少年少女の戦極時代Ⅱ
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禁断の果実編
第72話 斬月vsシグルド! 果実を巡って
――咲がサガラと共に行ってそう経たない頃。
ロシュオがどこか愉しげな声を上げた。
『招かれざる客が来たようだ』
枯葉を踏みしだく音がして、壁の一つの向こう側から現れたのは、シドだった。
「お前か。禁断の果実を隠してるってのは」
「シド――」
「よう。驚きの再会だな」
一瞬でも、自分を探しに来たのかと期待した貴虎が馬鹿だった。
「兄さん――」
碧沙が量産型ドライバーを外し、ある物と一緒に貴虎に差し出す。貴虎はそれらを受け取った。
「お前はここにいなさい」
「はい、兄さん」
貴虎は玉座の壇を降り、ロシュオを隠すようにシドと対峙した。
「念のため聞いてやる。禁断の果実を手に入れてどうする気だ」
「決まってんだろう。神の力に至る。俺たちはそもそも、最初からそのためにオーバーロードを探してたんだからなァ」
俺たち。最初から。一つ一つの言葉が、貴虎を除く3人の結託を痛感させた。
それでも貴虎は痛みに顔を伏せることなく、シドと向き合った。
「俺は彼に希望を示すと約束した。お前に彼をやらせるわけにはいかない」
「ちっと見ねえ間にすっかりオーバーロードの犬っころが板に付いたじゃねえか」
いつもの軽薄な口調で言ったかと思いきや、シドは今まで見たこともない鋭い目をして、チェリーのエナジーロックシードを開錠した。
「俺はあんたとは違う。――変身」
《 チェリーエナジーアームズ 》
チェリーの意匠のアーマーがシドを鎧う。アーマードライダーシグルドへと変える。
『さあ、やらせないんだろ? 俺をどう止める? 何もせず兄妹で逃げるってんなら見逃してやってもいいぜ』
いつもの挑発のポーズ。確かに生身の人間がアーマードライダーに勝てる道理はない。
生身の人間ならば。
貴虎は量産型ドライバーを腹に装着し、メロンのロックシードを開錠した。
咲のためのドラゴンフルーツのロックシード探し。見つけたのは何もドラゴンフルーツだけではなかった。天はまだ貴虎を見放してはいなかった。
「変身!」
バックルにセットしたメロンの錠前をカッティングブレードで切った。
《 ソイヤッ メロンアームズ 天・下・御・免 》
頭上からメロンの鎧が落ち、貴虎を装甲し、斬月へと変えた。
手にはメロンディフェンダー、腰に無双セイバー。もはや懐かしくさえある、メロンアームズの、感触、感覚。
『行くぞ!』
斬月は腰の無双セイバーを抜刀して走った。
『たかがAクラスで、すっかりその気か!』
シグルドは弓にソニックアローを番え、斬月に向けて斉射した。斬月は矢の弾幕をメロンディフェンダーで防御して突破した。
無双セイバーでシグルドに斬りかかった。シグルドは弓で無双セイバーを受け止め、二つの得物が鍔迫り合いに持ち込まれた。
(片手、しかもただのロックシードの俺のほうが、この状況では不利)
ギリッ、チチチッ。刃と弓がこすり合う音。押しているのはシグルドのほうだ。
斬月は僅かに刀身をずらし、鍔迫り合いを解く。態勢を崩したシグルドの隙を見逃さず、斬月は無双セイバーで斬りつけた。
火花が散った。シグルドが下がった。
『実戦経験なら俺のほうが上だ』
貴虎以外の3人はゲネシスドライバーを持っていたが、「持っていた」だけだ。頻繁に街のインベス掃討や“森”で調査隊の護衛をしていた貴虎には、経験という、彼らにはないアドバンテージがあった。
後書き
原作にはなかった、貴虎が万全だったからこそ実現したカードです。
ちょっとだけシドに有利? と思わせてか~ら~の! やっぱり兄さんは強かった、です。
メロンの錠前見つけたのをご都合主義と言わば言え。
兄さん早めの戦線復帰が書きたかったんです!(>_<) こちらでは光実と戦うために戦極ドライバーを取りに行くなんて展開はありませんからね。
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