妖精の義兄妹のありきたりな日常
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妖精の尻尾の新人
ここはマグノリアにある魔導士ギルド妖精の尻尾“フェアリーテイル”。今ではフィオーレ一のギルドにまでなっていた。
ガヤガヤ ガヤガヤ
「あれから3日だなー。ひまだなー。」
「あい。相変わらずギルドの中は騒がしいけどね。」
そう言って騒がしいギルドの中で話しているのは火の滅竜魔導士のナツと猫のハッピーだった。
「ったく。そんなに暇なら仕事に行こーよ!!今月分の家賃稼がなきゃ!!!」
そうやって泣きながら拳に力を入れていたのは星霊魔導士のルーシィだった。
「いつも思ってたけど何でそんなにお金に困ってるの?」
ハッピーは泣いていたルーシィに質問した。
「アンタたちがいろんなもの後先考えずに壊しまくってるからでしょーっ!!!!」
「お、オレ等のせいにすんなよ!!」
「そうだぞ、ルーシィ。オレはこのクソ炎と違ってちゃんと考えて壊してる。」
ルーシィとナツとハッピーの会話に割って入ってきたのは氷の造形魔導士のグレイだった。
「壊したらダメだから!!!!」
すかさずルーシィはグレイにツッコム。
「そうだぞ、お前たち。もう少し限度というものを知っておけ。」
そうナツとグレイに言ったのは妖精女王“ティターニア”のエルザだった。
「「いや、一番壊したのはお前だろ!!!!」」
「ん?そうだったか?」
声をハモらせて言ったナツとグレイに対してあくまでしらをきったエルザだった。
「ハァ、何でこんなに騒がしいのかしら?いるだけで疲れがたまりそうよ。」
「まぁまぁ、私は好きですよ。にぎやかでいいじゃないですか。」
少し離れたテーブルで愚痴を言っていたのは猫のシャルルとそれを落ち着かせていたエマだ。
「そうだよ、シャルル。楽しいところじゃない。」
シャルルの近くにいたのは天空の滅竜魔導士のウェンディだった。
「それにしてもすごい人だねー。」
ウェンディは周りを見渡しながらそう言った。
周りにはギルドの魔導士だけでなく、商人や一般人もいたりした。このギルドは酒場としても使われているらしい。
「そういえば、ウェンディ。タクヤは?」
ルーシィはこの場にいないタクヤの事をウェンディに訪ねた。
「お兄ちゃんなら多分まだ寝てると思いますよ。」
「えっ!?もう昼過ぎよ!まだ寝てるの?」
「お兄ちゃん、朝が苦手みたいでいつも昼過ぎにしか起きないんですよ。」
「へぇー。でも、残念だなー。今から私たちで仕事に行こうってなってるのに。」
「じゃあ私、お兄ちゃんを起こしてきますよ。少しだけ待っててください。」
そう言い残してウェンディはギルドを後にした。
マグノリア構内にある貸家、今はここがタクヤの家となっている。
家賃は10万J。これといった特徴はなく、シンプルな形をした家だった。
「お兄ちゃーん、起きてるー?」
ウェンディがドアをノックしてタクヤが起きてるか確認する。しかし、返事は帰ってこない。
「まだ寝てるのかなー。」
そう呟いてウェンディはポケットからタクヤの家の合鍵を取り出した。
ガチャ
ウェンディは鍵を開けて家の中へ入っていった。
「お兄ちゃーん。」
ウェンディは寝室のドアを開けながら呼び掛ける。
「Zzz…。」
「…やっぱり寝てた。」
案の定タクヤはかけ布団を蹴りぬぐった状態で規則正しい寝息をたてながら寝ていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんってば。」
「うーん…。」
何度さすってもタクヤが目を覚ます様子は伺えない。
ウェンディはどうしたものかとその場に立ち尽くしていた。
「…ちょっとだけならいいよね…。」
そう言ってタクヤのベットにウェンディは侵入する。
もぞもぞ もぞもぞ
ウェンディはタクヤの布団を取り、タクヤとウェンディにかけるとウェンディはタクヤの背中に密着した。
ウェンディの心臓の鼓動が激しくなる。だが、それは苦しさから来るものではなかった。
(「暖かい…お兄ちゃん…。」)
その時、
ガバッ
タクヤが寝返りをうち、ウェンディの顔に接近する。あと5cmでタクヤとウェンディの顔がくっつくぐらいに。
(「~~~~~!!!?」)
ウェンディはたちまち顔が真っ赤になり、今にでも気を失いそうになった。
それでも尚、タクヤとの距離が徐々に縮まってきた。
(「お、お兄ちゃ~~~ん!!!!」)
「うあっ?」
二人はしばらくの間見つめあった。先に口を開けたのはタクヤだった。
「なんでウェンディがオレの布団の中にいるんだ?」
「そ、それは…その…。」
「…ま、いっか…。」
「え?」
ウェンディはおもわずマヌケな声を出してしまった。
ギュッ
「!!!」
「あったけぇ…。」
ウェンディは顔から火が出そうになるくらい真っ赤になっていた。
「あわわわわ。」
その時だった。
ガチャ
「タクヤー。いい加減おきなさい、よ、って…。」
「どうしましたー?って。」
ウェンディの帰りが遅かったのでシャルルとエマが迎いに来たのだ。
「あ、あのね。これはその…。」
「「…。」」
ウェンディがあたふたしながら必死にシャルルとエマに言い訳をしていたが反応が薄い。
「では、」
「ごゆっくりどうぞ。」
「だからちがうんだってばーー!!!!」
「ふぁー…。よく寝た。」
「ったく、寝過ぎだっつーの。」
「もう少し規則正しい生活は送れないのか。」
「へーい。」
ここはマグノリアにある駅
タクヤもまじえ、いよいよ仕事に行くこととなった。
「妖精の尻尾に来てから初めての仕事だからなー。楽しみだなー。なぁ、ウェンディ?」
「…。」
タクヤはウェンディに話しかけるが反応はない。
「?どうしたんだ、ウェンディ。」
「え?ううん。な、なんでもないよ。」
ウェンディは顔を赤くしてタクヤと目を合わさずに答えた。
「そうか?」
「それよりお前たち。今日の仕事の事は頭に入ってるな?」
「たしか、シロツメにある豪邸の持ち主からの依頼でしょ?」
「あぁ。なんでも先日、予告状が届いたようで豪邸の宝物を護衛しろとの事だ。」
エルザが今回の依頼を手短にみんなに説明した。
「宝物ってなんだ?」
「知るかよ。バーカ。」
「アァッ!?やんのか、コラァッ!!!」
「上等だ!!!かかってこいや、オラッ!!!」
いつものようにナツとグレイの喧嘩が始まった。
「やめんかっ!!!!」
「「はい!!!すいませーん。」」
エルザにこっぴどく叱られたナツとグレイは肩を組ながら謝った。
「とにかく、早くシロツメの町にいきましょう。いつまでもこんな事していたら埒があかないわ。」
「そうですねー。」
シャルルがこれ以上時間を無駄にしないようにみんなに行動を促す。
「待て!!!もしかして汽車に乗るのかッ!!?」
「だから、駅にいるんじゃない。」
タクヤが冷や汗をかきながらルーシィに質問した。当たり前の答えがかえってきたのだが。
「いや!!!!絶対にいやだ!!!!あんなの乗らねぇ!!!!」
「オレも乗りたくねぇ!!!!」
タクヤとナツは駅に来てまで駄々をコネだした。
「仕方のないヤツ等だな、私のところに来い。」
エルザが駄々をコネていたタクヤとナツを自分の元に呼んだ。
「オレは乗らねぇぞ!!!」
「オレもだ!!!」
「なら、寝てろ!!」
ガン ガン
「「!!!」」
エルザはタクヤとナツを殴り倒して気絶させた。
「さぁ。早く出発するぞ。」
エルザはタクヤとナツを引きずりながら汽車へと向かった。
「…ウェンディにトロイアかけてもらってもよかったんじゃない?」
「まぁ、いいんじゃねーか。」
「やっぱりめちゃくちゃだね。」
そう言いながらウェンディルーシィたちも汽車へと向かったのだった。
ガタン ガタン ガタン ガタン
ウェンディたちはシロツメへ向かっている汽車の中にいた。もう間もなく着くだろう。
「それで結局宝物ってなんなの?」
ハッピーが改めてエルザに質問した。
「あぁ。なんでも世界に二つとないペンダントらしくてな。時価100億Jはするらしい。」
「ひゃ、100億J!!!?」
ルーシィの目はたちまちJになっている。
「そりゃすげぇな。コソドロも狙うのも当然だな。」
グレイが鼻で笑いながら言った。
「甘く見ない方がいいぞ、グレイ。泥棒は泥棒でもあの怪盗ナイトバロンだ。」
「ナイトバロン?」
ウェンディはその名前を聞いてもまったくピンとこなかった。
「狙った獲物は絶対に逃さない大怪盗。今までで盗んだ物は数百にものぼるって話よ。」
「その全てが数億Jもする高価な物ばかりだ。厳重な防衛網を難なくすり抜ける。」
シャルルとエルザがウェンディにナイトバロンについて説明した。
「しかも、ナイトバロンって魔導士なんだよね?そんなの相手にどうやって守ればいいの!?」
「それはシロツメの豪邸に着き次第考えるとして厳しい戦いになるだろうな。」
「あわわわ。」
ルーシィとウェンディは半泣きになりながら震えていた。そんなことを話している内に汽車はシロツメの町に到着した。
「ここかー。」
「でっけぇなー。」
ナツとタクヤは目の前に建っている大きな豪邸見とれていた。
「さぁ、行くぞ。」
エルザたちは門をくぐり、玄関の前まで歩き出した。中庭には大きな噴水、手入れの行き届いたお花畑。
いかにもお金持ちが住んでいるような豪邸だった。
ピーンポーン ピーンポーン
エルザが玄関のインターフォンを押した。しばらくしてこの豪邸であろうメイドが現れた。
「どちら様でしょうか?」
「私たちは妖精の尻尾の魔導士だ。この家の主の依頼で来たのだが。」
「そうでしたか。では、旦那様のところへご案内いたします。どうぞ。」
そう言ってメイドはエルザたちを依頼主の元へ案内をしてくれた。
「しかし、本当でかいですねー。」
「だなー。」
エマとタクヤが辺りを見渡しながらそう話していた。
「こんなに広いと迷っちゃいそうだね。」
「そうでもないわよ。」
ウェンディとシャルルも豪邸の感想を話していた。
「ここでならどんなに暴れても壊れたりしないだろーな。」
「壊す前提の話なんだ。」
「壊さないでよね。」
ナツの発言にルーシィがすかさずツッコム。
「こちらです。」
ガチャ
メイドが大きな扉をは開いた。そこには廊下と比べ物にはならないぐらい豪華な部屋が広がっていた。
「おぉ!!これはこれは。お待ちしておりましたよ。私が依頼主のマッドと申します。」
「私は妖精の尻尾のエルザと言います。」
「噂はかねがね聞いております。さっ、こちらにお掛けください。」
マッドに勧められタクヤたちはソファーに腰かけた。
「では、依頼の確認ですが怪盗ナイトバロンから私の宝物であるペンダントを守ってほしいのです!!!」
「おう!そんなヤツにはぜってぇに渡したりはしねぇ!!!」
「して、そのペンダントはどこに?」
エルザは依頼内容であるペンダントの在処をマッドに質問した。
「こちらになります。」
そう言ってマッドは懐から小さな箱を取り出した。
蓋を開けるとそこには言葉では表せないほどに神々しく輝いているペンダントがあった。
「「おぉ!!」」
「これが時価100億Jの…。」
「きれい…。」
各々、ペンダントの感想を述べる。
「こちらがあなた方に守ってもらう“虹の架け橋”です。普段は展示室である大広間に飾っています。」
「わかりました。必ずご期待に応えましょう。」
「では、後の事はお任せします。私はやりかけの仕事がありますのでこれで。」
マッドは虹の架け橋を箱の中に閉まって、部屋を後にした。
「さて、どうしたものか…。」
エルザたちは展示室である大広間にやってきていた。そこには虹の架け橋以外にも数多くの宝石類が並べられていた。
「どーするもこーするも、真正面からぶん殴る!!!」
「それができないからこうやって作戦を考えてるんだろ。」
ナツの言葉にタクヤは冷静にツッコム。今、タクヤたちは虹の架け橋の護衛のための作戦を考えている最中なのだ。
「それなら、オレの氷で虹の架け橋を凍らしておけばよくねーか?」
グレイがエルザに提案する。
「駄目よ!そんなことしたら虹の架け橋にキズをつけちゃうかもでしょ!!」
「でしたらやっぱり、みんなで虹の架け橋を囲む感じで守ってはどうでしょう?」
ウェンディが別の提案をエルザに持ち出した。
「その方がどこから襲撃されても対処できるものね。」
シャルルもウェンディの提案に賛同する。
「うむ。それが妥当だな。作戦はこれにするとして屋敷の中をチェックしておこう。
ナイトバロンの侵入経路がある程度把握できるからな。」
「それなら、手分けして捜索しましょう。その方が早いですし。」
「廊下だけ見てもやっぱ広いなー。」
「…。」
タクヤとウェンディは屋敷の中を探索していた。
(「もう!シャルルったら!!変に気使っちゃって~!!!」)
ウェンディは心の中でシャルルに叫んだ。
10分前
「ウェンディはタクヤと一緒に探索しなさい。」
「えぇっ!?な、なんで!!!」
「手分けして探索すれば時間も短縮できますし、多くの情報を集めないといけませんからね。」
「なら、私たちと一緒に、」
「じゃ、そういう事だからー。」
シャルルとエマはウェンディの言葉を最後まで聞かずに飛んでいってしまった。
(「お兄ちゃんと一緒なのは嬉しいけど、あんな事があった後だから変に意識しちゃうよ~!!」)
「なぁ、ウェンディ。」
「ひゃ、ひゃい。」
なんともマヌケな声を出したウェンディに疑問を持ったが、タクヤは今は置くことにした。
「今日なんか変じゃないか?顔も少し赤いし、具合でも悪いのか?」
「そ、そんなことないよ!私は大丈夫だから!!」
そう言ってウェンディは駆け出した。
「あ、おい。」
(「あ~ん。また変な声出しちゃった~。」)
ガッ
「!」
ウェンディが急に駆け出したため足をつまずかせ、倒れそうになった、が、
ガシッ
「ったく。」
間一髪のところでタクヤがウェンディを抱え、こけるのを防いだ。
「急に走ったら危ないだろ。」
「う、うん。」
タクヤはウェンディを抱えながら注意した。それだけでもウェンディは顔を赤くした。
その時だった。
ピタッ
「!!!!」
タクヤはウェンディの額に自分の額をくっつけ、体温を計った。
「やっぱり、少し熱があるんじゃねーか?すごい熱いぞ。」
ウェンディは今にも天に昇りそうなくらい気持ちが高ぶってしまった。
「あんま無理すんなよな。ほら、おぶってやるから来いよ。」
ウェンディの思考回路は完全に火を吹いていた。ウェンディは成すがままにタクヤの背中に乗った。
「きつい時は言えよ?最悪お前だけでも休ませてもらうように頼むからさ。一番はやっぱウェンディだからさ。」
その言葉にウェンディはとうとう気を失ってしまった。
「あり?ウェンディ?…寝ちまったか。」
タクヤはウェンディをおんぶしながら屋敷の探索を続けた。
「大体屋敷の中は探索したな。」
「見てみてー。かっこいいでしょー。」
ハッピーはどこから持ち出したのか鉄火面を被っていた。
「コラ!!!勝手に持ち出さないのっ!!!」
ルーシィがハッピーの被っていた鉄火面を取り上げ、叱った。
「おーす。そっちはどうだったー?」
「こっちはこれといったものはなかったな。ん?ウェンディ、どうかしたのか?」
グレイがタクヤにウェンディの事を聞いた。
「あぁ。ちょっと熱っぽいんだよ。ウェンディをどっかで休ませてあげたいんだけど。」
「なら、そこのソファーに横にしておくといい。」
エルザに指示された通りにソファーにウェンディを寝かした。
「ウェンディは大丈夫なんですか?」
エマがタクヤにウェンディの容態を聞いた。
「たぶん、すこし気疲れしただけだろーな。環境の変化に戸惑ったんだろう。」
「屋敷の構図も頭に入った。後は予告時間まで待つだけだ。」
「ならメシにすんぞー!!!!」
「あいさー!!!」
ナツとハッピーは一目散に展示室を後にした。
「あっ!?こら!!待ちなさいよー。」
ルーシィもその後を追った。
「アイツ、食堂の場所わかんのか?」
「まぁ、鼻がいいから大丈夫だろ。」
「我々も食事を取ることにしよう。いざってときに力が出ないからな。」
そう言ってエルザたちは展示室へ案内してくれたメイドに食堂までの案内を頼んだ。
「あれ?タクヤは行かないんですか?」
「オレはここでウェンディを看てるよ。一人じゃ可哀想だろ?」
「じゃ、ウェンディの事はまかせたわよ。後で二人の食事持ってくるから。」
「あぁ、ありがとな。」
シャルルとエマもエルザたちを追って展示室を後にした。
「ふぅ。」
タクヤはウェンディが寝ているソファーに腰かけた。そして、そっとウェンディの頭を撫でた。
「まだ、あれから日が浅いからな。無理もないか…。」
タクヤたちが妖精の尻尾にやって来てからまだ3日しか経っていない。
かつていた魔導士ギルド化猫の宿“ケットシェルター”は今はもう存在しない。
「でも、今は妖精の尻尾のみんながいる。エマやシャルルだっている。それに、オレもいるから。」
タクヤはウェンディを撫でながらそう呟いた。心なしかウェンディが笑ってるように見えた。
後書き
こんちはー!これはスピンオフとして暇な時に書いていこうかなと思ってます。
そして、この話は続きます。たぶん2,3話で終わると思います。
ですのでこれからよろしくお願いしまーす!感想などもまってまーす。
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