リメイク版FF3・短編集
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図書館は眠らない
前書き
サロニア解放後の、アルクゥとイングズの話。
「わぁ……! こんなにたくさんの本────夢みたいだ……!」
「………アルクゥは本当に、本が好きだな」
はしゃぐような僕を見て、イングズは蒼い目を細めて微笑んでいる。────何かちょっと、恥ずかしい。
ルーネスとレフィアは、仲良くとはいかないだろうけどサロニアの武器防具屋を巡っていて、イングズは僕に付き合って図書館に一緒に来てくれた。
イングズも、僕ほどじゃないけど本は読む方らしい。……何だろう、そんなイングズに親近感というか、ルーネスとは違った安心感があるなぁ。
ルーネスがやんちゃなお兄ちゃんなら、イングズはやっぱり頼れるお兄さん────だね。
「どうした、何か面白い事でも書いてあったか?」
ふふ……っと、つい笑ったのをイングズに聞かれたらしい。僕は今手元で開いている本を、イングズに見せるように近づけた。
「ほら、これすごいよ! 時の歯車の原理……、永久機関などについて、だって! 読み応えあるなぁ……!」
「さ、さすがに難しそうな本だな………」
イングズは、細かい文字に目を凝らす。
「君は、何読んでるの?」
「騎士の在り方について、書かれている本だな。なかなか興味深い」
「そっかぁ、イングズらしいね。……あ、これも面白そう! ほら、これ──── 」
「 ん……? 」
ゴツンッ
「あいたっ……?!」
「 ………! すまん、大丈夫かアルクゥ?」
勢い余って、頭をぶつけ合っちゃった。
「い、今のは僕が悪いよ。ちょっとはしゃぎ過ぎたかな……? これだけたくさんの本の匂い嗅いじゃうとつい、ね……!」
「 ──── フ」
「え、なに……?」
イングズが、微笑しながら僕の頭を撫でてきた……!?
「いや………可愛らしいと思って」
「ふぇ……?!」
「あ、いや、すまん。子供扱いした訳ではないんだ」
「 ………ルーネスに云わせると、そうなるよ」
僕はつい、イジワルを云った。だって……ルーネスには時々そうしてるの、知ってるから。
「わ……、悪かった」
「ふふ、いいよ別に。……でもあんまりそう軽々しく手を出さない方がいいと思うよ? そうでなくても、イングズにはただでさえ勘違いさせられるというか──── 」
「そう、なのか??」
自覚なしにさりげなくやっちゃうから、いいんだろうなぁ。
「ひとつ………聞かせてよ。僕とルーネスなら、どっちを本当に"弟"にしたい?」
「ん……、どういう事だ?」
「そのままの意味だよ」
小さく話しているとはいえ、図書館で何を云ってるんだろうと僕は内心可笑しくなる。
「む……、ルーネスは傍にいると喧しく、手を焼かされるからな。アルクゥならば大人しく、手も掛からないだろうし──── 」
「どっちなの、結局?」
今の僕は、ちょっとイングズを困らせたいだけなのかもしれない。
「それは、だな………」
「はっきり云ってくれて大丈夫だよ。───本当はルーネスといる時の方が、楽しいんでしょ」
「いや、そんな事は………」
「僕は小さい頃から、いつもルーネスに守ってもらってた。けど……、今はもう違う。僕にもこれから、守りたいものが出来たし。……だからイングズ、君にはルーネスの事を守ってほしいんだ」
「何を云ってるんだ。私が傍にいる限りルーネス、レフィア、アルクゥ ──── 三人とも守るぞ」
わぁ、云ってくれるよね……。僕には真似できないかっこ良さだ。
「じゃあ、僕だってみんなを守らなきゃ。無事にみんなが、この旅を終えられるように……。僕じゃ、頼りないだろうけど」
「頼りにしているよ、アルクゥ。だから────お前の事も守らせてくれ」
「え………う、うん……!」
あぁ、やっぱりルーネスだけに独り占めさせるのはよくないなぁ。
「……よし、アルクゥ、今日はとことん本読みに付き合うぞ」
「え、急になに云い出すの?」
「私がルーネスを贔屓しているのではないと、少しでも証明してみせよう」
「ふ~ん、そっかぁ。そう云ってる時点で贔屓してるようなもんだけど────じゃあそうしてもらおうかなぁ? 今夜は………帰さないからね」
「か……、覚悟しよう」
その後、ルーネスとレフィアが呼び戻しに来ても、僕とイングズは一晩中………サロニアの図書館の本という本を読みあさった。
さすがにイングズは、ウトウトしだしちゃったけれど。
END
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