信じられない位に」
「素晴らしい人生になるみたいだね」
「本当でしょうか」
「わしの占いは外れたことはないぞ」
占い師さんは温厚な声で言って来た。
「これまで一度もな」
「それじゃあ」
「御前さんはそのまま進むのじゃ」
その人生を、というのだ。
「よいな」
「わかりました」
「どう進んでも御前さんは幸せになる」
本当に凄く幸運な人生らしい。
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