セロリ
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第二章
「違って当たり前ね」
「そうだね、じゃあ今のセロリは」
「私が食べていい?」
僕のセロリを見ながら尋ねてきた。
「そうしていい?」
「いいよ、食べないし」
それなら構わなかった、それも全く。
「それじゃあね」
「ええ、それでね」
こう話してだった、そのうえで。
僕は彼女にセロリのスティックをあげた、何も思うことはなかった。そうして朝の食事を終えて一緒に仕事に出た。
職場はそれぞれ違う場所だ、僕は仕事場の本屋に入ってからだった、倉庫で本の整理をしながら同僚に言った。
「今朝彼女と野菜スティックを食べたけれど」
「何だよ、おのろけかい?」
同僚はその僕に笑ってこう返してきた。
「聞くけれどどんな話だい?」
「うん、セロリがね」
「御前嫌いとかか」
「そうなんだ、けれどそれが出て」
「困ったんだな」
「そうなんだ、まあ野菜スティックにセロリはね」
考えてみればだった、このことは。
「定番の一つだね」
「人参、胡瓜と並んで」
「そうなんだよね、けれどね」
「生のセロリは苦手だからか」
「そうなんだ、だからね」
「食べられなかったんだな、セロリのスティックは」
「生だとね」
同僚にも言った、生のセロリは。
「無理なんだ」
「他だといいんだよな」
「うん、火を通したらね」
そうしたセロリはだった、僕も。
「大丈夫だよ」
「何かあったのかい?前に」
それで生のセロリが駄目になったかというのだ、同僚が尋ねることは。
「それでかい?」
「いや、そういうのはなくて」
「じゃあ食わず嫌いか」
「うん、そうなんだ」
実はこれだった、僕は生のセロリについては完全に食わず嫌いだ。今まで食べたことがないのでどうしてもなのだ。
「あれはね」
「それじゃあな」
「一回食べてみたら」
「いいんじゃないか?食わず嫌いはよくないしな」
「そう思ってもね」
それでもだった、僕にしてみると。
「中々ね」
「食わず嫌いってやつはな」
「うん、どうしてもね」
「俺も女房にいつも言われるよ」
「君もなんだ」
「俺は豚の脂身が駄目でな」
同僚は苦笑いで僕に言ってきた、彼はそれが駄目だというのだ。
「それで女房に言われるんだよ」
「食べろって」
「他にもな、梅干とかな」
「梅干は身体にいいからね」
「それで言われるんだよ、毎食一個は食えって」
「奥さんはいつも梅干食べてるんだ」
「頂きますをしてな」
御飯を食べる前のそれからだというのだ。
「まず絶対に梅干食うんだよ」
「それ織田信長みたいだね」
「そうなんだよ、信長さんみたいに鋭くなれるからって言ってな」
「まず梅干を食べてからなんだ」
「飯を食うんだよ」
「それで奥さんに言われるんだ」
「俺も梅干食えってな」
困った顔で言う彼だった。
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