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妖精の義兄妹のありきたりな日常

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ナイトバロン

「はぁー、食った食ったー!!」
「もうお腹いっぱいだねー。」
夕食を終えたナツたちが展示室へ帰ってきた。
「なかなか旨かったな。」
「そうだねー。」
ルーシィとエルザもご満悦のようだ。
「ただいまです。」
「ウェンディの様子はどう?」
一緒に戻ってきたエマとシャルルがウェンディの様子を訪ねた。
「さっき起きて今トイレに行ってるよ。」
「そう、よかったわ。」
「はい、これ。タクヤとウェンディの分の食事ですよ。」
そう言ってシャルルとエマはタクヤに二人分の食事を渡してくれた。
「おう。サンキュー。ちょうど腹減ってたんだよ!」
タクヤはパンを手に取りおもむろに食べ出した。その時、ちょうどウェンディが帰ってきた。
「ただいまです。あれ?みんな帰ってきてたんですか。」
「あぁ。ウェンディはもう大丈夫なのか。」
「はい!!もう大丈夫です!!心配かけました!!」
「ウェンディ。シャルルとエマがご飯持ってきてくれてるぞ。」
タクヤは口にパンを含みながらウェンディに食事を勧めた。
「うん!!ありがとう、シャルル、エマ。」
ウェンディはシャルルとエマに礼を言って食事を始めた。
「ん?お兄ちゃん。ほっぺにパンくずがついてるよ。」
「え?あぁ、さんき、」

ヒョイ パクッ

「!!」
「えへ。お兄ちゃんも結構かわいいとこあるんだね。」
ウェンディはタクヤの頬についていたパンくずを指で掴み、そのまま自分の口に運んだ。
「あ、ありがと…。」
「なーに赤くなってんだよー?」
「はぁ!!?なってねーし!!!」
「でぇきてぇる``。」
「巻き舌風に言うな!!!!」
ナツとハッピーがタクヤを冷ややかす。
((「「ウェンディが大胆になってる!!!!」」))
それを見ていたシャルルとエマは口に出さずに衝撃をくらった。
「早く食事を済ませろ。もうすぐ予告時間だ。」
エルザに急かされたタクヤとウェンディは残っていた料理を胃の中に流し込んだ。


















そして、予告時間の午後10時。
タクヤたちは前もって打合せしていた位置についていた。
どこから襲撃されてもいいように身構える。辺りに静かな緊張が走る。
「…。」
タクヤは辺りを見渡す。今のところ周りからは人の気配はしない。最低でも自分の射程範囲の中にはいないようだ。
「…来ないな。」
グレイも自分の周りに気配がしないことに違和感を憶える。
「本当に来るのかァ?」
「てか、出来ればこのまま来ないで欲しいんだけど…。」
ナツはつまらなそうにし、ルーシィは来ないことに安心していた。
「油断するなよ。どこから現れるか分からないんだからな!」
エルザが気の抜けているみんなに喝をいれていたその時、

パリィィン

「「!!!」」
突如、上空の天窓が盛大に割れた。そこから一つの影が降り立った。
「出たな!!」
「こいつがナイトバロン…。」
「おっしゃァァ!!!燃えてきたァァ!!!」
その影はタクヤたちの依頼内容にあった怪盗ナイトバロンだった。
ナイトバロンはゆっくり目あての虹の架け橋を視界に入れる。
「勝負だコラァァ!!!」
ナツはナイトバロン目掛けて突進していった。
「おい、ナツ!!!考えなしに突っ込むんじゃねぇ!!!」
「こいつはオレが倒ォす!!!火竜の鉄拳!!!!」
ナツは右拳に炎を纏い、ナイトバロンに繰り出した。

スッ ベシッ

「んがっ。」
ナイトバロンはナツの攻撃を軽々かわし、ナツの頭を踏み越えていった。
「言わんこっちゃない!!!」
「我々も行くぞ!!!」
エルザの掛け声でみんなは一斉に駆けた。
「換装、飛翔の鎧!!!」

シュン シュン

エルザは飛翔の鎧に換装し、スピードを上げた。この速さならナイトバロンと言えど捕らえられると思ったからだ。
「…。」
だが、ナイトバロンは表情を変えない。正確には仮面をしているため表情は見えないのだが、
その動きから焦りや不安などといったものが見受けられないのだ。
事実、ナイトバロンに焦りなどなかった。

スッ スッ スッ

(「飛翔の鎧を持ってしても当たらないのか!!?」)
エルザの攻撃は空を切るだけでナイトバロンにはかすりもしなかった。
「なら、その動きを止めてやらァ!!!」

コォォォォ

グレイは構えて魔力を一点に集中させる。
「氷欠泉“アイスゲイザー”!!!!」
グレイはナイトバロンの足下を氷漬けにし、動きを止めようとするが、

ヒュン

ナイトバロンはそれを予期していたかのように高らかにジャンプした。
「ちィ!!!」
グレイは攻撃が当たらなかった事を苛立ち、ナイトバロンを睨んだ。
だが、それはすぐに笑みに変わった。それをナイトバロンは見逃さなかった。
「水竜の…、」
「!!」
なんとナイトバロンがジャンプするのを待っていたかのようにタクヤはナイトバロンの頭上にいた。
氷欠泉で作られた氷を踏み台にしてナイトバロンの頭上を取ったのだ。
「薙刀ァァ!!!!」
タクヤは脚に刃状の水を纏いナイトバロンに振り下げた。

バシャアァァァン

その攻撃は空を自由に動けないため直撃した。ナイトバロンが地面に水と一緒に叩きつけられた。

ドゴッ

「よしっ!!!」
「ナイスチームプレイ!!!!」
「今回ルーシィの出番なかったね。」
「ほっといてよ!!!」
ハッピーとルーシィが不毛なやりとりをしている間にエルザたちが倒れたナイトバロンに近づこうとする。
だが、

バッ

「!!」
「なっ!!?」
「そんな…。」
ナイトバロンはまるで何もなかったかのようにすぐに立ち上がったのだ。
「モロに食らったハズだよな…。」
「なんという精神力だ。」
想定外の事にタクヤたちは困惑した。そのスキをナイトバロンは逃さなかった。

シュン

一気にエルザとグレイを抜き、虹の架け橋へと距離を縮める。最終防衛ラインはルーシィとウェンディだった。
「き、来ましたよ!!!」
「何とかするしかない!!!開け、白洋宮の扉!!!アリエス!!!!」

ボォン

「す、すみませ~ん。」
ルーシィが呼び出した星霊は白洋宮のアリエスだった。
「お願い!!ナイトバロンを食い止めて!!!」
「はい!!ウールウォール!!!!」

モコモコォ

アリエスは大量のピンク色の綿を出現させ、虹の架け橋を囲った。ナイトバロンも綿に捕まり身動きが取れない。
「こんな感じでよかったでしょうか?すみません。」
「バッチリよ!!!ご苦労様、アリエス。」
ルーシィはそう言って鍵を取りだしアリエスを星霊界へ帰した。
「これでひと安心だな。」
「ウガァァ!!!殴らせろってーの!!!」
エルザたちが綿に捕まったナイトバロンの周りに集まった。
「これで依頼も達成ですね。」
「あぁ。ずいぶんと呆気なかったな。」
タクヤがそう言ったのを怒ったのか、ナイトバロンが急に暴れだす。
「キャ~コワーイ、お兄ちゃ~ん。」

ギュッ

ウェンディは声を上げながらタクヤに抱きついた。
「って、抱きつくなよ!!?」
「でぇきてぇる``。」
「だからやめろっての!!!」
ナツたちにまたまた冷ややかされているのをシャルルとエマが驚いた顔で見ていた。
「今日のウェンディどうしたんですか?」
「し、知らないわよ!私だって戸惑ってるんだから!!」
「なんか、今日のウェンディ大胆よねー。」
シャルルとエマとルーシィが今日のウェンディの大胆な行動に不振がっていた。
「とにかく、無事ナイトバロンを捕らえることができた。後は評議院に任せておけばよかろう。」
「ちぇー、なんか燃えたりねぇなー。」
エルザは評議院に知らせ、ナツは不満を漏らしていたその時だった。
「あーーーー!!!!」
ハッピーが突然大きな声を上げた。
「ちょっと!!!なんなのよ!!!うるさいわね!!!!」
「見て見てアレェー!!!」
ハッピーが指差した方には虹の架け橋がカザッテイルショーケースがある。その中には虹の架け橋が入って、
「「なーーーーい!!!!」」
なんと、ショーケースの中身は空っぽだったのだ。
「虹の架け橋はどこに消えたんだ!!!」
「でも、ナイトバロンはここにいるし。」
ナイトバロンは已然ウールウォールに捕らわれたままだ。
「じゃあ、一体どこに…。」
「ねー、お兄ちゃん。」
「だ、だから抱きつくなって、あれ?」
タクヤは抱きついてきたウェンディに違和感を感じた。
「お前が首にしてるのって…。」
「えへへー。どう?可愛いでしょー。」
ウェンディの首にかけられていたのはなんと、








「「虹の架け橋ーーー!!!!!」」








「うふ。」
ウェンディがみんなに自慢げに虹の架け橋を見せつけてきた。
「ウェンディ、どうして…。」
「どうしてって綺麗だったからかけてみたんだよ?」
ウェンディは悪びれた様子などこれっぽっちも見せずにエマに言った。
「さっき、みんなが偽者のナイトバロンと戦ってる隙に盗っておいたんです。」
「ウェンディ…、自分が何してるのかわかってんのか!!」
タクヤはウェンディに本気で怒った。
「お兄ちゃんそんな恐い顔しないでよー。キライになっちゃうよー?」
「…お前、本当にウェンディか?」
「「!!!」」
タクヤの一言にみんなが驚く。
「ふふ、やっぱりバレちゃったかー。」

ブシュゥゥゥゥ

突如、ウェンディの白煙に包まれた。白煙に写し出されたのはウェンディの影、とは言い難い体格の影だった。
「な、なんだ!!?」
「アイツ、ウェンディに化けてたんだ!!!」

キュルルルルル

白煙が次第に影に吸い込まれるかのようにまとわりついていく。
それは一つの大きなマントとなり中から仮面をつけた男が現れた。






「ごきげんよう。」





そして、本物のナイトバロンが現れた。
「コイツが本物のナイトバロンか!!!」
「先程まで君たちが戦っていたのは私の人形“パペット”だ。」
「あれが人形だと!!?」
エルザたちを物ともしない素早い身のこなしはあくまでも人形であり、本物には遠く及ばないというわけだ。
「しかし、これは実に美しい…。マッド氏が大枚をはたいて手に入れただけの事はある。」
ナイトバロンは虹の架け橋を顔に近づけ、まじまじと虹の架け橋を見つめる。
その時、

バシャアァァァン

ナイトバロンに物凄い勢いで水が放たれた。だが、それはナイトバロンにしてはかわす事など造作もないこと。
ナイトバロンは軽々とかわして見せた。
「君、無礼だな。」
「ウェンディは、」
「ん?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

「ウェンディはどこだ!!!!」
タクヤの足下を水しぶきが激しく波打ち立っている。魔力が急激に開放したためだ。
「あぁ、あの少女なら大人しく別の部屋で寝てもらってるよ。もっとも、変装するために衣服などは拝借し、」

ビュン

「!!」
ナイトバロンが全てを言い終わる前にタクヤは一気にナイトバロンとの距離を詰めた。
そして、

ガッ ドカッ ズガッ

相手に反撃する暇すら与える事なく、タクヤはナイトバロンを殴り続けた。
「水竜の…、」
「!!!」
タクヤはナイトバロンの両肩を掴んで口を膨らます。






「咆哮!!!!!」

ザバアァァァァァン

「ちょ、これ…。」
「やりすぎよ!!!」
辺りにタクヤのブレスのせいで大量の水が流されていた。もちろんナツたちも巻き添えを食らってしまう。
「オレたちまで巻き込んでどーすんだー!!!」
「あいやー!!!」
「でも、これならナイトバロンも、」
エマがタクヤの勝利を確信した瞬間、









「ハハハ。すごい威力だな!!!」
「「!!!」」
タクヤの頭上に宙に浮いているナイトバロンがいた。
「あれをかわしたのかよ!!?」
「ずいぶんと暴れん坊な竜だ。滅竜魔導士とはみんなそんななのかね?」
「タクヤと一緒にすんなってーの!!!」
「いや、ナツが言えた義理じゃないから。」
ナイトバロンは余裕の表情を見せている。まだ本気ではないという証拠だ。
「エマ!!シャルル!!ウェンディを探してきてくれ!!!」
「わかったわ!!」
「ウェンディの事は任せてください!!」
「オイラとルーシィも一緒に探すよ!!!」
エマとシャルル、ハッピーとルーシィは展示室を後にしてウェンディを探しに行った。
「さーて、今度こそぶん殴ってやる!!!」
「先程のようにはいかんぞ。」
「人形相手に苦戦していた君たちで何ができるって言うんだい。見込みがあるのは碧髪の子ぐらいだけど。」
「んだとォ!!!!」
ナツは身体中から炎を噴出し怒りを露にする。
「相手の挑発に乗るな。オレが先導を切るからフォロー頼んだぞ!!!」
「よし、ここはタクヤの言う通りにしよう。」
「行くぞ!!!」

ダッ

タクヤがナイトバロン目掛けて突撃した。
「水竜の狼爪!!!!」
タクヤは両手に水の爪を纏い、ナイトバロンを切り裂きにかかる。

ザッ ザンザン ザン

「これじゃ一生やっても当たらないよ。」
「別に当てるつもりはねぇよ。」
「何?」
ナイトバロンはタクヤの攻撃をかわしていくうちに部屋の角に追い込まれていた。
「まさか、これは…!」
タクヤが闇雲にナイトバロンを攻撃したかのように思われていたのは間違ったのだ。
「換装!!!黒羽の鎧!!!!」
「氷魔剣“アイスブリンガー”!!!!」
エルザは一撃の攻撃力を増加させる黒羽の鎧に、グレイは両手に巨大な氷の剣を、二人の強力な武器を出現させる。
「そんなとこじゃよけらんねぇだろ!!!」
「これで終わりだ!!!」
タクヤは巻き添えを食らう前に避難する。
「私はこんなところで倒れるわけにはいけない!!!!」
ナイトバロンは見事な瞬発力を使い、
針の穴に糸を通すような精密な動きでタクヤが避難した事でできた唯一の突破口を目指した。

バキィィィィン

「「!!!」」
二人の攻撃はあと一歩の所でナイトバロンには届かなかった。
「正直、君たちを侮っていたようだ。ここまで追い詰めたのは君たちが初めてだろう!!
だが、私はまだ捕まるわけにはいけない!!!アレを手に入れるまでは!!!!」
ナイトバロンは突破口を抜け、出口の扉を一直線に目指す。あと数十mで逃げられる。
それだけが頭にしかなかった。
「今日の所は私の勝ちだ!!!!」
「いいや、お前の負けだ!!!」
「!!!」
ナイトバロンの目の前に現れたのはタクヤとナツだった。
「いつの間にっ!!!」
「お前の武勇伝もここで終わりだァ!!!」
「妖精の尻尾から逃げられると思うなよォ!!!」
タクヤは水を、ナツは火を口いっぱいに貯える。
「水竜の/火竜の…、」
「私は、まだ…!!!」









「「咆哮!!!!!」」

ゴワァァァァァ ザバアァァァァァン

タクヤとナツは口からありったけのブレスをナイトバロンに浴びせた。ナイトバロンは避けることができず、直撃した。
ナイトバロンは火傷を負い、さらにびしょぬれの状態で地面に落ちた。

ドサッ

「やった…。」
「やったァァァァァ!!!!」
タクヤとナツはナイトバロンを倒した事に感激し、両腕を空にかざした。
「どーだァ!!!見たか!!!オレの実力!!!!」
「お前たち!!!よくやったぞ!!!」
「やるじゃねーか!!!」
エルザとグレイはタクヤとナツの元に駆け寄ってきた。
エルザはナツを抱き締めるが鎧を纏っているため、ナツにとってははた迷惑なだけのようだ。
「とにかく、コイツは氷で縛っとくか。」
グレイはナイトバロンを柱に縛って逃げられないようにした。もっとも、逃げる体力があるとは思えないが。
「あとはウェンディか…。」
「ハッピーたちに任せるしかないな。」
と、その時、
「みんなー!!!」
扉の方からハッピーの声がした。
「ウェンディ見つけたよー。」
「おぉ、無事だったか!!」
「今、シャルルとエマとルーシィと一緒に隣の部屋にいるよ。」
「隣だな、よーし!」

ダダダダダダダ

「あ、でも今は…ってもういないし…。」
ハッピーがタクヤを呼び止めようとするが、既にタクヤは展示室をあとにしていた。
「なんだよ、ハッピー。」
「いや、今ウェンディはね…、ゴニョゴニョ」
「「!!!」」

















「ウェンディー!!!」
タクヤはウェンディがいる隣の部屋へと向かっていた。隣といっても数秒で着く距離ではなかったため、
急いで走っていたのだった。
「あそこか!!!」
数分走った所で一つの大きな扉が見えた。

バン

タクヤは扉の前に立つや否や豪快に扉を開けた。
「ウェンディ!!!」
「えっ?」
タクヤとウェンディは目が合った。だが、タクヤはその場から動く事が出来なかった。
「え、えっとだな…。」
タクヤの目の前にいたのは服を着替えているほぼ全裸のウェンディだった。
「……で、」
「え?」










「出てってェーーー!!!!!」

ガコン

「んがっ。」
タクヤはソファーを投げつけられ、見事に的中した。
「ま、待て!!!ごかいなん、」

バコッ

「ぎゃっ。」
「見ないでェー!!!!」
今度はクローゼットを投げつけられ、それも見事に的中した。
どこにそんな怪力があるのか聞こうとしたが、やはり物を投げつけられた。
「私がいいって言うまで入ってこないでください!!!!」
「ひゃい…。」
タクヤは投げつけられた家具の下敷きになりながら、エマの忠告に従った。


















今宵は満月、空には星たちが撒き散らされていた。
タクヤたちは依頼を完了しマッドから報酬を頂いてギルドに帰る頃だった。
「ありがとうございます。おかげで虹の架け橋を守りきる事が出来ました。
さすがは妖精の尻尾の魔導士ですね。」
「たいしたことしてねーよ。な、ハッピー!!」
「あい!!」
ナツとハッピーは笑いながらマッドに言った。
「私たちは依頼をこなしただけだ。礼には及ばない。」
「だね!!」
「案外楽な仕事だったしな。」
エルザとルーシィ、グレイもナツたちに続いてそう言った。
「いえ、礼を言わせてください。これは亡くなった私の妻の形見なのです。」
「じゃあ、マッドさんの奥さんは…。」
「えぇ。かれこれ13年になります。虹の架け橋は妻が死ぬ直前まで身に付けていた物。
私はこれを一生大事にしていくと決めたのです。」
マッドは手に持っていた虹の架け橋を見つめながらみんなに話してくれた。
「そうだったんですか。」
「そして、今日は妻の命日。本当によかった…。これで妻も安心できると思います。」
「よかったな!!!」
タクヤは泣いていたマッドに言った。タクヤたちはそれだけの事をしたという訳だ。
「では、私たちはこれで。」
「じゃーねー!おいしー魚をありがとー!!」
「って、結局魚じゃないの!」
ハッピーがシャルルにつっこまれながらタクヤたちはギルドに向かった。




















そして、マグノリア
帰りの汽車はウェンディにトロイアをかけてもらったタクヤとナツは乗り物酔いをせずに帰ってこれた。
「ずいぶんと遅くなってしまったが今日はこれで解散としよう。」
「よっしゃァー!!!帰ってねるぞー!!!」
「あいさー!!!」

ダダダダダダダ

ナツたちは一目散に自分の家に帰っていった。
「じゃあオレも帰るかな。」
グレイも自分の家に帰っていった。
「私はルーシィを家まで送ってから帰るがウェンディはどうする?」
「えっと、じゃあ…、」
ウェンディがエルザに返事をしようとしたその時、
「ウェンディはタクヤに送ってもらうから平気よ。」
「え?」
「いいですよね?タクヤ。」
「あぁ、別にいいぞ。」
ウェンディをさしおいてどんどん話が進んでいく。
「そうか。では、また明日な。」
「ばいばーい。」
エルザとルーシィも自分たちの家へと帰っていった。残ったのはタクヤとウェンディ、シャルル、エマだけとなった。
「じゃあ、オレたちも帰るか。」
「私たち、すごい眠いから先に帰ってるわね。」
「えっ!?」
「また明日ー。」
シャルルとエマはそう言い残してすごい速さで空へと飛んでいった。
「オレらも帰るか。」
「うん。」
タクヤとウェンディも歩き出した。









「…。」
「…。」
タクヤとウェンディはしばらく歩いているが一言も言葉を交わさない。
辺りは街灯だけが寂しく灯っているだけで民家の電気はほとんど消えていた。そのせいかいつもの夜道より暗く感じる。
(「気、気まずい…。やっぱさっきの怒ってんだろーなー…。」)
タクヤはウェンディを横目でチラリと見てどうしたものかと困っている。
「…お兄ちゃん。」
「え、な、なんだ?」
「この服…どう?」
ウェンディは着ている服の感想をタクヤに求めた。マッドの屋敷で着替えた際にお礼にと貰った洋服だ。
白のワンピースに背中に大きな純白のリボンが飾られ、シンプルだが清潔感溢れた洋服となっていた。
だが、夜道を歩いているタクヤにはその洋服も辺りが暗いせいで充分に見る事ができない。
(「暗くて見えないとか言ったらまた空気が重たくなるし…。」)
少し考えて、
「うん!似合ってるぞ!!綺麗だ!!!」
タクヤは空気を変えるためウェンディの洋服を誉めた。
「ほんとに…?」
「嘘なんか言わねーよ!!背中のとかいいよなー!!!」
タクヤにはシルエットしか分からなかったのでリボンとは言えなかった。
「よかった…。お兄ちゃんに喜んでもらえて。」
(「なんか罪悪感に叩き潰されそうなんだけど…。」)
タクヤは何故か胸がキリキリ痛み出した。
「ま、また今度着てみてくれよな。」
「うん!!」
ウェンディの機嫌も完全に直ったようだ。それから、二人は家に着くまで楽しく会話をして帰っていったのだった。
 
 

 
後書き
終わったー。 
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