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少年少女の戦極時代Ⅱ

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オリジナル/ユグドラシル内紛編
  第52話 リブート/光実を守れ!


 目が覚めて一番に見たのは、白色灯と、その光を遮るように自分を覗き込む舞だった。

「気がついた、ミッチ?」
「ここは――病院?」

 起きようとすると背中が痛んだ。舞が慌てたように光実を寝かせ直す。

 ぼんやりと記憶を辿り、光実は愕然とした。

 そうだ。自分は紘汰と“森”にいて、自ら仕掛けた策略で自害しようとしたのだ。紘汰や舞を傷つける自分になる前に。

 胸に手を置く。――変わらない。依然として、目の前の舞を、ここにいない紘汰をズタズタにしたい思いと、そんな自分を許せない思いの両方が在る。

(これを断ち切るために、何もかも騙してあそこまで持ってったのに!)

「ずっと寝てるから心配したけど、それだけミッチも疲れてたんだよね。ごめんね、気づいてあげらんなくて」
「そんなっ。舞さんのせいじゃないです」

 俯いた舞の手を握った光実は、はっとしてその手を離し、もう片方の手で掴んだ。

 集会の時に演技とはいえ舞を抱き締めた。舞は不快に思ったはずだ。だから触れてはならない。例え光実の中で舞への恋心が健在だとしても。

 光実は舞に背中を向けるように寝返りを打った。

「怒ってないんですか。集会のこと」
「……怒ったっていうより、訳分かんなくて困った、かな。あたしだけじゃない。みんなそうだよ。何でミッチが、って。でも怒っても困ってもいられなかった。だって、仲間だもん」
「仲間なら、悪いことをしても許すんですか」
「ミッチ……」
「そういう舞さん、どうかと思います」

 懸命に、思ってもいない言葉を吐き出す。

「じゃあ、あたしからも聞くけどさ」

 かすかに怒気を孕んだ声だったから、罵声を浴びる覚悟までしたのに。

「ミッチは本気であたしたちがインベスに襲われてもいいなんて思ったの?」

 息が、停まったのかとさえ、感じた。

(いいわけがない。でもあの時は必死で、そこまで考えてなかった。咲ちゃんたちに止められなかったら、インベスのコントロールなんてする気はなかった)

 今になって自分のしでかしたことが重くのしかかる。ヘルヘイムの植物の苗床となった舞たちを想像すると、寒くもないのに体の末端が震えた。

「咲ちゃんから聞いたの。ミッチがケガしたから、あたしたちみんなで看病してあげてほしいって」
「咲ちゃん、が?」
「あいつら、ケガで動けないミッチを紘汰への人質にする気だって。もう、ほんっと信じらんないよね、ユグドラシルっ!」

 舞は怒っている。言えない。光実がそのユグドラシルの幹部候補生だなどと。

「……って思ってさ。ああ、あたしミッチのこと恨めないや、って気づいちゃった。その……変な意味じゃなくて、さ」

 光実はそろそろと寝返りを打ち、再び舞と顔を合わせられる態勢を取った。舞の顔には、苦笑。

「あたしだけじゃ何もできないから、みんなで考えてみたの。看病以外に、あたしたちにできることはないのか。それで、あたしたちが交替でミッチに付き添って、ミッチを護衛しようってことになったの」
「護衛、ですか? 僕を?」
「うんっ。……っていっても、あたしやチャッキーなんかじゃ、できることなんて横にいるくらいだけど。ヤバくなったら、紘汰とザックがアーマードライダーに変身してでもどうにかする、って言ってくれたんだよ」

 ユグドラシルには銃器を持つ部隊があるし、黒影トルーパー隊もいる。それらから光実を守るとなれば、交代制でも、紘汰とザックだけは12時間体制だ。

「紘汰さん、いるんですか?」
「いるよ~。今も病室の外でぐーすか。次の交替、紘汰だから。ほんっと太平楽な奴っ」

 紘汰がチームに戻らなければ事態はこれほど混迷しなかった。舞も巻き込まなかった。彼が元凶だ――そう囁く自分がいる。
 光実は大きく首を振ってその囁きを振り払った。

(彼らが、そこまでしてくれる。僕なんかのために。これは得難いことなんだ)


「――それでこそ紘汰さんじゃないですか?」
「ミッチは紘汰に甘い~」
「基本僕は紘汰さんの味方だって、舞さんだって知ってるでしょ?」
「もーっ」

 まるで昔――そう遠くない頃なのに、昔という気がした――に戻った心地がした。
 だから、上手く笑えていればいいと、願った。 
 

 
後書き
 一人で頑張った結果、一人で盛大に空回ったお話。

 今まで仲間への態度の対比対象にたびたび光実を出しました。「光実に比べて咲はどうか」
 では構図を逆にして、「咲に比べて光実はどうか」というふうに書いてみたらどうでしょう。
 一人でどうにかしようとする子と、何でも相談せずにはいられない子。
 どっちであっても、それを見てる仲間は心配なのです。

 鎧武がいつから活動しているかは知りませんが、紘汰が抜けてから舞と光実の付き合いはそれなりに長いはずです。舞に憧れる光実は舞のよき相談相手であろうとしたでしょう。
 そんな二人だと想像して、彼らの関係はこんなふうに落ち着きました。 
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