リメイク版FF3・短編集
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ダブル・ベッド ※腐向け
「えぇ!? 二人部屋が2つしか空いてないんですか……?!」
「すいませんなぁ、何分小さな村でして────」
宿屋の老主人が、申し訳なさそうにレフィアに云う。
「参ったわ、あたしピンチじゃない……! この3人の内、誰か1人と同じ部屋で寝なきゃならないなんてっ」
「そんな深刻になる事ないだろー? 野宿でみんなして寝るの経験済みじゃん!……見張り役はいるけど」
欠伸をしながら面倒そうに云うルーネス。
「野宿とは意味合いが違うわ……、完全に仕切られた部屋で二人きりなのよっ」
「 ならこうしよう、レフィアは二人部屋を1人で使い、もう一方を我々3人が使う。……私はベッドではなく床でも構わないからな」
イングズの提案に、アルクゥが同意を示す。
「な、何だかイングズに悪い気もするけど……そうしたらどうかな、レフィア?」
「何よ、選ぶ権利はあたしにあるのよ!……ルーネスは問題外として、イングズにはサラ姫いるし────必然的にアルクゥになっちゃうわね~」
「え? ぼ、僕……?! 僕がレフィアと、寝るの!?」
「バカね! ベッドは別に決まってんでしょっ。一番無害そうだものね~? イングズは紳士的だとは思うけど、サラ姫の報復が恐いし……!」
「おいレフィア! 何でおれは問題外なんだよ? レフィア襲う気なんか全然ないっての!」
「そう云ってるとこからして怪しいのよっ!……行きましょアルクゥ、こんな野獣ほっといて!」
「わ、ちょ……引っ張らないでぇ~?!」
「アルクゥ~、遠慮しないで襲っとけよ~!」
「ルーネス、身もふたもない事を云うな」
「 ────んじゃ、おれ達もぼちぼち寝るかぁ。先、入れば?」
ルーネスが二人部屋のドアの前でイングズを促す。
「いや……、お前から入れ」
「まぁ、いいけど………うはっ?!」
「 ………? どうした」
「聞いてねー、だぶるべっど……っ」
「 ────何?」
ルーネスに続いて部屋の中を見るイングズの目にも、"それ"が映る。
「 ………確かに、聴いてないな」
「ど、どうすんだよ。てかレフィアとアルクゥ、大丈夫かっ……??」
「どうするも何も、1人床に寝ればいい。……私がそうしよう」
「へ? あぁ、ならいいけど………」
ドアを閉めて二人きりになり、ルーネスは急にどうしていいか分からなくなる。
「あれ……、どうやって寝るんだっけ??」
「私は武器の手入れがある、先に寝るならそうしろ」
至って、普段通りのイングズ。
「えーっと、寝るにはまず────着替え? つってもイングズいるし……っ」
「向こう向いてるから、勝手に着替えろ」
「あ、うん………(野宿の時と違って、変な感じだなっ)」
寝巻き用の薄着に着替えたルーネスだが、ダブルベッドの上に上がるのを躊躇する。
「 ───どうした、着替えたならさっさと寝ろ」
「いや、何か………お、おれが床に寝るからイングズがベッドに……っ」
「鍛え方の足りんお前が床で寝たらすぐ風邪でも引き兼ねん、やめておけ。それとお前……、髪解かないのか?」
ふとルーネスを見やるイングズ。
「へ?」
「そのままでは、上を向いて寝づらいだろう」
「よ……、横向いて寝りゃいーだろ?! 今、ほどきたくないんだよっ」
「そうか。────さて、武器の手入れも終わった。私も着替えるか」
「ぬぁに……!?」
自分の目の前で何の躊躇いなく脱ぎ出したので、思わず目を逸らしてしまうルーネス。
「 ………もう着替え終わったぞ。いつまでもベッドの傍に立ったままでいないで寝ろ、明日も早いからな」
そう云いつつ、床で寝る準備を整えるイングズ。
「う……、うん────」
戸惑いながらダブルベッドに這い上がり、ちらっとイングズの方を見ると………寝巻き用だからだろうが、いつもより随分薄着でそこから垣間見える程好い筋肉の付き具合が男らしく、ルーネスは自分がいかにまだ子供っぽく細身であるか思い知らされる。
「 ────何を見てるんだ」
視線を感じたイングズが振り向き、怪訝な表情をする。
「みっ、見てねーよ別に……?!」
「灯り、消すからな。────おやすみ」
そう云って燭台の火を消し、イングズは床に敷いた敷物の上に横になる。が……、ルーネスは眠れそうにない。
「う~ん、寒い……っ。ベッド広すぎなせいかなぁ? イングズ、床だともっと寒くないかぁ……?」
「寒くない。……と云ったら少し嘘になるか」
「やっぱそうなのかよ……。ならさ、来いよベッドの上。おれ向こう向いてっから……、いいよ遠慮しなくて」
「 ────なら、お言葉に甘えるか」
ベッドの上が軋み、お互い背を向け合いつつ、同じベッドに─────
「むあぁっ……!」
ルーネスがおかしな声を上げたかと思えば、寝返りを打った拍子にイングズの背中に突然ぎゅっと抱き付いた。
「 ………何事だ 」
「ガマンできな……っいや、違う────さ、寒いから、ゆたんぽ代わりっ」
「人を物に例えるな。………しょうがない奴だ」
「 へ………? 」
イングズが、寝返りを打ってルーネスの方を向いた。……暗がりで顔はよく見えないが、互いの吐息が掛かる程近すぎるのは分かる。
「ほら────やはり髪ほどけ」
不意に片手を頭の後ろへ伸ばされ、結ばれていた後ろ髪を解かれる。
「ぬぁ、何すん………わっ」
次の瞬間、抱き竦められた。
「 ────これで、寒くないだろう?」
間近に囁かれ、鼓動は高鳴ってゆく。
「さ……寒くない、けどなんか逆に、熱くっ─────」
熱に浮かされだしたコトバにならない声は、唇を覆う何かによって阻まれた。
ダブルベッドの上ではもう、止められはしない。
End
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