リメイク版FF3・短編集
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銀髪ふぇち
「う~ん……、おれもイングズみたいな金髪がよかったなぁ?」
「何を云い出すんだ、ルーネス」
「だって、オレの髪って下手すりゃじーちゃんばーちゃんと同じような色だろ、お年寄りでもねーのにこれって……どう思うっ?」
「 ────確かにその若さで珍しくはあるが、私は然程気にならない」
「さほどって……、じゃあ少しは気になるって事だろ?」
「……悪い意味で気になる訳じゃない」
「この際はっきりしてくれよ、いいのか悪いのか、どっちなんだっ?」
「 ────いいに決まってる 」
「へ、マジで? 聞き間違いじゃない、よな?」
「 あぁ、……しかし何を今更そんな事を気にしているんだ」
「だってさ……何か視線感じるんだよ。町とかじゃ特に……、店とかいるとさ?」
「気にし過ぎだ。────むしろ、羨ましがられていると思えばいい」
「うらやましいか? この年でこんな髪!……オレ小さい頃、同じくらいの年の女の子に『ルーくんの髪、おばあちゃんと同じ色~』とか云われた事あってさ……、それで男子にもからかわれたり────ハクハツやろーとかってな。……その頃はあんま気にしてなかったけど、最近妙にその時のこと思い出しちまうんだよなぁ」
「お前もようやく、外見を気にする年頃になったという事じゃないか?」
「それからかってるだろ、これでも割と悩んでんだよ!……どうにかして染めらんねーかなぁ?」
「やめておけ、せっかくの綺麗な髪を──── 」
「 へ? 」
「いや、………何でもない」
「うーん、いっその事イングズみたいに短くしてさっぱりしちまお~かな。伸ばしたままわざわざ髪結んだりすんのって考えてみりゃ面倒だよなっ?」
「そういえば何故、その髪型が定着したんだ」
「母さんがさー、伸びてきたオレの髪いつの間にか切ってくれなくなったんだよ! 何か"勿体なくなってきた"とか云ってさ? 意味わかんねーよなぁ!……それで伸びた髪ジャマんなってきて、結ばざるおえなくなったんだよっ」
「そうか………(母君の気持ちが、判る気がする)」
「 ────あ、そっか、別のとこで切ってもらえばいいんだ! けど、いつも母さんにやってもらってたから金払って切ってもらうの抵抗あるんだよなー……。そうだ! イングズ、オレの髪切ってくれよ! 適当に短くしてくれりゃいーからさっ?」
「 ………それは出来ない相談だ」
「何だよぉ……、じゃいいや! 自分でやるっ。ハサミどこかな~? 宿屋の主人に借りてくるか!」
「待てッ。大体さっきから聴いていればルーネス、お前は────自分の髪の良さが判っていない!」
「 ………は? 」
「 若くして銀髪の何処がいけない? 陽光の元煌めくその白銀の髪は、美しいと云ってもいい! むしろ結ばずにそのまま晒していて欲しいくらいだッ」
「ちょ……? イングズ、落ち着けって……!?」
「 お前はむしろ生まれた時から銀髪である事を誇りに思うべきだッ。もしお前の髪色を笑う者がいるならば……、私がそいつらに云ってやろう。
────お前達など一般的に年老いてからしか銀髪にはなれない、若くしてこのような髪だからこそ美しいのだと!!………はッ、私は何をッ」
「 ………ははっ、そんな風に想ってくれてたなんてな? さんきゅー、イングズ。胸のつかえが取れたみたいだっ」
「そ、そうか、ならいい………」
「よっと………ほら、ほどいたぜ。どーよ、オレの髪っ?」
「 ────やはり、綺麗だ。さらさらしていて、煌めいて────思わず、触れたくなる」
「 ……って云ってるそばから触れてるしっ。
くすぐってーなぁもう……、ガキ扱いするように撫でるなよっ。てかイングズ、銀髪フェチだったのか??」
「何だその呼ばわり方は。……実際そうだとしても、それはお前のせいだ」
「はいそうですよーっと。……オレ最近になって自分の髪にコンプレ持っちまったの、どうしてだか分かった気がする。イングズに……、どう思われてんのかすげー気になってたんだよ」
「 ルーネス……… 」
「まぁでも、さっきの話でオレの髪どう思ってくれてたのか分かったし、もう気にする必要ねーな? この先誰かにからかわれても、イングズが庇ってくれるってわかったら────何か、すげぇ自信持てるよっ」
「あぁ………お前のこの煌めく銀髪は、私が守ってみせる」
「……てか、意味合いがオレの髪だけじゃね?」
「いや、お前という存在があってこそ、この銀髪は成り得ているのだ」
「だからそれ、結局見てんの髪だけ……? どんだけ"ふぇち"だよっ。────つーか、顔近づけすぎ! ニオいとか嗅ぐな! 髪にキスるなー?!……ぬあっ、反則だろそれ! いーかげんにしろお~~っっ!?」
End
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