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生還者†無双

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狩りその2

夜の山中を歩いた事があるだろうか?歩いた者は解るだろうが真っ暗で何も見えない
月が出ていれば開けた場所なら割と見えるが木々の生い茂る中に入れば……言わずもながらだ
だからこそ現代では暗視ゴーグルとゆう便利な物があるのだが三國の世には無い
まぁ人間の目には暗闇に対応する暗順応があるので暫くすれば自然と慣れる
素早く目を暗順応させるのは数多くある野戦の基本的な技術の一つである


全く何で俺はこんな事してんだ?どうしてこうなった?
木々の隙間から月の光が洩れる以外は真っ暗だな……まぁ見えなくもないが
ギュッとツタを結び最後のトラップを仕掛け終え辺りを見回すが姿はおろか気配もない
まだこの近くには居ないみたいだな……酷く気疲れしているのは女絡みだからか?
何度目か解らないデカイ溜め息をして妙に重い身体を動かす
俺の冤罪の為に散った(死んでない)奴等の仇をとらねぇと寝覚めが悪いからな

「それじゃ始めるか【狩り】ってヤツをよ……」

消した気配の痕跡あえて残して行動する……まるで深淵に誘う道標の様に
足跡、匂い、音、スカウトの連中は僅かな材料でもあれば地獄の果てまで追ってくる
多分あのお嬢ちゃんもその類いだ間違いない、だからこそやり易いってもんだ
あくまでも自然と……解る者しか気が付かない程度から時には大胆に気配を晒す
緩急のつけ具合がミソなんだ、まぁ本来こんな細かい事はあんまりしたくねぇけどよ
段々と若々しい気配が近付いて来るのが手に取るが如く解る
こうまで解りやすいと挨拶(悪戯)の一つでもしてやりたくなるが我慢しないといけねぇ
なんたって折角苦労して仕掛けたんだ……しっかり遊ばねぇと勿体ない
自分でも今すげぇゲス顔しているなと思ったのは内緒だ、大人気ないからな
さて……そろそろ狩り場へ御案内しましょうかね、雪蓮にもお礼しなけりゃならん

「案外速いな、全く歳は取りたくないもんだ」
「御使い様……逃がしませんっ」
目の前の大きな木の枝の上にちょこんと周泰がいた
「嬢ちゃん、こちとら被害者なんだ手加減出来ねぇぞ」
「被害者……?何だか分かりませんが天誅っ!」

木の枝から猫が飛び掛かる様に暁に襲いかかるがヒラリと避けられあっと言う間に逃げられる
一筋縄では行かないと分かっていたけど私の攻撃をあんな簡単に……
何事も無かった様に逃げる暁を見て落胆するも素早く追撃を開始する
(御使い様の背中は見えている、捕らえるのは時間の問題です
特殊加工をしたこの墨で天誅してやります!恥ずかしい所見たのが悪いんです!
でも……私も見くびられました、こんな幼稚な罠に引っ掛かるとでも思っているの?)
軽快な動きで罠を避け、あるいは破壊し速度を緩める事なく突破していく
(足止めにもならない小細工ですね……次こそは逃がしませんよ御使い様……)
更にギアを上げて速度を増す周泰、暁が捕まるのは簡単かと思われた


あれから暫くたったが周泰はまだ暁に天誅を下せていない
それどころか最初の余裕などはなく疲労と焦りが見えていた
おかしい、何かがおかしい
見えている、確かに見えているのに何故か追い付けない
付かず離れずの距離を保たれたまま酷い時は挑発や欠伸をしている
むきになって追いかけても距離は縮まる事はなく更に体力を無駄に消費した
限界まで酷使した身体を休ませる為に立ち止まると荒れる呼吸が肩を激しく上下させる
(そろそろ夜明け間近だし早く捕らえなきゃいけません……)
焦りと不安が自身の状況判断力を鈍らせたのか、迂闊にも足元の警戒を怠った
踏み出した一歩は巧妙に仕掛けられた罠を起動させた
(こんな事今まで一度も無かったのに【バキャ】はっ!?)
ヒヤリと背筋に冷たい物が流れる感覚、長年の勘が警告を発し慌ててバックステップするも時既に遅し
片脚に何かが巻き付きバランスを崩されるとズルズルと凄い勢いで地面を引きずられ
そして周泰は天地が逆さまになり後頭部への一撃で意識が飛んでしまった



(やれやれ……筋は悪くないがまだまだ甘いな)
目の前にぶら下がる周泰を木の枝でツンツンしながら暁はぼやく
こんな小さな子供が海兵隊顔負けの技術を持ってると思うと複雑な気分になるからだ
常識が通用しないのは理解しているのだが中々納得は出来ない
なんかリアルなリカちゃん人形みたいだな……すぐにぶっ壊れちまいそうだ
暫くツンツンしているとうわごとでお猫様お猫様と言っているが……そんなに猫が好きなのか?
しかしこれからどうするか……?つい流れに任せて色々やっちまった
取り合えずはこのお嬢ちゃんを何とかして今後の事は祭に任せりゃ何とかなるな
ふんっと腕に力を入れてロープを引っ張り少し高めに固定した
少し休憩すっかな……、腰から水筒を取りだすと一気に中身を飲み干した


「お猫様……うにゃ?此処は?私は一体……」
「よう、気分はどうだお嬢ちゃん」
「御使い様?何でそんな所に?あと頭がズキズキします」
「まぁ何で逆さまなのかは俺じゃなくて嬢ちゃんが逆さまで宙吊りだからだ、頭が痛いのも多分それが原因だな」
「あ……ご親切に有難うごさいます……ってえぇ!私どうして!?逆さま?!」
ジタバタとぶら下がりながら暴れだす周泰だが粗末なロープがギシギシと悲鳴をあげる
宙吊りになっている高さはそこそこ高い5m程だが真下の地面は岩だ
落ちたら只ではすまない場所をしっかりと選定してある、まぁ職業病だな

「おい、あんまり暴れんじゃねぇ!ロープが切れちまうぞ!」
「え?」

劣化したロープはあっさりと切れ周泰の身体は重力の法則に従い落下した
いつもの彼女ならばこの程度落下など何ら問題はないが今回は違う
極度の疲労と頭に血がのぼって軽い目眩を起こしていた、更に割と強めに脚に絡まったロープが体勢を余計に崩す
スローモーションで地面が迫り自分の未熟さを今更ながら悟る周泰
目ギュッと閉じてもうじき自身を襲う衝撃と生きていれば死ぬ程痛い痛みで地面をのたうち回るだろう
自分の未熟さを呪いながら、せめてもう一度お猫様をモフモフしたかった

「だから言わんこっちゃねぇ、大丈夫か?」

暁はAMスーツが起動してムキムキになった二の腕で落下してきた周泰を支えていた
因みに落ちてくる人間を普通に腕だけ受け止めたら両腕が折れてしまうから迂闊に真似ては駄目だ
腕の中にいるリアル リカちゃん人形……違った周泰だったか?しかし長い髪だな手入れ大変そうだって違うだろうが!何考えてんだ俺は……
兎に角、祭達と合流しよう まずはそれだ
華奢な身体を傷つけないように其なりに注意しながら夜明け間近の森を歩いていった



事の次第を聞かされ暁と祭(落書きは落とした)は今日一番の溜め息をした
穏は暁からもらったRPG の取り扱い説明書を食い入る様に見ているが文字は全て英語である唯一の救いは図解があったから何となく用途は理解しているようだ
只し顔が完全にジャンキーの類いだ、間違いない

「お……おい祭? 穏は大丈夫なのか?」
「まぁ何時もの事じゃ気にするでない、でだ暁 これからどうするつもりじゃ?」
「どうするか?そうだな……まぁ帰りながら考えるさ」
「食えぬ奴じゃ、もう決まっているのだろう?」
「解るか?」
「顔に書いておるわ【死合い】がしたいとな」
「あの……御使い様?私もう大丈夫です」
「おぉ嬢ちゃん起きたか?乗り心地悪ぃが勘弁してくれ」

背中で気絶していた周泰が目を覚ました、どうやら大丈夫そうだ
内心少し安心した、年端もいかない子供を傷物にするのは気分が悪い
傭兵稼業をしていれば綺麗事なんて言ってられない事も散々やってきた
所詮は只の自己満足でしかないのは承知しているがどうもこの中国に来てから調子が狂いっぱなしだ
俺はこんな甘い奴だっただろうか……あの野郎の変な病気が感染したか?
懐かしい好敵手の顔を思いだした、奴との痺れる殺し合いは忘れもしねぇ

「御使い様?聞いてますか?」
「……といけねぇ!何だい嬢ちゃん?キャンディなら売り切れだぜ?」
「キャンディ?何ですかそれは?って違います!私の真名を貰って欲しいんです!」
「また真名か……嬢ちゃんじゃ駄目か?」
「駄目です!私こう見えてちゃんと大人ですよ!」
「まじか?そうは全然見えんが……まぁ実力は認めるけどよ」
「むぅホントに大人なんですっ!」
「わかったよ、そんじゃ改めて自己紹介するか 俺は御使いじゃあねぇ 暁 巌って名前がちゃんとあるんだ、だから俺の事は暁って呼びな」
「暁……様 解りました、私の真名は明命です どうぞ宜しくお願いします」
「明命か……良い名前だな 宜しくたのむぜ」
「暁よ、わしはもう疲れた背負ってくれ……」
「暁さまぁ……この あーる ぴー じーはどうやって作れますかぁ」
「俺の背中の定員は一名だから無理だ、あとな穏 それはどう頑張っても無理だ諦めな」
「えぇい!少しは老骨を労らんかっ!」「では他の天の書物をぉ~」

暁の腰に穏が張り付き首に祭が手を回して身体を密着してきて非常に歩きづらい
クソッタレめっ!色々な所に柔らかい物が当たって理性が……えぇい!ままよ!
AMスーツをフルパワーで起動させて祭と穏を両脇に抱えて猛ダッシュをした……いやせざるを得なかった




 
 

 
後書き
中々書く暇が作れません……でも頑張ります 
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