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名古屋攻勢

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第八章

「だからあなたも頑張るだがや」
「わかったがや、名古屋なだがや」
「結婚と」
 そしてだった。
「ドラゴンズがポイントだがや」
「そこを考えて攻めるだぎゃ」
「それが名古屋だがや」
 まさにそれだと言う遥だった、正幸もそのことがわかったのだった。
 そのうえで名古屋で生きて商売をしていく、彼はもう名古屋に入っていた。遥と共に。
 それでだった、ドラゴンズは優勝した。すると実際にだった。
 正幸は修羅場の中にあった、店は優勝記念バーゲンセールになり彼もまた右に左に動き回ってものお売った。
 服が何でも飛ぶ様に売れる、これには彼も驚いていた。
「これが優勝だがや」
「西武のバーゲンみたいだがや」
 遥は西武が優勝した時の西武百貨店のことを引き合いに出した。
「そうだがや」
「その通りだぎゃ、とにかく今は」
「売れに売れているだがや」
 お客さんが殺到してものをどんどん買ってくれる、その財布を締める名古屋人がだ。
「これだけで一年分はありそうだぎゃ」
「その通りだがや、優勝した時はこうだぎゃ」
「中日が攻めてだがや」
「うちも攻めるだがや」
 中日は攻めて優勝した、そしてこの店もだというのだ。
「そうするだがや」
「わかったぎゃ、それならだがや」
「ただ」
「ただ?」
「忘れものだぎゃ」
 遥はにこりと笑ってこう正幸に言ってきた。
「頭だぎゃ」
「頭?」
「あなた今帽子を被ってないでりゃーーす」
 正幸の頭を指差しながらの言葉だった。
「だから被るだぎゃ」
「あっ、そのことだがや」
「そうだぎゃ、すぐに被るだぎゃ」
「わかっただぎゃ」
「攻める時に兜は必要だがや」
 遥はにこりと笑って夫に言う、勿論自分はもう兜を被っている。今現在のドラゴンズの帽子を。
「忘れてはならないだがや」
「わかったぎゃ、それなら」 
 正幸は妻の言葉に頷き九十年代の帽子を出してきて被った、そのうえで名古屋で最も激しい攻勢にあらためて加わるのだった。その次の日本一記念の攻勢にも。


名古屋攻勢   完


                                2013・12・24 
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