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スツーカ

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第一章

                 スツーカ
 ドイツ空軍、ルフト=パッフェの象徴の一つだった。
 ユンカースJu87スツーカは急降下爆撃機として味方からは頼もしく思われ敵からは恐れられていた。
 だが、だった。ヒトラーはある日戦争がドイツにとって辛いものになっていく中で苦い顔でこう側近達に話した。
「正直言ってもうスツーカはな」
「あの機体はですね」
「最早」
「古い」
 苦い顔での言葉だった。
「旧式もいいところだ」
「早いうちに後継機が欲しいですね」
「何とか」
「全くだ、しかしだ」
「はい、これといった後継機がです」
「ありません」
「ですからまだ」
「辛いところですが」
「そうだ、使うしかない」
 ヒトラーは総統の席から苦い顔で話した。
「まだな」
「仕方ありませんね」
「このまま使いますか」
「パイロット達はよくやってくれている」
 ヒトラーはここでこうも言った。
「あの機体でな」
「そうですね、彼等は健闘しています」
「東部戦線でも」
「彼等に勲章は惜しまない」
 ヒトラーにしてもだというのだ。
「そうする」
「そうですか、それでは」
「ルーデル大佐にもですね」
「彼は恐ろしい」
 ヒトラーはその男には畏怖の言葉すら述べた、真剣に。
「あれだけの猛者がいるとはな」
「信じられないものがありますね」
「実に」
「彼にはどれだけの賛辞も足りない」
 ヒトラーはしみじみとした口調で述べた。
「私としてもな」
「そうですか。それでは」
「再びですね」
「またそれだけの戦功を挙げてくれた」
 それ故にというのだ。
「用意している。だが他の者達もだ」
「健闘してくれています」
「実に」
 その旧式機でだというのだ、彼等は心から言うのだった。そうしてだった。
 実際に東部戦線でスツーカに乗るパイロット達は果敢に戦っていた。クルスクでのチタデレ作戦が失敗に終わり東部戦線はまず南方からドイツ軍にとって不利になってきていた。南方の戦線でドイツ軍は大きく退いていた。
 その戦線の上空を飛びながらだ、スツーカに乗っているパイロット達は下を見て苦い顔でお互いに無線で話していた。
「どうなんだろうな」
「ああ、見渡す限り赤軍ばかりだな」
「Tー34ばかりだな」
「いや、パイプオルガンもいるぜ」
「カチューシャロケットもな」
 その車両もあった、とにかく眼下にあるのはソ連軍の車両ばかりだった。大軍がロシアの平原を進んでいた。
「どれだけいるかね」
「何百両か」
「多いな、相変わらず」
「どこからあれだけ湧いてくるんだ」
 苦笑いの言葉さえ出ていた。
「ウラルからどれだけでも来るな」
「全く、さっさと負けてくれればいいのにな」
「向こうも必死なんだろうな」
「やれやれだぜ」
 こうしたことを話してだった、そのうえで。 
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