VenusBlood-d×d-
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天才と無能
「若手悪魔の顔合わせね」
手に持っていた書を愛用のデスクの上に投げてそうつぶやき、紅茶に口をつける。
あの会談から暫らく経ち季節は移り変わり初夏を過ぎ夏本番となっている、悪魔勢力からの独立を果たした私達エネルゲイヤは何時も通りの日々を過ごしている。
でも分かる皆私達を警戒している、当然よね、渦の団が動き出してからどの勢力も擬視暗鬼になっているから新参者である私達を疑ってかかる。そんな所に送られて来たのが魔王からの招待状、内容は若手悪魔の顔合わせにかこつけた各勢力のトップとその直下の者達の顔合わせ。まあわざわざお誘いして頂いたのだから参加しないとね。さて一体誰を連れて行くか?まずノーラは絶対ね、後は比較的三大勢力に顔の知れているフィネガスとティアを連れて行くとしてヨルムが外に出たがっていたから三姉妹揃って連れて行きましょう。さて後は留守を誰に任すかね?いざという時の襲撃に備えて軍部の者が好ましいわね、となるとそうねフリードとヴェズに任せましょうかフィネガスが居ない状況でもあの2人なら問題無いでしょう。
「ノーラ、私この顔合わせに参加しようと思うわ」
「さようですか、では準備を始めておきます」
「お願いね」
そう言ってノーラは執務室を出て行く、久方ぶりに冥界の地を訪れる事に心が躍る、故郷に錦を飾るというのはこう言う物なのかしら?まあ歓迎はされないと思うけど。
「さてと、今のうちに皆の礼服やドレスを見繕わないと」
子供達用のパーティに着て行く服を決めておく、娘達や息子達を思いっきりお洒落にしないと、そう思い私は一冊のノートを取り出す、これには今まで私がデザインした服やドレスが記録されてる、母として子供達に自分が作った服を着せたいと思って溜めてきたもの、娘達は喜んで私がデザインをした物を着てくれたけど、息子達は恥ずかしがって着たがらないのよね~、やっぱりデザインが子供ぽいのかしら?ノートに思いついた案を書き足し紅茶を飲む、もうあまり時間も無いから急いで作らないと、そう思い頭を捻りペンを走らす。そして服の完成が近づくと同じくパーティの日付も近づき服が完成したのはパーティの前日だった。
エネルゲイヤの頭脳と呼ぶべき指令室、今この部屋の中は緊張した空気に包まれている。
「人員収納の再チェック、・・・問題無し」
「エネルゲイヤ、浮上します」
ゴゴゴゴと響く轟音とオペレーターの子の声と同時にエレベーターに乗った時の様な弱冠の重力を感じた後に浮遊力を感じた。
「システム、オールグリーン。浮上し続けています」
「目標高度に到達、現高度に高度を固定」
「エネルゲイヤ用転送陣を展開」
「目標、古都ルシファード北東の郊外」
エネルゲイヤよりも巨大な魔法陣が展開され、エネルゲイヤが転送されていく、魔法陣から発せられる光で外の様子を眺める為のモニターのカメラが光に覆われ何も見えなくなる、
徐々に光が収まって来ると紫色の空に薄暗い世界がモニターに映し出されていた。
「着いたようね」
「はい、座標のズレは無し、転送による建物や住民への被害なども今の所報告されていません」
「高度は現状を維持。私達が戻るまで警戒態勢を維持して、もし私達が居ない間に何かあったらどんな些細な事でも報告して頂戴、有事の際の為に指揮権をフリードとヴェズを持たせておくわ」
「分かりました、どうぞお気よ付けて行ってらっしゃいませ」
オペレーターの子達の声を背に私は指令室を後にする、さあお披露目と行きましょうか。
「さて準備は良いかしら?」
「転送の御用意は出来ております」
「御意に」
「何時でも行けます」
「はい」
「何時でも行けるわよ~」
『わくわく、わくわく』
いつも通りのメイド服のノーラ、鎧姿のフィネガス、白いドレスを着たティア。黒のドレス姿のヘル、胸元が空いたチャイナドレス姿のフェル、黒のゴスロリ姿のヨルム、私は代表と言う事で赤を主調としたドレスを着て着飾っている、そして転送する。視界が魔法陣の光で塞がれ、光りが収まるとパーティの会場らしきエントランスに居た。
「転送完了したようね」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
エネルゲイヤから転送で飛んで訪れたパーティ会場、いきなり現れた私達に驚いている様ね、そしてまだ会場の準備が整う前らしいから私達は待合室らしき部屋に通された。
ノーラの淹れてくれた紅茶を飲んで待って居ると、ド―――ン、と轟音が響く。
「少し様子を見てこようかしら」
紅茶のカップを置いて立ち上がる、フィネガス達も私の後に続く。
廊下に出て音のした方へ向かうと懐かしい顔を見つけた。
「サイ」
「っ!?」
見つけたのはサイラオーグ・バアル、私の従弟でかつて無能と揶揄されていた子。
「久しぶりね、サイ」
「はい、エネルゲイヤ様もお久しぶりです」
サイに近寄り挨拶をする。
「昔の様に姉さんで構わないわよ、サイ」
「そう言うなら、姉さん」
サイはバアル家に産まれながら消滅の魔力を持たなかった、そのせいで辛い目に会って来た。そんなサイと私が出会ったのは彼がまだ幼少のまだ左遷される前たまたま大王に用があり大王の居城を訪れた時1人で泣いている彼に声を掛けたのが切っ掛け、それ以来何かと気にかけ、何時しか私はサイを弟の様に思い、サイも私を姉の様に慕ってくれた。
「そう言えば次期当主に選ばれたそうね、おめでとう」
「ああ、ありがとう姉さん。姉さんが居てくれたから俺は」
「私は特訓に付き合っただけよ、全てはサイの努力の賜物よ」
久しぶりのサイとの会話昔に戻れたようで楽しかった。
「そう言えばこんな通路で何をしていたの?」
「ああ。くだらんから出てきただけなんだ」
くだらないね、大方血の気が多い若手同士がやり合っているんでしょう。
ドォォォオオオオ、建物が揺れ大きな爆発音が響く。
「まったく、だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」
私は気になったので音のした方に足を進める、皆もサイも溜息を吐きながらも着いて来る。
音がした方に進み若手の待合室の扉を開ける、そのでは二組の悪魔が睨みあっていた。
「ゼファードルこんな所で戦いを始めても仕方なくてはなくて?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら」
「ハッ!言ってろよ、クソアマァ!俺が折角そっちの個室で一発しこんでやるって言ってんのによ!アガレスのお姉さんはガードが堅くて嫌だね!ヘッ!だから未だに男も寄ってこずに処女やってんだろう!?ったく、魔王眷属の女共はどいつもこいつも処女臭くて敵わないぜ!だからこそ、俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」
どっちもどっちね、ゼファードルはもっと品をアガレスも淑女が死ぬや殺すなど言うものじゃ無いわ、とりあえず止めましょうか。
「2人とも静まってくれないかしら?」
「ああん!?何だよテメェは?俺に指図すんじゃねぇ、それとも何だ?お前も俺に一発しこまれたいのか?ギャハハハ!!」
「貴女はまさか!?」
ゼファードルの言葉に後ろに居る皆が怒りを覚える。アガレスは私を見て気付いたようね、ゼファードルは品も無ければ知識も無いようね。
「残念ね、貴男じゃ私の閨に入る前に死ぬわよ。ボウヤ」
普段は抑えている魔力を放出しながらゼファードルに近寄り頭を撫でる。あらあら顔を青く染めて歯をカチカチ鳴らして身体を震わせて寒いのかしら?待合室にいた皆が顔を青くしている、していないのは待合室に居たソーナちゃんと入口に居たサイと今到着したリアス達くらいね、それでも表情を強張らせているけど。
「さ、先ほどの無礼知らずとは言えお許しください」
アガレスが私に頭を下げる、別に良いのに。
「気にしなくて良いは、只静かにしてもらいたかっただけだから」
そう言って私は近くのイスに座りノーラが紅茶を淹れてくれる。
「此処にいらっしゃったのですか、エネルゲイヤ様」
会場のスタッフらしきやって来た。
「此処は若手悪魔の皆さんの待合室ですので」
「此処で良いのよ、長らく世と関わらない生き方をしてきたから。今の若手悪魔の顔を見ておきたいの」
そう言って私は再び紅茶を口にする。
「私に遠慮しないでくつろいで頂戴」
そう言う私に若手が貴女が居るからくつろげる訳無いでしょうと言う顔をする。
結局私達が呼ばれるまで皆借りて来た猫のように大人しくしていた。
後書き
サイとリーネの過去の話も書こうかなと思っています。
リーネの婚約の相手がサイラオーグでバルア家を訪れて、初めて会ってその出会いで変わっていくサイラオーグみたいな話で。
今回もお読み頂いて有難う御座います。
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