| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

少年少女の戦極時代Ⅱ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

オーバーロード編
キカイダーコラボSP編
  第38話 呉島光実の良心



 ――REBOOTボタンを押してくれ。
 ジローは今、確かにそう言った。

『ジロー……でもそれはっ』

 リブート、再起動、自分が自分でなくなる恐怖。僅かに話しただけでも伝わった。それをジローは自ら望んでいるというのか。光実が弱いばかりに。

「大丈夫だ」
『ジロー……?』
「ぼくは、ぼくにしかならない」

 彼の瞳は眩しいほどに輝いていた。己の言に嘘などないと訴えていた。

『――分かった。信じさせて。人は、自分は自分のままでいられるって』

 龍玄が足を引きずって立ち上がると、ジローは背中を向けた。龍玄はその背にあるREBOOTボタンを回し、押した。
 がくん、とジローの頭が下を向いた。
 ジローの額から放たれた光が円状に広がった。


「スイッチ・オン」


 光が晴れたそこに立っていたのは、右半身が青、左半身が赤に染まった、機械人間。良心を持つロボット――

『それこそが伝説のヒーロー……キカイダーの真の姿かっ』
『キカイダー……』

 キュイン。キカイダーがハカイダーを見据えた。

『ここからは、機械的に行こうか』







 ――キカイダーの圧倒的な強さに、さすがのハカイダー(正確にはハカイダーの人格である戦極凌馬)も分が悪いと悟ってか逃走を選んだ。

 光実は変身を解き、ジローも人間態に戻った。

(あれがユグドラシルぐるみの実験なのか、戦極凌馬個人の暴走なのか、後で確認して、上手いこと言い訳しとかないと。いやむしろ、これは弱みとして使えるか? 多少無理を通す予定だから、今回の件で言うことを聞かせられないか試して――)

 ブツブツと思考を整理する光実の横、ジローは一点を見るようにして動かない。

「ジロー?」

 キュイン。ジローの首がこちらへ向いた。


「きみは誰だ?」


 ――リブート、再起動。PCなどにおけるそれは、データの消失に繋がることがある。
 決断の対価は、彼自身だった。


「――、思い出したんだね」
「ぼくには大事な使命がある。もうすぐ始まる。巨大な敵が動き出す。ぼくは絶対に守り抜かなきゃいけない」

 胸が痛かった。まるで光実の知るジローのように、目の前の彼は答えたから。

「行くところがあるんだ。大切な人がぼくを待ってる」
「羨ましいよ――」

 待ってくれる人がいて――喉まで出かけた言葉を呑み込んだ。待ってくれる人を自ら切り捨てた光実に、それを口にする権利はない。

 去りゆくジローに、光実もまた背を向けた。そしてまっすぐ前を見据え、歩き出した。


(僕にもREBOOTボタン、あったらよかったのに――なんてね) 
 

 
後書き
 我が家の光実が凌馬たちに要求を呑ませることができたのは、実はこの件で弱みを握ったからなのでした。

 自分は自分のまま変わらない――残念ながらジローの決断は、決してそうではないことを光実に突きつけました。だからこその、34話「リセット」での光実の行動です。

 作者はキカイダーという作品を直接観たことはありません。全て齧った知識だけで書きました。
 その知識で一番気になったのが「不完全な良心」というフレーズでした。
 まさに本作の光実じゃないか、と。
 我が家の光実は白と黒の間で心がせめぎ合っているのは今まで書いた通りです。そんな中で放映されたキカイダーコラボSP。これはウチのミッチと絡ませたい! と強く思いました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧