久遠飛鳥の異世界生活
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問題児が来たそうですよ?
前書き
息抜き作品です。超不定期です。更新するかも怪しいです。それらが了承出来る人だけ見てください。
「・・・おお、これが原作でも二次でも有名な空中召喚か。いやはや、文字では伝わりきらん光景だな。感動だ。まさか私などが、憧れた物語の主役としてこの場に招かれるとは。」
凄まじい速度で落下する少女は、冷静に呟いていた。しかし、言葉とは裏腹に、その顔は右を向いたり左を向いたり、はたまた上を見たりと忙しい。自分のいた世界とは全く違う光景を目の当たりにして、瞳がキラキラと輝いていることからも、その興奮具合が測り知れよう。
この少女、どうやら感情が高ぶれば高ぶる程に、口調が冷静になっていく性格のようである。
『うわあああああああああああああああ!?』
左右を見れば、少女と同じように空中召喚された少年と少女、そして猫が一匹。それを見た少女は、数瞬思考して、ポン、と手を打った。
「うむ、そこの二人!興奮してはしゃぎたくなる気持ちはわかるが、少しは落ち着いてこの景色を楽しんだらどうかね?何度も見られる光景ではないのだよ!」
「そ、そんなに落ち着いているほうが不思議だっての!!!」
「・・・!」
少年の叫びに、もう一人の少女と、猫までもが首を縦に振る。
(何故彼らはこんなに慌てているのだ?わざわざ召喚されたのだから、始める前にデッドエンドなんてある訳が・・・)
そこまで思い出して、彼女は来る直前までやっていたPCゲームを思い出す。
(ああ・・・確かに、スマガでは始める前からデッドエンドだったか・・・)
と、かなり方向性が違う納得の仕方をしていた。というか、彼女は知識としてこの召喚を知っているので、怪我一つしないで降りられることを理解しているのだ。だからこそ、呑気に風景観察などしている余裕があったのである。
バッシャーーーーーーーーン!!!
そこまで考えた所で、何層かの水の膜を通り抜けてスピードを殺した彼女たちは、湖へと着水した。
「う・・・ごほ・・・!いきなり空中への召喚とは、なにしやがる!場合によっちゃ、そのままゲームオーバーだぜこれ!!!」
びしょ濡れになりながら岸辺に上がった少年が叫ぶが・・・
「ふむ・・・始める前にゲームオーバー・・・。斬新だね?だが安心したまえ。その場合、ロリっ子の神様が蘇生してくれると相場が決まっているのだよ。」
「なに、その・・・・・・・・・何?」
一体どこの相場なのかと反論しようとしたもう一人の少女は、言葉の主を見て絶句した。他の二人が、揃って自分を呆然とした目で見ているのに気がついた彼女は、自分の格好を確認し・・・
「?・・・ふむ、何か変な格好でもしているかね?」
「いやいやいや、全部おかしいだろ!何でお前・・・ダイビングスーツなんか着ているんだ?」
そう。先ほどから冷静沈着な彼女、ピッチリとした黒のダイビングスーツを着こなしているのである。本格的に潜る訳ではないので頭には何も付けていないが、普段着を着てびしょ濡れとなった少年と少女には、とても不可思議に思えた。
「ふむ・・・?普段着で湖に入ったら、服が濡れてしまうのは自明。まさか君たち、海やプールでも普段着で飛び込むのかね?」
『だから、何で濡れる事が分かってるんだって聴いてるんだよ!?』
召喚されたばかりで、少年と少女は息がピッタリと合っていた。
「ふむ、なる程そういうことか。それはだね、私の知識が、湖の上に召喚されると言っていたからだね。」
「・・・まさか、未来予知の能力でも持ってるのか?」
「ふむ、そのようなものだね。ただ、使い勝手は悪いが。」
原作知識最高。ただ、間違いなくこの少女の暴走で、今後殆ど役に立たなくなるだろうが。彼女の世界も、彼女のせいで随分と様変わりしているし。
「なる程・・・なら納得だぜ。上空に召喚されて、景色を楽しむ余裕なんかがあったのも、その能力のおかげなのか。」
「まあ、そう考えてもらっても構わないが。・・・所で、そろそろ自己紹介でもしないかね?」
「あ、ああそうだな。・・・俺は逆廻十六夜。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃ったダメ人間なので、用法用量を守った上で適切な態度で接して下さいお嬢様方?」
次第に調子を取り戻してきたらしい十六夜が、ヤハハと笑いながら軽くお辞儀をする。馬鹿にしたような態度で相手の出方を見ようとした彼が、顔を上げて見たものは・・・
「って、何飲んでやがるお前ら!?」
「ん?君も飲むかね?私が作ったオリジナルのミックスジュースだ。味には自信があるのだよ。」
「コクコクッ・・・。とても美味しい。後で作り方を教えて欲しい。」
「構わないとも!良ければ、他の料理なども伝授してあげようではないかね!」
ダイビングスーツのインパクトに隠れて二人は気がつかなかったが、彼女は完全防水の鞄も持参していた。その中から、どう見てもその鞄には入らないだろう大きさのビーチパラソルとチェアを取り出して、もう一人の彼女と共に日光浴を楽しんでいたのだ!なんと彼女、ダイビングスーツの下に、更に真っ赤なビキニを着込んでいたのである。サングラスまで装備し、準備万端であった。
「・・・十六夜。これはとても美味しい。飲んでおくべき。・・・あ、私は春日部耀。よろしく。」
コクコクと、とても美味しそうにドリンクを嚥下していく耀。何故か、いつの間にか耀も蒼が眩しいビキニの水着であった。素晴らしい早着替えの技である。
「私が用意していたのだよ。流石に、耀のサイズは分からなかったからね。様々な水着を用意していたのだが、ピッタリなのがあって幸いだ!美少女の水着姿・・・うむ、素晴らしいね!・・・あぁ、私は久遠飛鳥という。よろしく二人共。」
「お、おうよろしく・・・・・・。美少女の水着姿が素晴らしいのは、全面的に賛成だ。・・・しかし、それ、そんなに美味いのか?」
『最高!』
「じゃあ俺ももらうぜ。」
「勿論君の分も用意したとも!あ、水着も用意してある。そこの木陰で着替えてくるといい。」
「おお!流石だな飛鳥!服がびしょ濡れで気持ち悪かったんだよ!」
こうして、草場に隠れている兎耳を完全に無視して、日光浴を楽しみ始める問題児たちであった。
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