徒然なるバカに
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熱とかあるときにおでこに手を当てられるのは当てる方も当てられる方も恥ずかしいものだよな
全くもって不愉快だ。不愉快極まりない。え?結果的にどうなったのかって?あぁ、朝風がぶん投げた座布団が桂にぶつかり、滑り落ち、卓上のマグカップに当たり、マグカップが落ち、砕け散っただけだ。そんな些細な結末を送っただけだ。
なのに……。
「なんでおれが全般的に怒られなあかんのじゃぁぁぁああ!!」
「うわっ!びっくりした。どうしたの〜?突然叫んだりして」
「これが叫ばずどうすれと!」
「えへへ……、なんかご機嫌斜めだね、優太くん」
そう!そうなんだ!なぜおれが!おれだけが!……あぁ、なんかめんどくさくなってきたからいいや。
めんどくさいと言えば、これもだ。
そう思い、おれは右手に手のひらに収まっている銀色に光るものに視線を送る。
ーー罰というわけじゃないけど、警備室までいって防犯カメラの記録を持ってきてね。人出足りないし、というか男はあなたしかいないんだからよろしくね。
「はぁ……」
桂から渡された銀色に光るもの。否、警備室の鍵をギュッと握りしめ、ため息をつく。
「あれれ?なんか急にテンションが下がったね?」
隣で肩を並ばせて歩いているサ○バイマンはどしたどしたー?、とニコニコしながら聞いてくる。……なんでこいつこんな上機嫌なんだ?
「どうしたもこうしたもねえよ。なんかイライラしてんのもめんどくさくなっただけだ。……てかなんでサ○バイマンもついてきてんの?」
「えへへ……、サ○バイマンはもうやめてほいかなぁ……」
ちょっとトラウマになる……、瀬川はそういうと明日のほうを眺め始めた。
「ああ、わりいわりい。で、なんでおまえまでついてきてんの?」
「それはあたしは優太くんのクラスのいいんちょさんだからなのだー!」
立ち直りはえーな。
「と、いうのもあるんだけど。さっきは言い過ぎましたごめんなさい」
「は?」
瀬川は突然謝罪の文を述べ、立ち止まり、頭を下げた。
さすがに問題児言えども、友達……悪友の1人に、ましてや女の子に正面切って頭下げられるなど思っても見なかった。
「って、いきなりわけわかんねえから。ちょ、おまえ頭あげてくれ」
瀬川はそう?にははー、といつも通りの表情、雰囲気で笑っていた。
「で、なんで突然あやまったんだよ?なんかおれおまえにされたっけ?」
ふと、自分でもいままでの経由を振り返ってみる。……ん、特にこれと言ってなにかされたわけでもないし、したわけでもない気がしないでもない。
「やや、さっき。さっきちょっと言い過ぎちゃったかなーって、ね?」
頭にハテナを浮かべていたおれに、瀬川は回答を渡してくれた。ああ、さっき、さっきのやつね。……さっき?
「さっきとは?」
「ほえ?」
気の抜けた質問に対して気の抜けた答えが返された。
「や、ほえ?、じゃなくて。さっきっていつだよ」
「え、あ、さっきというのは、だから、さっきの……」
「……」
瀬川が急にわけわからんくらいにモジモジし始め、返答が答えになってなかったので、さすがのおれも少し本気の心配。……あれ?こんなのさっきもなかったか?
「え?え?なにをしているのかな?優太くん」
「え?なにって……、瀬川がなんか変だから熱でも図ろうと」
そう言った矢先、瀬川の返答前におれの右手が瀬川の額に触れる。
「え?え?ほ?ほえ?」
「はぁ?なに言ってっかわかんねえから」
って結構熱あるかもな。何気にアツイし。んー、どうしたもんかな。
と、考えてる俺の手を振り払い、瀬川は2、3歩離れ、俺から距離をとる。え、なんで?俺そんな嫌われてたの?朝風や花菱なら未だしも、瀬川からこんな扱い受けないといけねえの?
「ちょ、ちょ、ちょっとまって!ゆ、優太くんがそゆことするからさっき反射的にそゆこといっちゃんでしょ!」
「は?そういうことってどんなことだよ」
「いや、だから、その、あの……」
というと、また瀬川は黙り、しどろもどろしている。……やっぱあいつへんだな。なんかあんのかね。熱?それとも生理?
「や、だからそんなゴニョゴニョ言われてたってわかんねえって。てか、言葉発せられないくらいひどいのか?」
少しどころか、かなり心配になったので瀬川との距離を一歩で詰め、聞いた。
「やややーッ!その、それ!」
「は?それ?それってなによ?」
「だからぁ……、そうやって直接的に色々してくるから恥ずかしいのぉ……」
瀬川は顔を真っ赤にして消えいる声でそう言った。
へ?
「……へ?」
……ちょっといっていることがわからん。
「へ?じゃなくて!」
「お、おう!?な、なした!?」
珍しく瀬川が大きな声を出し、
「お、女の子はすっごい繊細なんだからそ、そういうことしたらすっごい恥ずかしいのだよ!」
「あ……は、はい」
ん、もう、優太くんは本当に乙女心をわかってないんだから。と瀬川が呆れ顔で言ってくる。
「いや、まあ、わからんでもないけど。女の子が繊細ってのは」
「……え?」
「なんだよ、その顔。急に冷めたような目で見んなよ」
だって優太くんがそんなことをーーなどと、
「てか、男女そんな変わらねえだろ、心境なんて。むしろおまえの言い分には正論であって正論でないところがある!」
「ほ、ほえ!?そ、その心は……?」
「乙女心を持っているような女がおれの周りにいるとは思えない」
「……」
なにに驚いているのか、それともおれの正論が虚を衝いたのか、それはわからないが唖然としていた。
「桂にしかり、花菱、朝風がそんな乙女心満載のロマンスっ娘だとでも思ってんのかよ、おまえは。花菱はなに言っても人の揚げ足取るような皮肉野郎だし、朝風に関しては掴み所ないよくわからない野郎だし、桂はアレだしな」
「あはは……」
「まあ、そんなことはどうでもいいんだけどよ。てか体調はなんともないんだよな?」
一応さっきよりは体調は良さそうだ。てか、顔色に関しては赤いを通り越して青い。青ざめている、というか呆れられいてるような顔だ。
「うん♪あたしは全然平気だよ!」
「そか。ならいいんだ」
そう言って俺は、瀬川と肩を並べて警備室への廊下を歩き出す。
と、少し歩いて、さっき言った俺の意見に足し加えてない部分があるのに気が付き、言うことにした。
が、その言葉が悪かったのか、瀬川はそれを聞いた途端顔を真っ赤にし、しばらく停止してしまった。
なんだこれ。
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