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スツーカ

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第二章

 彼等はだ、今度はこうしたことも話したのだった。
「じゃあな、今からな」
「ああ、仕掛けるか」
「急降下攻撃だ」
「撃って撃ってな」
「一両でも多く潰そうな」
 攻撃の話だった、その話をしてだった。
 スツーカ達は角度を急に落とした、そして。
 独特の急降下音、サイレンの様なそれを響かせて急降下攻撃に移った。そうして下に展開しているソ連軍の戦車や車両に。 
 次々と機関砲で攻撃を浴びせる、上から撃ち抜かれた戦車や車両が次々と炎上し爆発していく。その中で。
 ソ連軍の将兵達が逃げ惑っている、彼等は上を見て叫んでいた。
「避難だ!避けろ!」
「しかし逃げるな!」
 逃げてはいけない理由は明白だった。スターリンが許していないからだ。若し退けば容赦なくシベリアか懲罰大隊送りだ。
 それで彼等は必死に避けていた、上を見て戦車を必死にジグザグに動かす。
 だがそれでも逃げきれず何両も撃破される。その中でさらに話す彼等だった。
「早く空軍に連絡を入れろ!」
「さもないと好き放題やられるぞ!」
「くそっ、相変わらず嫌な奴等だ!」
「空から仕掛けるなんてな!」
「サイレンまで鳴らしてな!」
 その急降下音はだ、彼等にとってはまさに死神の来訪音だった。
 スツーカ達は容赦ない攻撃を続ける、だが。
 機関砲弾には限りがある、それでだった。
 パイロット達は弾切れになってだ、忌々しげにこう話した。
「おい、もう終わりだよ」
「こっちもだ」
「じゃあ仕方ないな」
「ここは帰るか」
「そうするしかないな」
 攻撃が出来なくてはどうしようもない、しかもだ。
「おたおたしてると戦闘機が来るからな」
「今のうちに逃げるか」
「ああ、そうしような」
「今のうちにな」
 こう話してだった、彼等は自分達の空港まで去った。
 そしてだ、空港で司令にこう言われたのだった。
「よくやってくれたが」
「それでもですか」
「敵の勢いはですね」
「駄目だな」
 首を横に振っての言葉だった。
「イワンの奴等は止まらん」
「じゃあこの空港もですか」
「放棄ですか」
「そうなるかもな」
 あえてはっきり言わなかった司令だった、だが表情に彼等のこれからのことがもう顔に出てしまていてパイロット達もその顔を見た。
「これはな」
「そうですか」
「わかりました」
「明日またな」
「出撃ですね」
「それですね」
「出てもらう」 
 実際にだというのだ。
「いいな」
「はい、わかりました」
 皆こう答えた、それが命令だからだ。
「それでは明日も」
「やらせてもらいます」
「どんどん倒してもらうからな」
 ソ連軍の車両、特に戦車をというのだ。
「これからも」
「毎回出撃してですね」
「そのうえで」
「相手の数は多い」
 ソ連軍のは、というのだ。
「多くなる一方だ」
「連中もう呆れる位に作ってきてますね」
「兵隊も多いですし」
「何かもうローラーみたいですね」
「やっつけてもやっつけても出てきますね」
「イワンの奴等は損害なぞ気にしない」
 それがソ連軍ひいてはスターリンのやり方だ。とにかく勝てばいいと考えてのことである。それで犠牲も厭わないのだ。 
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