少年少女の戦極時代Ⅱ
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禁断の果実編
第73話 Sロックシード
『ハッ、なるほどね。認めてやるよ。確かにあんたは俺たちの誰より戦いを知ってる。ならこっちも「とっておき」をくれてやる』
シグルドが取り出したのは、Sの刻印されたロックシードと、3つのスイカの錠前。
息を呑んだ。それが何を意味するか知らない斬月ではない。
『俺が無策でここまで来たと思うなよ』
シグルドはスイカロックシードを投げ放ってから、Sロックシードを弓のバックルにセットした。
《 ロック・オン 》
『ハァァ――っ!!』
Sロックシードによるソニックアローが放たれる。
《 コネクティング 》
オーロラ色に光る矢は一直線に、投げ放たれたスイカロックシードを貫いた。
スイカロックシードは変形し、無人のスイカアームズが組み上がり、スイカ武者が3体立ち上がった。
――シドの切り札。Sロックシード。文字通り、装着者なしにロックシードをアームズ形成し操縦するロックシードだ。
『ジャイロモード! 斉射!』
低空飛行を始めるスイカ武者。斬月は避けようとしたが、上から爆撃されてはメロンディフェンダーでも防ぎきれない。
程なくして斬月は、降って来た弾丸のダメージによって転がった。
『大玉モード! 三方向、同時、突撃!』
スイカ武者が大玉スイカにモードチェンジし、左右と正面から玉座へと転がり出した。
まずい。ロシュオはもちろん、彼の傍らには碧沙がいる。
白い王が玉座を立ち、片腕を挙げた。するとたちまち、転がった大玉スイカが全て、彼の周りから弾き返された。
かしゃん、と三重に音を立てて落ちたスイカの錠前。
『馬鹿な!?』
『大人しく去れ。さすれば命までは奪うまい』
『ふざけんじゃねえ!』
ロシュオがまた腕を上げ、シグルドに向けた。すると、何かの圧力が白い掌から噴き出した。シグルドが岩壁に叩きつけられた。
忘れていた。彼もまたオーバーロード。強さに価値を置いて滅亡から生き残った、闘争者。愛する者さえ、弱いから、その手で淘汰したモノ。
圧力に負けてチェリーのエナジーロックシードが、ゲネシスドライバーが壊れる。それでもシドは止まろうとはしなかった。
「俺は誰の言いなりにもならねえ!! もう二度とナメた口は利かせねえ!! 俺は――人間を、超えるんだぁぁぁぁぁ!!!!」
斬月の中で、何かの針が臨界を振り切った。
斬月はメロンディフェンダーを前に構え、圧力に飛び込んだ。
ひと瞬きの間だけメロンディフェンダーが斬月とシドに降りかかる圧力を軽減した。斬月はメロンディフェンダーを捨て、シドを押した。
どしゃ! 貴虎とシドは同時に圧力を抜け出し、地面に転がった。貴虎の変身は衝撃で解けてしまったが、二人とも無事だ。
「何しやがる!」
「お前がやられそうになるからだろうが!」
「てめぇの情けなんざ受けて堪るか! 俺は俺の力で禁断の果実を勝ち取るんだよ!」
「待て! ……ぐっ!」
シドは貴虎を振り解いた。わざと受けた傷に痛みを起こさせる突き飛ばし方だった。貴虎はすぐにシドを追えなかった。
後書き
S=steering(操縦)という意味だというのは本作の完全な捏造です。真に受けてはいけませんよ?(真顔)
原作ではせっかく出した虎の子だったのにあまり活躍しなかったので、活躍させてみたくて出しました。実はこれが斬月との対戦カードを組んだ大きな理由だったり……
何だかんだでお人好しな貴虎だといいなと思って。
そして何だかんだでプライドが高いシドだといいなと思って。
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