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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第49話 カーニバル

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

気が付けばもう5月も終わり、この前まで春だったのにもう夏に入り始めてるし………


最近時間の流れが早すぎて戸惑っています……… 

 
「それじゃあ明日のカーニバルのタイムスケジュールを説明するで」

9月10日、地上本部で開かれるカーニバルまでとうとう明日と迫り、スターズ、ライトニングの両メンバーはブリーフィングルームにへと集められていた。

「………」
「………兄さんの手がかりは結局無かったわね」
「それよか相手も全く動きが無かった………そしてとうとう明日か………」
「そうね、必ず動きがあるでしょうね………」

「そこ!聞いているんか!!」

こそこそと話をしていたバルトと加奈にはやてが怒鳴りながら聞いてきた。

「2人共堂々と浮気してるなんていい度胸やないか!!」
「バルトさん!?」
「いちいちはやてに乗せられるな!!」

思わず声を上げたなのはにバルトも怒りながら突っ込んだ。

「だけど大事な話の中でこそこそ話している2人も悪いんだよ?」
「ごめんなさい、フェイト」
「確かにそれは悪かった………」

2人共フェイトの方を見て、頭を下げながら謝る。

「何でフェイトちゃんに謝って私には謝らないんや!?」
「それははやてさんの仁徳の無………うごっ!?」

持っていた冊子を投げられ、それがエローシュの顔面に直撃した。

「黙ってればいいのに………」
「まあエローシュが黙っていられるわけないよね………」

と冷静に突っ込むキャロとエリオ。

「理不尽だ………」

エローシュはそう言いながらはやてを睨むが、当の本人は再び説明しようと皆の方を向いていた。

「まあとにかく!!明日はライトニング、スターズとエキシビジョンマッチで無様に負ける様な事が無い様に頼むで!!バルトさん、明日は思いっきり暴れていいから、手加減せんでええで」
「おう、任せとけ!!」
「ちゃんと私の指示に従って暴れて下さいね………」
「ならしっかり考えろよティアナ」
「ええ、今度は満足いく様に考えます」

と自信満々に答えるティアナにバルトも笑みを溢した。

「エローシュ達も頼むで」
「了解っす。まあ任せて下さい」

軽く答えるエローシュだったが、そんなエローシュの姿を見てもライトニングのメンバーは何も言わなかった。

「あんなエローシュでもライトニングの皆から信頼されている」
「そうだね、皆エローシュの指示通りに動くもんね」

そんな様子を見ていたシグナムとフェイトが呟いた。

「それじゃあ明日はしっかり頼むで!!以上解散!!!」

そうはやてが締め、解散となった。
そしてそれぞれ部屋から出ていく中、はやてはシグナムとフェイトの元へと移動した。

「ある意味、ライトニングは完成した部隊やなぁ………前線メンバーが少ないんやけど、司令塔を中心に展開される様々な攻撃はどの局地戦でも対応できる。これで後3年後になったら管理局最強の部隊になってもおかしくないやろな………」
「ええ。ですけどそれにはあのバカがもっと真面目にやってくれればですけど………」

そう言ってエローシュを睨むシグナム。

「言わなくても分かってると思うけどエローシュ」
「大丈夫、俺のポジティブシンキングであの視線は俺に対しての熱い思いだと思えば………」
「だからいつまでも変わらないのよ………」

ルーテシアの厳しい指摘を流し、部屋を出るライトニング。

「正直、隊長副隊長から見て、明日ライトニングは勝てると思うん?」
「………どちらの部隊が相手かにもよりますが、恐らく桐谷の居るベーオウルブズには勝てないでしょう」
「私もシグナムと同意見かな。………と言うより私達以上にエローシュの方が、頭を抱えてるみたいだけど」
「やっぱり対策を考えているんやな」
「ええ。昨日、私の部屋にやって来て真面目な顔で部隊データを見せてほしいとやってきました。部屋の中を小型カメラで撮っていましたがそれはついででしょう」
「撮影されたんだ………」
「あいつには必ず疑って対応しなければいけないからな」

と苦笑いしながら答えるシグナム。

「そう言われると何か不安になって来た………私も気づかれない様に写真とか撮られてるのかも………」
「可能性はありそうだな………エローシュが部屋に来た時には気を付けた方が良い」
「そうする」
「………ってすっかり話脱線してるやん。まあここまで来たらあの子達を信じるしかないか………」

脱線した2人にそう呟きながらはやては対戦相手のデータを見た。

「桐谷君、どうでるんや………?」





















「隊長、いよいよ明日っすね!!」

リーガルが興奮気味に桐谷に話しかけた。
機動六課と同じ様に機動七課のベーオウルブズのメンバーも明日の戦闘に関してブリーフィングを行っていた。

「分かっているな。どちらに当たるか分からないが、ハッキリ言えばスターズのメンバーに勝つのば無謀に近い確率だ。そしてその中で重要なのがいかにバルトさんを抑えている間に加奈を倒し、他のメンバーを減らせるかにかかっている」
「そんなにバルト・ベルバインと佐藤加奈は危険なんですか?」

リーネが不思議そうに問いかける。

「佐藤加奈に関しては全訓練校トップの成績で卒業し、管理局最強の盾と一部では称されるほどの防御、支援中心の魔導師でありながら攻撃もSランク程の威力も出そうと思えば出せる。油断していればバリアアーマーを着ていても負けるだろう」

桐谷が答える前に副隊長のボウカーが淡々と説明した。

「バルト・ベルバインについては弱点らしい弱点は無い。電気変換気質を有効に使い、様々な局面で対応出来る柔軟さ。どう考えても新人離れしている」
「恐らく大悟と良い勝負じゃないかな?」
「エース・オブ・エースとですかぁ………?」
「ああ、そうだな」

フィーナの質問に桐谷が答えるとボウカーを除く3人が青くなった。

「隊長、明日勝てますかね?」
「さっきも説明したが、それはリーガルがバルトさんをどれだけ抑えていられるかにかかっている」
「責任重大だな………」

そう呟きながら深く落ち込むリーガル。

「だが、その2人以外の新人3人も忘れてはならない。魔力ランクも低く、目立った活躍も無いが、その誰もがお前達3人と互角と思っていい」
「リーガルじゃ無いですけど、明日本当に勝てますかね?」

不安そうに呟くリーネ。

「やるしかないさ。装備的にはバリアアーマーの試験部隊でもあるんだ。あまりにも悪い結果だとその場で部隊取り消しって事も………」
「そ、それだけは勘弁!!あた落ちこぼいれって言われ続ける日々には戻りたくないっす!!」

桐谷の言葉に慌ててリーガルが答えた。

「じゃあバルトさんの相手死ぬ気で頑張れよ?」
「はい………」

涙を流しながら頷くリーガル。

(とは言うものの勝つのは絶望的。俺自身リーゼで戦えない上に加奈、バルトさん以外にもスバルやギンガ。そして零治が一番警戒するべきだと言ったティアナ・ランスター………さて、最悪何としても善戦はしないとな………)

そう思いながらブリーフィングルームにあったカーニバルの開催予定表を見た。

(零治………お前はどう動く………?)

そんな中、今は居ない幼馴染の事を思う桐谷だった………





























「孝介、そこ違う!」
「あっ、悪い………」

あの日以来、俺は大学でエリスと共に行動するようになった。
エリスはフランス人の母と日本人の父のハーフで、母親は小学生の頃に死別し、父親と2人で生活してきたらしい。
綺麗ながらショートヘアーに切られた金髪と宝石の様なマリンブルーの瞳。そして日本人とはかけ離れた素晴らしいスタイルと本当にハーフ?と疑問に思える容姿なのだが、英語は全く駄目で、フランス語が少々話せる程度と外国語にはかなり疎く、苦手な俺と良い勝負なのだ。

「私、外国語って苦手なんだけど一度でもいいから亡くなったお母さんが住んでいたフランスに行ってみたくてこの大学を受けたんだけど………やっぱり難しいわね………」

と、教科書を広げながらサンドイッチを頬張る。

「俺は推薦で入れそうな大学でなるべく近い大学がここだったから。………だけど外国語を専攻しているって事もちゃんと調べてれば良かったんだけど………」
「面倒だったのね?」
「ああ、面倒だった!!」
「あはは!!孝介らしい!!」

堂々と言った俺にエリスは笑いながらそう答えた。

「まあそのお蔭でかなり苦労してるんだが………」
「自業自得ね」
「まあな。………でここの文法の意味って………」
「ああ、そこは………」

そう言いながら俺達は勉強を続けていた。

「ねえ孝介」
「何だ?」
「この大学来て後悔してる?」

ふとペンを走らせながらそんな質問をするエリス。
チラチラと俺を見ながら俺の言葉を待っている。

「………まあ先が思いやられるけど、悪くはないかな………」
「そうだよね!!私もこの大学に来て良かった!!」
「海外研修もあるし、本当、この先大変だろうけどな………」
「海外研修は一緒にフランスに行きましょ!!」
「………考えとく」
「何でよ!?」
















「ただいま~」
「兄さん………!!」

家に帰ると加奈が鬼の形相で迎えてくれた。たまったものではない。

「何だよ………」
「今、何時?」
「何時?………って22時だよな?」
「遅い!!」
「遅い………って別に普通だろ」
「大学生になった途端もう遊び歩いてるの!?信じらんない!!」
「いや、何を勝手に決めつけてるんだよ………ってかお前に文句を言われる筋合いはないんじゃないか?」

そんな話をしながらリビングに入り、飲み物を飲むことにした。

「おかえりなさい」
「ただいま、母さん、父さん」

リビングには母親と父親2人がいた。2人とも仲良くバラエティ番組を見ている。

「孝介、大学はどうだ?」
「正直ついていくので精一杯。今日も居残りで自主勉って所かな」
「あなた英語苦手だものね………もっとちゃんと学校選んでおけばよかったわね」
「まあ別に全てが悪いわけじゃないよ」
「ほう、お前にも春がやって来たって事か?」
「お父さん、何言ってるのよ………兄さんに彼女なんて出来る訳ないでしょ」

加奈が呆れた様子で父親に言うが流石にそれは酷過ぎるんじゃないか………?

「分からんぞ?孝介も父さんや母さんに似て、顔は桐谷君ほどじゃないが悪くないんだ。大学生デビューしててもおかしくない」
「ないわね、絶対にない!!」
「加奈流石にそこまで否定するのは孝介が可哀想じゃないのか………?」
「その通り!親父の言う通り、俺にもとうとう春が………」
「強がらなくていいわよ兄さん」

いや、何でそこまで強気で答えるのかね加奈さん………

「加奈は零治が最近帰りが遅くて寂しいのよ、さっきだってチラチラと時計を見て忙しなかったんだから」
「お、お母さん!!」

顔を真っ赤にして母親の口を塞ごうとする加奈。

「そうか………悪かったな加奈。さあ俺の胸へと飛び込んで来い!!」
「調子に乗るな!!」
「うごっ!?」

加奈の回し蹴りの様なローキックが俺の脇腹を直撃した。

「に、兄さんの事なんか全然、これっぽっちも待っていないんだから!!勘違いしないでよね!!」

そう言い残して加奈は自分の部屋に行ってしまった。

「全く、加奈も素直じゃ無いんだし、零治も学習しなさい………」
「ちょっと冗談言っただけなんだけどな………」



























「うわぁ、凄い人!!」
「確かにこれは予想外だったかな………」

カーニバル当日。会場に向かった機動六課のメンバーだったが、会場運営は地上の部隊で行うとのことでデモンストレーションの模擬戦まで暇を持て余していた。

「バルトさん、どうしたんです?そんなキョロキョロして?」
「いや、何でもない………」

そう答えたがバルトの顔色は優れない。

(こんなに人が多いと何時仕掛けてくるか分からねえ………本当にヴィヴィオを連れて来て良かったのか大悟………?)

バルトから少し離れた場所で、沢山の人に囲まれながらもその人達1人1人に丁寧に対応している大悟を見てバルトは思った。

(それにクレインも………この会場は地上のバリアアーマー部隊に警備されかなり厳重だ。本当に何か仕掛けてくるのか………?)

結局ジェイル達も何も掴めずクレインも動きがなかった。
何の対策も持てぬまま当日を迎えたのである。

(有栖家の面々は準備出来ているのか………?)

そう考えると次から次へとバルトの不安が募っていく。

「バルトさん、本当に大丈夫ですか………?」
「………ああ、大丈夫だ。必ずお前等2人は守りきってみせるさ」
「えっ?あ、はいありがとうございます………」
「ヴィヴィオは大丈夫だよ〜」
「………迷子になったら置いて行くからな」
「大丈夫、なのはお姉ちゃんの手は絶対に離さないから!!」
「はぁ………まあそれでいい」

自信満々にそう答えるヴィヴィオにバルトはため息を吐きながらヴィヴィオを頭を撫でた。
気持ち良さそうにされるがままのヴィヴィオ。

(絶対に守りきってるさ……どんな奴相手でもな)

そんなヴィヴィオを見ながらバルトはそう思ったのだった………











「いよいよですね教皇」
「やめてくれマクベス。私は管理局元帥ヴェリエ・マーセナルだよ」

そう言って苦笑いしながら答えるヴェリエ。
地上本部のとある部屋。その研究所の一室の様に広々とした部屋の中で活気に溢れる会場を映像で確認しながら2人は話していた。


「マクベス、君には本当に感謝している。私に協力しながら冥王教会の内偵をし、更にクレインが音信不通になった後も一生懸命アンドロイドの開発を続けてくれた。お蔭であの忌々しい組織もとうとう崩壊し、アンドロイドも完成にこぎつけた。………まあ冥王教会の方は最終的に音信不通のクレインが見捨てた結果だがね」
「しかしこれであなたの長年望んでいた冥王教会はこれで終わったんです。良かったですね」
「ありがとう………本当に忌々しかった。人体実験で何人もの人を犠牲にして、それで得たかったのは不死の兵隊での組織再建………本当に下らない………だからこそ、私は家から飛び出し名前を変え、管理局に入隊した」
「そうですね。今やその事実を知る者は俺と5年前に自殺したディラクしか知らない」
「ああ。これで………」

そう言ってヴェリエは静かに槍のデバイスを展開した。

「やはりそう来ますか………」
「マクベス、君が消えれば私の本当の正体を知る者はいなくなる」
「でしょうね。ですけど俺が何の準備をしていないと思っていましたか?」

そう言ってデバイスを展開するマクベス。服装は科学者特有の白衣なのだが、手には自分の身長ほどの長い槍を持っていた。

「君のデバイス………アルベルクか」
「はい、そしてこのデバイスの効果はよくご存じですよね?」

そう言って槍を地面に軽く突くとマクベスを囲んでディスプレイが複数現れた。

「確か次元と次元を繋ぐ事でき、それを利用したハッキングや攻撃に使用出来るが他の魔導師の様に魔法で攻撃する事は出来ない………だがいくら君のデバイスでもこの地上本部を掌握するには時間がかかるのではないのかい?」
「………確かに全部を掌握するのでしたが、恐らくかなり時間が必要ですが、そんな事はしませんよ」

そう言いながらディスプレイを操作するマクベス。
そして15秒ほどで全てのディスプレイを閉じた。

「良いのかいもう?」
「ええ、先に言いましたが前もって準備をしておいたので。………おいでブラックサレナ」

そう言うとマクベスを囲む様に今度は黒い鎧のバリアアーマーが3体現れた。

「これから発表するブラックサレナをハッキングしたのか」
「ええ、あなたから逃亡するのならこの3体で十分。完成したブラックサレナ相手ではあなたも勝てないでしょう」

完成されたブラックサレナ。
零治同様オリジナルにほぼ酷似した装甲の厚さによって、以前に現れていたブラックサレナや高機動型と比べても格段と防御が厚くなった。その分の重量を解決したのがヴェリエがこだわっていたアンドロイドだ。
人では不可能だった重量を支えられる体、なおかつロボットの様に機械の動きを無くし、人間らしい動きに変えた事で更に優秀な機体となった。


「この装甲の厚さにバリアフィールド。………流石に佐藤加奈のデバイスの様な完全なるフィールド展開の実装は間に合わなかったが、この装甲とフィールドを破れる者は神崎大悟位だと思えるほどの強固なバリアアーマーになった。とても貴方には叶わない相手だ」
「それは君にとっても同じだ。私も同じ様にブラックサレナを呼べば良い事だ………ふっ、なるほどそこも計算済みか」
「ここの部屋の通信は全てシャットアウトさせてもらいました。更に部屋から出れない様にもね」
「それでは君も逃げられないじゃないか」
「俺にとってももはや俺を知っているのはあの時会ったライトニングのメンバー達にバルトマンと真白リク、それにどこにいるかは分かりませんがシャイデ・ミナート位でしょう。ここで管理局トップのあなたを消して雲隠れすれば俺はの安全です」
「考える事は一緒と言う事か………」
「そう言う事です」

そう言って勝ち誇った顔でヴェリエを見るマクベス。

「舐められたものだな。………確かに今の私の地位は今は無き、老人達のお蔭でもあるが、それは半分ほどだ。信頼は自らの手で勝ち取った物だよ」

そう言って不敵な顔で槍を向けた。

「見せてあげよう、私の腕を!!」



























「あれフェリア?」
「き、桐谷!?何故ここに!?」

カーニバルの屋台エリアを取り敢えずぶらぶらしていた桐谷はふと見覚えのある銀髪が見え足を止めると、そこにはエプロン姿のフェリアがたこ焼きを慣れた手つきで焼いていた。

「何故ってこの後あるデモンストレーションで模擬戦するからだろ?それまでは暇だからブラブラしていたんだが………で、何で本局勤めしている筈のフェリアがたこ焼き焼いてるんだ?」
「こ、これも仕事だ!!私の部署は今人気の地球食の屋台を出したいって話になって、それで祭りにある地球の食べ物を紹介して………」
「なるほど、だから実際に屋台で作ってるのか………」

そう言ってまじまじとエプロンと頭にナプキンを巻いたフェリアを見る桐谷。

「そんなに見ないでくれ………恥ずかしい………」
「良いじゃないか、似合ってるぞ」

そう言うと顔を真っ赤にして俯き、ぶつぶつと何かを呟きながらたこ焼きを焼いていくフェリア。

「どうだ売れ行きは?」
「あ、ああ………取り敢えず好評で中々の売り上げだ」

そう嬉しそうに答えるフェリア。
そんなフェリアの様子を見て、桐谷も笑みがこぼれた。

「楽しそうだな。………ってあれ?そう言えばドゥーエさんは?」
「ドゥーエは少し………な」
「なるほど」

真面目な顔で答えるフェリアの様子に桐谷も状況を察する事が出来た。

(………確かに今日みたいな祭りは全部管理局主体で行っている。そうなると自然と本局や地上本部内もいつもより人が少ない筈だ。少し突っ込んで何か調べているのか)

「折角だ、桐谷もどうだ?結構自信あるのだが………」
「ああ、もらうよ」

焼きたてのたこ焼きを貰い、料金を支払う桐谷。

「そうだ、部隊の皆にも買っていってやろうと思うから5つくらいくれ」
「ああ、分かった。ちょっと待っててくれ」

そう言って準備を始めるフェリア。

(人が少ないか………やはり大悟が言っていた様にクレインは何か仕掛けてくるかもしれないな………)

そう思いながら桐谷は取り敢えず先に受け取ったたこ焼きを頬張った………
























「ったく、みんなどこ行ったんだろうな………」
「う、うん………そうだね………」

カーニバルが盛り上がる中、中心の特設ステージの前にあるベンチに飲み物を持ったエローシュと真白がいた。

「気が付いたら何処にもいないからな………」
「そうだね………」


(真白、2人っきりにさせてあげるからちゃんとアピールしなさいよ!!)

昨日の夜ルーテシアに言われた事だった。

(やっぱり2人っきりだと緊張しちゃうよ……)

そんな事を思いながらキョロキョロとエローシュの顔を見る真白。

「ん?どうかした?」
「う、ううん!!何でもない!!」

慌ててそう言い飲み物に口を付ける真白。

「そうか?それなら良いけど」

そう言ってベンチに深く寄りかかり、空を見上げた。
暫く特に会話も無く、並んで座る2人。チラチラとエローシュを見つめる真白の様子が気になってしまい、座っていたエローシュはすくっと立ち上がった。

「………折角だし時間も限られてるんだ、2人でブラブラしてるか?」
「う、うん!!そうだね!!ブラブラしてたらルーちゃん達3人にも会えるかもしれないし!!」
「ああ。そうと決まったら早速………!?」
「信也君?」

歩き出そうとして再び座るエローシュ。

「エクス………」
『ああ、多分間違っていない。あの魔力反応はあの時のデータと同じだ』
「信也君、どうしたの?」
「あそこに歩いている2人組の男いるだろ?」
「えっ?うん………」

そう言ってエローシュの視線の先にはサングラスをかけた身体つきの良い身長の高い男と逆にひょろっとした眼鏡をかけた男が一緒に歩いていた。

「あの2人がどうしたの?」
「………」

真白の問いにエローシュは何も答えられなかった。

(………俺と真白ちゃんしかいない状況であの2人を追っていいのだろうか………?だがここで見失えば今みたいなチャンスは訪れないかもしれない)

「信也君………?」

そんな不自然な様子のエローシュを心配して真白が顔を覗き込む。

「………悪い、ちょっとあの2人が気になるんだ。バレない様に追跡するぞ」
「えっ、でも追跡って言っても私自信無いよ?」
「大丈夫、そこはエクスに任せるから。………エクス?」
『この距離を保てば追跡は可能だ』
「大体10m程の距離だな………」

(この距離じゃあの2人にもバレそうだな………だけどやるしかない………)

「行くぞ、真白ちゃん、俺にゆっくりついてきて………」
「うん、分かった………」

小声で指示を出した後、エローシュは移動する2人を静かに追うのだった………















「あれ?どんどん離れていくね」
「ああ………」

エクスの索敵範囲から離れない様に距離に注意しつつ尾行に気がつかれない様について行く2人。
尾行している2人は周りに怪しまれ無い様に自然にカーニバルから離れていった。

「こんな脇道に入る道があるんだね………」
「ああ、確かに地上本部って本部周辺にはかなりの倉庫があったりして地図を見ながらでも迷うよな………」

エローシュが呟くように2人は現在地上本部の倉庫が並ぶエリアに居た。ここはカーニバルでは使用される事は無いため、人が全く居ない状態でもあった。

「だけど信也君尾行上手いね………もしかして綺麗なお姉さん見つけたらひたすら………」
「違うよ!?最低限の尾行の知識を佐助に聞いていただけだからね!?」

と突っ込むが最低限の音量に抑えてである。

『………エローシュ!!』
「遅いよ………やっぱり気づかれてたなこりゃ」
「えっ?」

エローシュの言葉を理解出来なかった真白。しかし直ぐに状況が理解出来た。
何も考えず付いて行った2人だが、今いる場所は地上本部の地図には載っていない道を歩いており、ナビゲートをエクス任せにしていたエローシュは全く気がつかないでいた。エクスも魔力反応を追うのに精一杯であったため、今になった気が付いたのだ。

「………出てこい、いるのは分かってる」

サングラスの男にそう言われエローシュはゆっくり現れた。

「ほう、あの時のガキか………」
「何でこんな祭りの日にあんた達がいるんだ、バルトマン・ゲーハルト、真白リク」
「えっ!?」

エローシュに出てくるなと言われその場に隠れ様子を伺っていた真白。

(お父さん!?でも何処にも………)

「何故気づいたんだ?私達の変装は完璧だったはずだ」
「俺の相棒は1度会った事の奴の魔力反応を記録してる。だからいくら隠そうとしても見つけられるんだよ」
「しかしそれには一定の距離が必要か」
「だからあんな距離から尾行してたのかお前等………」

呆れた顔でバルトマン・ゲーハルトは呟いた。

「………なるほど。しかし優秀なデバイスみたいだね」
「あんたが真白ちゃんのお父さんか?」

エローシュが確認すると眼鏡をかけた男は自分の顔を引っぺがえした。

「あっ………」

その顔は先ほどの顔とはうって変わって真白が前にエローシュに見せた写真の男の顔となった。

「お父さん!!」
「雫!?まさか彼と一緒だったとは………!!」

いきなり出てきた娘に驚いたリク。

「お父さん、ずっと探してたんだよ!!どこ行ってたの!?」

そんなリクに目に涙を溜めながらそう訴える様に叫ぶ真白。

「私は………私自身がやって来た行いを清算するために行動してきた。そしてその事にお前達を巻き込みたくないと思い、雫達の前から消えたんだ。………もっともお前が魔法を知り、スカイシャインを持っていると言う事は、結局巻き込んでしまい、終いには魔法の世界に関わらせてしまった。済まなかった、雫………」
「お父さん………!!」

そう言ってリクに抱き付く真白。

「済まなかったな………」

リクも優しく真白を抱き締めた。

「結果はどうであれ、取り敢えずちゃっかり機動六課に入った目的はわりと簡単に達成出来たな………」
「ほう、そんな理由で魔導師になったのかお前」

1人言を呟いていたつもりが、隣でいつの間にか親子2人を見ていたバルトマンに話しかけられた。

「まあね。………まあそれでもエリオは元々魔導師になりたかったみたいだし、キャロちゃんも強くなりたいって思ってたからOKだけどな」
「エリオって言うのは確かあの前線で戦っていたガキか。まだ青臭い甘っちょろいガキだが、ああいったガキは将来かなりの腕になるだろうな」
「バルトさんも将来を楽しみにしていたな………」
「あいつを俺と一緒にするんじゃねえ」
「あだっ!?」

げんこつを落とされ、しゃがみながら痛みの悶えるエローシュ。

「何も殴ることは………」
「てめえみたいなガキは言っても駄目そうだからな」
「暴力反対………」

とブツブツと訴えるエローシュだが、当然バルトマンが謝ることは無かった。

「リク」
「ん?どうしたバルトマン?」
「お前との協力関係もここまでだ」
「なっ、何を言っているんだ!?」

驚きながらも優しく真白から離れるリク。

「お前の目的はあくまで冥王教会の組織壊滅だったはずだ。クレインを殺すのはお前の目的じゃ無い」
「確かに冥王教会が壊滅した今、私の命を狙う者は少なくなっただろう。だがクレインもベヒモスを狙って家族を襲う可能性だってあり得る」
「それは無い。やつにとってベヒモスは興味の対象じゃ無い。それに奴なら自分自身で作ることだって可能な筈だ」
「いや、だがここまで来て………」

そう言って食い下がるリク。
リクとしてもここまで協力してくれたバルトマンに最後まで協力したいと言う気持ちであるが、バルトマンの考えは変わらなかった。

「来たからこそここまでで良い。これ以上手を染める必要はない。悪人は俺1人で良い………クレインもこの間逃げたマクベスも全員俺が殺す。それで良い」

そんなバルトマンの答えに今度こそ返す言葉を無くしてしまった。

「だからお前は娘と一緒に自分の世界へ帰れ。ウォーレンの様に家族を悲しませる様な事はするな」
「バルトマン………」

そう呟きながら真白の手を離さない様にしっかりと繋ぎ直す。

「全く、君も聞きもしないのに彼の話ばかりだね」
「………んなことは無い」

そう言って互いにクスクスと笑い合い、そして2人とも真面目な顔で見つめあった。

「幸運を祈る」
「ああ、次に会う時は一緒に飲もうぜ」

そう言って互いに握手をした。

「全く、何男同士で熱い友情ごっこしているよ………」

そんな中いきなり男の声で女口調で話しかけられ、皆がそっちに振り向いた。

「えっ、零治さん!?」

そこに現れたのは赤っぽい黒のフード付きのロングコートを着た零治がそこにいた。

「キャロちゃんから今日来るなんて聞いてないけど………」

そう戸惑うエローシュと真白だったが、バルトマンとリクは警戒を緩めなかった。

『なっ………!?あの刀は!!!』
「エクスどうした?」

そんなエローシュの問い掛けを無視してエクスは次元の狭間から現れた。

「聖王器ホムラ………!!」
「あら、私の事知っている子が居たなんてね……あなたもデバイスかしら?」
「真白!!父親を連れて今すぐ逃げろ!!」

エクスが今まで見せたことの無い叫び声で真白に叫んだ。

「えっ!?逃げろ?何で?」
「だって、あれ零治さんじゃないか………えっ?」

エクスに話しかけたエローシュの目の前には零治の持っている刀の先。
しかし突き刺さる寸前でバルトマンが斧で受け止めていた。

「………てめえ何者だ?」
「私?私は佐藤孝介……いえ、有栖零治だったっけ?まあどっちでも良いわ。本当は貴方はついでで、今始末する必要は無かったんだけど………出会っちゃったし、先ずは貴方で肩慣らしさせてもらうわ」
「肩慣らしだと………!!」

そう怒りに満ちたバルトマンの周辺には自身の蓄えていた電気が勝手に漏れ出すほど怒りに満ちていた。

「エクスどう言うことだ………」
「良いから真白達が逃げる時間を稼ぐ!!バルトマンと共闘するぞ!!!」
「わ、分かった。ユニゾンイン!!」

エクスに言われるがまま、ユニゾンするエローシュ。

「テメエ!!誰だが知らねえが覚悟は出来てるんだろうな!!!」
「………ふふふ、それじゃあ始めましょうか」

そう零治が言い、バルトマンと零治は同時に駆け出したのだった……… 
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