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真似と開閉と世界旅行

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静かな夜~

 
前書き
SAO二期・・・そしてなのはもまた新しいアニメ化決定。なんだか最近のアニメが楽しみだらけですね。ではどうぞ。 

 
俺は夜になると本陣周りを歩いていた。・・・やることもないし、すぐ眠れそうでもなかった。


「・・・」

部隊の再編成も終わったし・・・

「(少し体を動かすか・・・)」

そう思って俺は広い場所へ向かう。・・・ちなみに砕けた刺天猛虎は再びみんなの武器に戻った。そして・・・俺も蓮華も水蓮さんと繋がらなくなってしまった。

「(無事だとは思うけど・・・)」

そんな時、ふと気になる影を見つけた。

「シリカ?」

「あ、亮さん・・・」


「寝なくていいのか?」

シリカの側にピナはいない。どうやら先に寝てしまったようだ。

「なんだか眠れなくて・・・」

「奇遇だね、俺もだよ」

俺とシリカは散歩をしながら話をする。

「眠れないのは・・・今日の戦が焼き付いた、から?」

「・・・はい。あたし・・・あたしは・・・!」

シリカの手が、俺の視界から隠れるように震える。

「いいよ、言わなくて。・・・討ち取った・・・んだよな」

「・・・!」

ビクッ、とシリカの肩が跳ねる。

「・・・あの後、実はあたしやサチさんの方にも敵が来たんです。それで・・・」


「・・・怪我はなかったか?」

「サチさんが守ってくれて・・・でも、あたしは人を・・・この手で・・・」

「・・・その感覚と苦しみは一生かかっても消えない・・・薄くすることはできるけどね」

「どうやって、ですか?」

俺は頬を掻く。

「ちょっと恥ずかしいな・・・ええっと、大切な人と生きて・・・支え合うこと、かな」

現に俺はそうだ。明命達がいなかったら・・・とっくの昔に罪の意識で潰れてた。


「それは周泰さん達の事ですか?」

「うん、まあね・・・明命達には本当に助けられた」

「じゃあ・・・」

「ん?」

シリカが足を止めたので、俺も止まってシリカを見る。


「亮さんはあたしを・・・支えて、くれますか?」

「え・・・?・・・っ!」


今の会話の流れで気づかない程、俺は鈍い訳じゃない。シリカは、俺を・・・

「ご、ごめんなさい!変なこと言っちゃって!迷惑ですよね、いきなりあたしなんかに・・・お、お休みなさい!」


シリカが黙ってしまった俺に背を向けて走り出そうとするが・・・そうはいかない。

「珪子さん!」

俺はシリカの手を掴む。

「・・・!」

「ごめん、珪子さんの気持ちに気付かなくて。正直嬉しいよ・・・けど」

俺は息を大きく吸う。

「大澤亮としては・・・その気持ちは受けていけない・・・のかもしれない」

「・・・っ」

「俺はこの世界で生きている・・・けど珪子さんにはSAOの世界の住人・・・家族だっている。そう、世界観が、違いすぎる」

「ーーーーっ!!」

シリカが俺の腕を振り払おうとする。

「まって!だけど・・・俺は珪子さんの事を・・・桐ヶ谷亮は珪子さんの事を好きになっていたんだ」




これは多分、本当だ。咲程じゃないが、俺もリョウ・ラントや桐ヶ谷亮とは僅かなズレがある。だから大澤亮としてではなく、桐ヶ谷亮と考えると・・・シリカと、一緒にいたいと思う。


「直葉のことも珪子さんのお陰で吹っ切れた。サチを任せられる人も君が頭に浮かんだ。・・・どうなるかは解らないけど、この戦いが終わったら絶対にまたSAOの世界に行く。だからその時は俺とーーーー・・・むぐっ!?」


シリカが不意に俺の口を抑えた。

「・・・それ以上言わなくても大丈夫です」


「ぷは・・・珪子さん・・・」


「あの、約束してください!」

「約束?」

「この戦いが終わって、全部元に戻ったら・・・あたし達の世界に来て、もう一度答えを聞かせてください」

「・・・桐ヶ谷亮として、かな?」

「はい。あの世界で好きになった人はコウハさん・・・桐ヶ谷亮さんですから」

「わかった。・・・約束だね」

俺とシリカは指切りをする。

「じゃあ、約束を守る為にも・・・勝たないとな」


「はい。・・・あたしも、今は・・・!」

よく見ればシリカの震えは収まっていた。

「じゃあ、今度こそお休みなさい!」

「ああ、お休み」

シリカが去った後・・・物音がした。

「誰だ!?」

「あ・・・りょ、亮」

「・・・サチ?」

暗闇から姿を現したのはサチだった。

「どうしたんだ?サチも眠れない?」

「う、うん。えっと、その・・・ね」

「ああ・・・もしかして聞いちゃってたか?」

「・・・うん」

サチが苦笑する。


「でも、少し驚いたなぁ・・・」

「確かにね。シリカが俺のことを・・・」

「亮も好きだったんでしょ?」

「んー・・・まぁ、確かにそうだよ」

「・・・私との約束、覚えてる?」

「なんでいきなり・・・忘れるわけないだろ。サチはみんなを守る。俺はサチを守る」

「うん・・・ありがとう、その約束があればまだ私は前を向ける」

サチは俺に背を向ける。



「サチ?」

「・・・」

サチは答えずに数歩歩き・・・振り向いた。金色に変わった瞳がこっちを見て・・・舌を出した。

「亮のバーーッカ!!女泣かせーーっ!!」

「はぁ!?あ、おい!」

「じゃあね、また明日ー!」

そう言ってサチは走り去っていった。

「な、なんなんだよ、アイツ・・・」

「・・・当たり前の反応だろう」

「女心には何時までも疎いんですね・・・」

「うわっ!?思春、亞莎!?」

気配が何もなかったのに不意に思春と亞莎が背後に現れた。

「・・・別に、解ってない訳じゃないよ。俺の自惚れじゃなかったら・・・だけど」

「・・・気付いてたのか?二ノ宮が・・・」

「なんとなく、そうじゃないかって、曖昧な感じだけどね・・・」

「でも選んだじゃないですか」

「いや、逃げたよ。結局、大澤亮としての答えは・・・」

思春が軽く俺を叩く。

「綾野が好意を抱いたのは桐ヶ谷亮だ。・・・今はそれで納得しておけ」

「・・・だね。いやー、約束が増える増える・・・」

「ラントの方は平気なんですか?」

亞莎が聞いているのはリョウ・ラントのことか・・・

「そっちもな・・・実はアス兄と話したんだけど、母さんが俺に見合い話を持ってきてるらしくて・・・」


「・・・どうするんだ、お前の身体は三つに別れないだろう」

「この戦いが終わったら紫と相談する気だよ。技術的な部分は心配ないし」

「やることは山積みですね・・・」

「ああ、山積みだ。一個ずつ片付けないとな」

「まずはシン、だな」

「勝ちましょう。これ以上好き勝手にはさせません」

「ああ!」



俺達は拳を合わせて頷きあう。空を見上げれば綺麗な月と星が輝いていた・・・



































明命~


「・・・それでですね、雪蓮様達と合流したら、見慣れない男の人がいて・・・」


「それがお父様だったの?」

「そうですよ。あの時は今みたいな頼もしさはまったくなくて・・・あ、亮には秘密ですからね?」

「はーい」



私と椿は歩きながら話をしていました。椿が私と亮の馴れ初めを聞きたいと言ったので・・・

「・・・なんだか、娘にこんな話をすると照れますね」

「そう?わたしは色々嬉しいかな。わたしの世界のお母様とお父様は何にも話してくれなかったもん」

「それは椿が小さかったからですよ。・・・というより椿、もしかして私より背が高くないですか?」

「え?・・・あ、ほんとだ」

「・・・なんかショックです」

落ち込む私を椿は必死にフォローします。

「ほ、ほらお父様は背が高いから!だからきっと遺伝だよ、ね?」

「やめてください・・・ますます落ち込みます・・・」

・・・ふと前を見ると大きな岩の上に・・・月を見上げながら酒を呑む誰かの姿が・・・

「あ、リョウコウ!」

呼ばれた青年はゆっくりとこちらを見る。

「ん・・・椿に、周泰の嬢ちゃんじゃねぇか」

「明命で構いませんよ、リョウコウさん」


私と椿はリョウコウさんの隣に跳ぶ。

「・・・ほいほい真名を預けすぎじゃね?」

「ほいほい預けられる程の実力と信頼を持ってるんですよ」

リョウコウさんは苦笑して何かを操作すると、更に猪口が現れる。

「イケる口か?」

「人並みには」


「椿は・・・まだはぇぇな」

「ええー?」

「駄目ですよ、お酒は二十歳からです」

「お母様もまだ二十歳じゃないでしょー?」

「ま、呑むとしても一杯だけな」

「わーい♪」


椿は早速口に含み・・・顔をしかめた。

「うぇ・・・」

「ははっ、まだ子供だな。ほれ、こっちにしとけ」

「ちぇっ・・・」

リョウコウさんが差し出したジュースを椿はゴクゴクと幸せそうに飲む。

「お月見ですか?」

「おう、この世界は月と星がよく見えるんでな。次の戦に備えてのリフレッシュって奴だ」

「そうですか・・・あの、リョウコウさん」

「ん?」


「亮がお世話になりました。感謝致します」

「あー、そういうのは止めようぜ。ダチ助けんのは当たり前だし」

ヒラヒラと手を振るリョウコウさんを見て私は微笑む。

「それでも、です。私にとって亮はかけがえのない・・・大切な人なんです」

「なぁ明命、一個いいか?」


「はい?」



「お前、自分が原因で起こした失敗を後悔するか?」

「しません。全てを受け入れ、次を考えます。後悔なんて何時でも出来ますしね」

蓮華様に仕えたこと、亮と旅をしたこと、亮の身代わりになったこと・・・何一つ後悔はしていません。

「全てを受け入れるか・・・いいねぇ」

リョウコウさんがニヤリと笑う。

「やっぱ面白いわ、この世界はよ」



「ええ、とても大事な世界です」

リョウコウさんはフッ、と笑った後私を見る。

「しかし、いいんかねぇ?こんな美人さんと晩酌出来るなんてよ」

「そういうお言葉は自分の世界の方に言われた方がいいですよ?」

「おうおう、冷静な返しをどーも。んで、お前はいいのかよ?亮に浮気とか思われんじゃね?」

「亮はそんな小さい方じゃありませんよ。・・・ほら」

見ると亮と思春殿、それに亞莎がやって来た。

「あれ?明命に・・・リョウじゃないか・・・ん?あとは・・・」


「お父様ー♪」

「うわあっ!?」

椿が物凄いスピードで亮に飛び付く。

「えへへ、お父様大好き~♪」

「つ、椿!?おま・・・」

ふと亮が私とリョウコウさんの持っている猪口を見たあと、椿を見てから再びリョウコウさんを見る。

「てめぇ、リョウコウ!椿に酒呑ませやがったな!?」

「別に呑ませたっつっても一口だぜ!?しかも殆ど舐めた程度だっての!」

珍しく怒った亮にリョウコウさんはちょっと引きながら弁解をしています。

「だからって14歳に酒飲ますなこの馬鹿!」

「おいおい、お宅の老将さんや孫家の長女はガキの頃から呑んでるって聞いたぜ?」

「あの二人は異常なんだよ!俺も初めは地獄を・・・!・・・ってんなこたぁどうでもいい!」

「とんでもない親馬鹿だな、おい・・・」

呆れるリョウコウさんでしたが、続く亮の言葉は流せなかったみたいです。

「とにかく降りてこい!一発ぶん殴る!」

「おい、流石に抵抗するぞ、それはよ」

「構うもんか!」

「・・・へぇ」

リョウコウさんの目付きが変わる・・・と同時に足下の岩が粉々に砕け散った。私はお酒が溢れないようにキャッチしながら地面に着地する。・・・どうやらリョウコウさんが思いっきり蹴ったみたいです。

「ずいぶん威勢がいいんじゃねぇの?少年よ」

「あ・・・」

ここで亮が我に返り、青ざめました。

「し、思春・・・」

「武器なら貸してやる」

思春殿はポン、と鈴音を亮に手渡しました。

「ち、ちがっ・・・亞莎・・・」

「応援してます!」

「・・・明、命?」

私は笑顔でこう返しました。

「後先考えずに発言した亮の自業自得です」



「そ、そんなぁ・・・」

椿がふと、亮とリョウコウさんを見比べて離れる。

「リョウコウ、頑張ってー♪」

「おぉい!?父親の応援はしてくれないのぉ!?」

「えー?だってー、わたしお父様も好きだけど、リョウコウも大好きなんだもーん」

「「はぁぁぁ!?」」

これには二人のリョウが叫びます。

「りょ、リョウコウ・・・!お前に娘はやるかぁぁぁぁ!!」

「酒の勢いで言っただけだろうが!つーか手前のキャラ普段と変わりすぎてんぞ!あと貰う気もねぇ!」

残念です、リョウコウさん程の方なら椿は任せられたのですが。ちなみに冷静さを失った亮は数分で吹っ飛ばされ、騒ぎを聞き付けた祭様にリョウコウさん共々やかましいと説教(拳骨のオマケ付き)されてました。騒がしいお月見でしたね・・・

































咲~


「・・・」

俺はヴィヴィオとアインハルトに当てた両手を引き、目を開く。

「・・・取りあえずは闇の侵食はないみたいだな」

シンのあの能力によって何か他に悪影響がないか調べていたが・・・特に異常は見当たらなかった。いや、ある意味異常なんだが・・・

「シィ、キリエ、どうだ?」

「ダメ。微塵も魔力の反応を感じない」

『むしろ、リンカーコアが残ってるかも怪しいですね』



「力を奪われたのはマジみたいだな・・・」

俺は溜め息を吐き、二人を見る。


「悪いが、明日の戦では本陣に待機して貰う。いいな?」

わざと少し強めに言うと、二人は黙ってしまうが・・・

「「・・・はい」」

アインハルトは渋々ながら・・・という感じだったが、ヴィヴィオの方は目に涙を溜め、拳を握りしめていた。

「診てくれて、ありがとうございました・・・」

そう言うとヴィヴィオは走り出してしまう。

「あ、ヴィヴィオさん・・・!」

アインハルトは一礼してから俺の部屋から出ていった。

「はぁ、泣かせちまったか」

『それを覚悟で言ったんじゃないッスか』

「まあな・・・」

俺は布団に身を投げ出す。

「でも仕方ないよ。魔力がないんじゃどうしようもないし・・・」

「いくら鍛錬していると言っても子供じゃな・・・」

気も扱えないだろうし・・・

「咲君?」

なのはが入ってくる。

「ヴィヴィオ達は・・・」

「あ・・・わりぃ、その・・・泣かせちまった」

「え・・・?」

なのはに事情を話す。



「・・・そうなんだ。ごめんね、嫌な役目を押し付けちゃって・・・」

「いいよ、別に。親友がホワイト過ぎるからな、ブラックは俺の役目ってこと」

『・・・の割にはメンタル弱いじゃないッスか』

「あ゛?」

『・・・何でもないッス』


俺は咳払いをしてからなのはに言う。

「・・・つーわけでヴィヴィオ達のアフターケアを頼んでいいか?」

「うん、そのつもり。私はあの子のママだから・・・辛いことがあったら慰めて上げないと」

「そうだな・・・」

そこでシィが聞く。

「ちなみになのは、はやて達はどう?」

リインフォースが捕まっていると言うのは既に伝わっていたはずだ。

「うん・・・表向きは普通に振る舞ってるけど・・・」

「結構キテる?」

「うん・・・空気が凄くピリピリしてる。だから子供達は移動させて、今はフェイトちゃんが側にいるよ」

「・・・後でフェイトに胃薬持ってってやれ」

絶対に胃に穴が空くよな・・・

「・・・もしかしてなのは、逃げてきた訳じゃないよね?」

「・・・ち、違うよ!私はヴィヴィオ達を迎えに来ただけから・・・」

『それ以上踏み込むのはやめましょう』

『試しにシィさんが行ってみたらどうッスか?』

「うーん・・・パスで」

「にゃはは・・・それにしても、本当にフェイトちゃんのちっちゃい時にそっくりだね」

「モチーフだからねー」

シィは笑いながら答える。なのはは一度深呼吸する。

「じゃあ行ってくるね」

『レイジングハートさんにヴィヴィオさんの位置情報を送ったッス。そちらを参考にしてくださいッス』


「ありがとう、リパル」

なのはは最後にお礼を言って出ていっていった。

「あー、さてと、寝る前にもう一作業だな」

「何をするの?」

「空間の武器補充」

俺は鉄やらなんやらの様々な素材を空間から取り出す。

「うわ、こんなに持ち歩いてるの?」

「いや、この世界に戻ってきてから補充したんだよ」

『これ全部武器にするッスか?』

「ああ。つっても単純な剣とか槍くらいだな。あくまで射出用の武器だし」

「私も手伝おっかな」

「魔術変換できるのか?」

「コツさえ掴めば簡単簡単ー♪」

「はは・・・」


・・・といった感じで夜を過ごした・・・





















愛依~


「ふっ、やぁ!」

「・・・えい」

ガキィン!カァン!

アタシと母さんは広い場所で手合わせをしていた。

「せやぁぁぁ!」

思い切り振り切る一撃。・・・だけど。

「・・・甘い」

ゴォン!

「わぁぁ!?」

ぶつかり合った刃が拮抗することもなく、アタシは背後に吹っ飛ばされた。

「いたた・・・」

「・・・愛依、大丈夫?」

母さんが手を差し出してくる。

「う、うん。・・・やっぱり母さんは強いなぁ」

「愛依も、充分強い」

アタシを立ち上がらせると母さんは頭を撫でてくる。

「わっ・・・」

「セキトも、こうやって褒めると喜ぶ」

「い、犬扱い・・・?」

「・・・もしかして、嫌?」

悲しそうな表情を浮かべた母さんを見て、アタシは慌てて首を振る。

「う、ううん!嫌じゃない!嬉しい・・・よ」

「じゃあ、もっと褒める」

母さんは嬉しそうにアタシの頭を撫でる。・・・思わず泣きそうになっちゃったけど、新しいお客さんの到来で堪えることができた。

「・・・何の音かと思えば」

「親子で仲良く鍛錬ってか」

「・・・剛鬼、知也」

「ひぅっ・・・」

剛鬼さんを見てアタシは母さんの背後に隠れる。

「・・・あからさまに逃げるな」

「ご、ごめんなさいぃ・・・!」

「仕方ねぇよ、お前威圧感ありすぎだし。子供受けしねーよ」

「別に受ける必要もないんだが」

「・・・剛鬼、あまり愛依を怖がらせないで」

「・・・善処する」

「相変わらず恋には甘いな、おい・・・」

「うるさい」


「・・・でも、丁度よかった」

「ん?」

母さんはとんでもないことを言い出した。

「剛鬼、愛依と戦ってほしい」

「えぇぇぇ!?」

「・・・なに?」



「か、かかか母さん!?いきなり何を!?」


「・・・強くなるには戦うしかない」

「そ、そうかもだけど・・・」

剛鬼さんはしばらく考えた後、方天画戟を取り出した。

「・・・いいだろう」

「相変わらず恋の頼みには弱いことで・・・」

・・・あ、これ逃げられない空気だ。

「(母さんって、絶対に自覚のないSだ・・・)」

さっきとは違う意味で泣きそうになったけど、アタシは偃月刀を構える。

「・・・行きます!」

「・・・来い」


アタシは踏み込み、右の偃月刀を振る。

ビュン!

「・・・」

・・・しかし、あっさりとかわされ、素早い一撃が返ってくる。

「っ・・・!」

ギャリィ!

「(同じ武器なのに・・・!一撃がまったく違う!)」

「戦いの途中で考えすぎだ!」

ドゴォ!

「っ・・・はっ・・・」


蹴りが鳩尾に叩き込まれ、アタシは地面を転がる。

「あ・・・ぐ、あう・・・」

息が・・・できな・・・


「・・・終わりか」

「・・・愛依・・・」

ふと視界に母さんの姿が入る。・・・拳が、握り締められていた。

「(違う・・・母さんは・・・Sとか・・・そんなんじゃなくて、純粋にアタシを強くしてくれようと・・・)くっ・・・あぁぁ・・・!)」

立ち上がり、片方の偃月刀を投げ捨てる。

「まだやるか」

「瞬殺じゃ・・・鍛錬に、なりませんから・・・」

アタシは武器を両手で構え、走り出す。

「やぁぁぁぁぁ!!」

アタシも・・・強くならないと・・・・・・!

ガガガガガン!!


攻める!ひたすら攻める!考えちゃいけない!


「はぁぁぁぁ!」

ただ前を見て・・・武器を振る!

「ほう・・・!」


剛鬼さんが受けに回ったのを直感で感じとり、一気に攻める。

「うああああ!」


闇を武器に纏わせ、一撃を重くする。

「(押しきる・・・!)」


「頭に乗るな」


カカン!

「え・・・?」

闇を籠めた一撃。それを素早い一撃・・・いや、二撃を当てられ弾かれた。

「ふっ!」

「がっ!?」

首を掴まれ、持ち上げられてから、地面に叩きつけられーーーーーーーーーー



ブツンーーーーーーーーーーー






































































「・・・う・・・」

「・・・!愛依!」

誰かに呼ばれ・・・目を開く。

「母、さん・・・?」

「愛依・・・よかった・・・」

「アタシ・・・」

「剛鬼に気絶させられたんだよ」

「父さん!?」

さっきまでいなかった父さんがそこにいた。

「み、見てたの?」

「リパルが感知してな。気になったから見に来たんだ」

「う・・・そうなんだ」


じゃあまた負けたとこ見られたんだ・・・

『愛依さん頑張ったッスよ』

「うん・・・」

「・・・おい」

「ひぃっ!?」

背後から剛鬼さんの声が聞こえ、咄嗟に父さんの背後に隠れる。

「・・・」

「いい加減慣れてやってくれ。流石の剛鬼も傷付くって」

「知也、勝手な事を言うな」

剛鬼さんがアタシを見る。

「とにかく、分かった事を言ってやる」

「は、はい・・・」

「お前は戦いの時は余計な事を考えるな」

「え・・・?」

「やはりお前は恋と咲の娘だ。頭の回転は速いが・・・咲と違い、深く思考に入りすぎだ」

「父さんは・・・」

「俺は浅い思考を複数展開できるんだよ。あと細かいのはリパル任せだけどな」


「だから咲は攻撃を回避する、もしくは攻撃する際には複数パターンを考え、即座に選択して実行する」

「・・・つまり?」

「愛依、さっきお前はどう俺に攻撃した?」

そう言われ、アタシは考える。

「そう言えば・・・なんとなくここだって思って・・・」

「そのなんとなくは全て、俺が回避できない位置に振られていた。現にお前の初撃は簡単にかわせたが・・・復帰してからは弾くことし出来なかった」

「えっと・・・?」

「単純に言えば、直感で行けって事。お前には恋の・・・飛将軍呂布の血が深く継がれてるんだよ」
父さんに言われ、アタシは考える。

「(・・・確かに最近理屈で戦ってたかも。ちょっとでも有利になった戦いは・・・全部開き直った時だもんなぁ)」

「つっても戦闘スタイルなんかそんなすぐ固まるもんじゃねえけどな。俺も亮もこの戦い方が染み付くには時間がかかったし」

「そうなんだ・・・うん。アタシ、少し考えてみる」


「おう」

「・・・」

ギュッ

「か、母さん?」

いきなり母さんがアタシを抱き締めた。

「・・・さっき愛依が気絶してた時」

「え・・・」

「・・・呼んでも起きないから、不安になった」

「母さん・・・」

「・・・愛依、離さないから・・・絶対に、一人にさせないから・・・」

母さん・・・アタシのこと、そんなに心配してくれて・・・

「ありがとう、母さん。・・・あと、ごめんなさい」


「はは、いい映像だな」

「・・・帰るぞ、知也」

「はいはい。明日も頑張りますか」

二人が去っていく。

『なんだか、いいッスね』

「羨ましいのか?」

『オイラは剣ッスから。やっぱり羨ましいッスよ』


触れ合い・・・か。心があるのに自由に動けないのってどうなんだろう・・・


「・・・愛依、今日は一緒に寝よう」

「え?・・・は、恥ずかしいよ母さ・・・」

「(じーっ)」

「(捨てられた子犬の目だ・・・)・・・い、いいよ母さん」

「(パァッ)」

凄く顔が輝いた・・・


「じゃ、俺はここで「咲も一緒」・・・だと思ったぜ・・・」

『川の字決定ッスね』

「はぁ・・・あ、これ使うか。シィ、聞こえるか?」

父さんが通信機でしばらく話した後・・・

「よし、後で飯おごりでオッケーっと」

『シィさんはまだ作業してるッスか?』


「ああ、もう少しやってくって。・・・じゃ、行くか」

「愛依、手を繋いで」

「う、うん・・・これも恥ずかしいな・・・」


両手を両親と握りあい、布団を目指す。明日も・・・頑張ろう!もっと父さんと母さんといたいから・・・!

 
 

 
後書き

「・・・」


「特にコメントないなぁ」


「そういや咲、武器は?」


「まぁ、一応かなりの量は作れたから平気だけどよ」


「そうか・・・なぁ咲」


「なんだよ」


「俺って・・・親馬鹿か?」


「何を今更・・・」


「やっぱりなぁ・・・じゃあ、次回もよろしく」

 
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