FAIRY TAIL 友と恋の奇跡
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第178話 血塗れのドムス・フラウ
前書き
紺碧の海で~す♪
今回は大魔闘演舞3日目のバトルパートの続きです。第5試合とちょっとだけ第6試合です。そして今回、とんでもない事実が明かされる!!
ナレーション風に書いていきます。
それでは、第178話・・・スタート♪
チャ「それでは引き続き第5試合に参りましょうっ!第5試合、妖精の尻尾A、エルフマン・ストラウス!!VS海中の洞穴、ハルト・パーカー!!」
観全「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
エル「やっと俺の出番かっ!漢だぁぁぁぁぁっ!!」
マ「はいはい。うるさいから早く会場行きなよぉ~。」
マヤが追い出すようにエルフマンの背中を押す。
エ「相手は海中の洞穴か。」
ユ「ハルトはなかなか手強いよ。」
ル「ユモ、知ってるの?」
ユ「知り合いなんだ。」
グ「・・・・・」
海中の洞穴のハルトとイレーネがユモと関係があるのを知っているのは妖精の尻尾のメンバーではグレイだけだ。
ユモはハルトとイレーネに対して危険視はしていないが、グレイはまだ2人の事を疑っているのかもしれない。そんな風な目で、グレイは会場にいるハルトに目を向けていた。
会場のど真ん中に「漢漢漢!漢ォォォォォ!!」と叫んでいるエルフマンと、どこからか7属性の武器の1つ、雷の槍を取り出し、すでに身構えているハルトが向かい合った。
ヤ「2人共、もう戦う気満々だねぇ。」
ラ「どんな勝負が見れるんでしょう?期待しています。」
チャ「第5試合、開始ッ!!!」
チャパティ・ローラの実況と共に像の上にいる男が銅鑼をゴォォォォォン!!と力強く叩いた。試合が始まった。
それが合図だったかのように、ハルトが小さく地を蹴り、素早くエルフマンの背後に周り込んだ。
エル「速ェ!うごっ!」
慌ててエルフマンは振り向くが時すでに遅し。ハルトは雷の槍の柄の先でエルフマンの顎を殴る。
ナ「あのハルトって奴、なかなかやるじゃねぇか。」
ショ「あの巨漢のエルフマンを槍で殴り飛ばすくらいだからな。かなり腕の良い魔道士だ。」
殴り飛ばされたエルフマンは体勢を立て直すと、
エル「ビーストアーム、黒牛!」
エルフマンの右腕が無数の四角に分裂し始め、エルフマンの右腕は確実に人間のものでは無くなっていた。
エル「うぉらぁっ!」
その黒い腕でハルトに殴り掛かる。が、ハルトは身軽の為か、エルフマンの腕を跳んでかわし、エルフマンの黒い腕の上に着地すると、
ハル「雷の球!」
槍の先に溜めておいた雷を帯びた金色の球体を至近距離からエルフマンに放つ。ドゴォォォォォン!と凄まじい爆発音が響き、会場が砂煙に覆われる。
チャ「ゲホッ、ゲホッ、す、凄まじい爆発が起こりました!ゲホッ・・す、砂煙で・・会場の様子が全く見えません!ゲホッ、ゲホッ・・エルフマン選手とハルト選手は、ゲホッ、一体どうなったんだぁーーーっ!?」
咳き込みながらも、チャパティ・ローラは実況するのを止めない。砂煙が晴れると、会場には2つの影が―――――。
1つは雷の槍を構えたハルト。少し息遣いは荒いがその場にしっかりと立っている。
もう1つは、全身が赤い毛で覆われ、頭から鋭く尖った黄色い2本の角が生えた獣―――――、
チャ「何とぉっ!エルフマン選手、接収、獣王の魂により獣に姿を変えたぁぁぁっ!!」
観1「すっげぇーっ!」
観2「あれが獣王の魂か。」
観3「カッコイイなぁ~♪」
どうやら雷の球を食らう直前に接収し、ハルトの攻撃から身を守ったみたいだ。
ウェ「危機一髪ですね。」
ト「てっきり、やられちゃったかと思いました。」
ウェンディとトーヤは安堵する。
フ「でも、勝負はこれからが本番だ。」
リョ「エルフマーン!最後まで気を抜くんじゃねぇぞぉぉぉっ!!」
リョウがメガホンのように口元に手を当てて叫ぶ。リョウの声は獣の姿になったエルフマンの耳にしっかりと届いていた。
エル「そんくらい、漢には分かっている事だ。」
リョウの言葉に答えるかのようにエルフマンは小さく微笑みながら呟く。そして顔を上げハルトと顔を合わせる。
エル「俺はお前と戦うのが好きなのかもしれねぇな。漢として。」
ハル「!」
その言葉にハルトは若干驚いたが、口元を緩めて薄く微笑む。
ハル「俺は妖精の尻尾の魔道士と戦うのが好きだ。」
エル「俺の他にも戦った事がある奴がいるのかっ!?」
ハル「あぁ。2人ほど、な。」
そう言ってハルトは妖精の尻尾の待機場所にいるグレイとユモに視線を送る。案の定、グレイとユモはハルトが自分達の方を見ている事に気づいていない。
ハル「勝負は誰であろうと全力でやるモンだ。」
エル「漢として、勝負は正々堂々とやるものだ。」
この2人、言う事が少し似ている気がする。
2人は口々にそう言い合った後、同時に地を小さく蹴ると、エルフマンを腕を振りかざし、ハルトは槍の先端に雷を纏わせる。
エルフマンの黒い拳はハルトの右頬に直撃し、ハルトの槍の雷はエルフマンの左肩に直撃する。お互い食らったダメージも五分五分だ。
ユ「・・・ハルト、楽しそう。」
2人の勝負を眺めていたユモは誰にも聞こえない声で小さく呟いた。
エル「うぉおおぉおおおおっ!」
ハル「おぉらああぁあっ!」
エルフマンが拳を振るい、ハルトが槍で防ぎ、ハルトが槍の先端に雷を纏わせエルフマンに襲い掛かり、エルフマンが両手を交差させて身を守る。
ナ「アイツ等、笑ってるぞ。」
エ「楽しそうだな。」
ナツとエルザが2人の表情を見て呟く。
不思議な事にエルフマンもハルトも、お互いの攻撃を食らい、身を守りながら、2人は顔に笑みを浮かべながら全力で戦っていた。
ヤ「とても生き生きとスた勝負だねぇ。」
ヤジマが腕を組んでうんうんと頷きながら言う。だが、もうあまり時間が残っていない。
ハル「はぁ・・はぁ、そろそろ、終わりに・・はぁ・・・しねェと、な・・はぁ・・はぁ、はぁ・・・俺は、これで・・・はぁ、はぁ・・・さ、最後に、するぜ・・・はぁ・・はぁ、はぁ・・・」
そう言いながらハルトは槍の先端に雷を纏わせていく。
エル「はぁ・・はぁ、はぁ・・・お、漢の、勝負は・・はぁ、はぁ・・・は、派手に、終わらせる・・もん、だぜ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・はぁ・・・・」
エルフマンは足を踏ん張り、腰を低くする。
チャ「両者どうやら最後にするようです!勝利の女神が微笑むのはいったいどっちだっ!?」
チャパティ・ローラが椅子から立ち上がって実況をする。その額には汗が滲んでいた。
ハル「エルフマン、だったけな?もし負けても、文句言うなよ。漢として、負け惜しみを言うのはよくないからな。」
エル「あぁ。お前こそ。」
やはり、この2人、案外似ているのかもしれない。
槍の先端にジジジ、ビリリと雷を帯びた金色の光を纏わせると、ハルトは槍の先端を地面に向けて持つ。
緑色の瞳を大きく見開くと、
ハル「雷の爆発!!」
槍を地面に突き刺した。すると、雷が地面にヒビを入れながらエルフマンの方へ進んでいく。雷がエルフマンの真下に辿り着いたのと同時に、まるで噴火したように雷が地面から勢いよく飛び出しエルフマンを包み込んだ。
エル「ぐぉおぉおああぁああああっ!」
苦しそうにエルフマンは雷の中でもがく。
ハル「っ~~~~~!」
ハルトも歯を噛み締めて必死に槍の柄を掴んで踏ん張る。
まるで槍が地面から抜けてしまうのを抑えているかのように―――-ー。
グ「おいエルフマン!そこから早く出ろっ!」
ル「そのままだとやられちゃうわよっ!」
グレイとルーシィが耳を塞ぎながら叫ぶ。耳を塞いでるのは2人だけではない。ナツもエルザも、ウェンディもマヤも、リョウもユモも、ショールもトーヤも、他のギルドの魔道士達も観客全員も耳を塞いでいた。エルフマンの声がデカすぎるからだ。
マヤが薄っすらと目を開け、会場の様子を窺う。
マ「ね・・ねぇっ!これ・・・エルフマンの悲鳴じゃ・・ない、よっ!」
マヤがエルフマンの声に負けないくらいの大声で言う。近くにいたリョウとトーヤがマヤの声に驚いて目を見開く。マヤの声に反応してショールも薄っすらと目を開けて会場の様子を窺う。
ショ「エ・・エルフ、マン・・・雄叫びを、上げ・・てる・・・」
ショールが耳を塞ぎながら独り言のように呟いた。
エル「ああああああああああああっ!!!」
マヤやショールが言ったとおり、雷に包まれているエルフマンの声は悲鳴ではなく雄叫びになっていた。
チャ「か・・かかかか会場に、獣の雄叫びが響き渡っていますっ!!」
チャパティ・ローラは耳を塞ぎながらもしっかりと実況を続ける。
エル「ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
雄叫びが1回強くなったと思った瞬間、エルフマンの雄叫びが聞こえなくなった。会場にいる人達は皆恐る恐る耳から手を離し、会場に視線を移す。
そこにいたのは、雷から抜け出した獣が拳をハルトに向かって振りかざしているところだった。
ハル「(・・・やっぱり、妖精の尻尾の魔道士と戦うのは、何かが違う・・・そして、どの勝負の中でも、最高に楽しい!)」
槍の柄を掴んだままハルトはそう思った。
エル「うおぉおおらああぁあぁぁあああっ!!!」
ハル「ぐぉああぁあぁあああああっ!」
エルフマンの拳がハルトの鳩尾に直撃し、ハルトは弧を描いて吹っ飛ぶ。そのままドサッと音を立てて地面に落ち、そこから立ち上がる事は無かった。
チャ「試合終了ォォォ!勝者、エルフマン・ストラウス!妖精の尻尾A、10ポイント獲得!!」
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チャ「さぁ!いよいよ今日の最終試合になりました。最終試合、妖精の尻尾B、リョウ・ジェノロ!!VS死者の仮面、レッタ・リガニョフ!!」
観全「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
大歓声が起こる。
ヤ「ラハール君、部隊の者は連れて来とるかね?」
ヤジマが隣に座っているラハールに耳打ちをする。
ラ「え・・はい。会場の入り口の前で、待機させていますが・・・?」
ラハールが問いに答えると、ヤジマは普段閉じている目を薄っすらと開け、
ヤ「死者の仮面の奴等を見張れと命令スてくれ。何かを仕出かスかもスれん。」
ラ「はい。」
目付きを鋭くしたラハールも頷いた。
リョ「んじゃ、行って来るわ。」
リョウが会場に向かう。
マ「頑張ってね、リョウ。」
ト「相手は死者の仮面の人ですから、気をつけて下さいね。」
リョ「分かってるって。心配すんな。」
そう言って再び歩き出そうとするリョウの右手をガシッとルーシィが掴んで再び引き止めた。
リョ「ルーシィ?どうし―――――!」
振り向いてルーシィの顔を見たリョウの言葉が止まった。
ルーシィの茶色い瞳に薄っすらと涙が浮かび、今にも零れ落ちそうだったからだ。
ル「ゴ・・ゴメン。何か・・・嫌な予感がして・・・ううん、何でも無い。私の・・考えすぎだよね。うん、きっとそうよ。」
ルーシィは、まるで自分に言い聞かせるように言うと、リョウから手を離し、涙を拭う。そしていつものように笑顔になると、
ル「頑張ってね♪」
微笑んだ。
だが、その微笑みは若干引き攣っているように見えたのは言うまでも無い。
リョウは誰にも気づかれないように右手の拳を悔しそうに、何かを堪えるように、固く握り締めたが、すぐに力を緩め、
リョウ「おう!」
ルーシィにいつものようにVサインをした。そして背を向けて会場に向かって歩き出した。
ウェ「あれ?グレイさんと、エルザさんがいない。」
フ「ユモとショールもいねぇ。ドコ行ったんだ?」
エル「どっかその辺でイチャついてんだろ。」
会場に向かうリョウの前に、見慣れた4つの影。1つは紺色の髪の毛に上半身裸で、胸で銀色のペンダントが光る影。1つは長い緋色の髪の毛に鎧姿の影。1つは水色の髪の毛に水色のワンピースの影。1つは黒髪に黒いベストの胸ポケットに押された白い紋章が目立つ影。
そこにいたのはグレイ、エルザ、ユモ、ショールの4人だった。
リョ「悪いな、わざわざ。」
すまなそうにリョウは肩を竦める。
グ「顔が引き攣ってんぞ、リョウ。」
ユ「リョウらしくないよ。」
エ「全く、これから戦うというのに・・・情けないな。」
ショ「もっと気を引き締めろよ。」
グレイ、ユモ、エルザ、ショールの順にリョウを指摘する。
リョ「悪ィ悪ィ。」
それを受け流すかのようにリョウは適当に返事をすると先頭に立って歩き始めた。4人は一度顔を見合わせた後、仕方なくリョウの後に続いて歩き出した。
暗がりの道に5人の足音と、エルザの鎧がガシャッ、ガシャッと軋む音と、リョウの3本の聖剣がガチャッ、ガチャッとぶつかり合う音だけがやけに大きく響く。
ショ「・・・なぁ、リョウ。」
最初に口を開いたのはショールだった。
ショールは歩きながら、後ろからリョウに声を掛けるが、リョウは振り向きもせず何も言わない。それでもショールは話を続ける。
ショ「俺達4人は、“あの時言われた事”をする。でも、もし何らかの理由でそれが狂ったら・・・どうするつもりなんだ。」
ショールの問いにリョウの足がやっと止まった。それに続いてエルザ、グレイ、ユモ、ショールという順で足が止まった。
ショ「俺達4人は無事だったとしても、一番危険の立場にいるお前は・・・どうするんだよ。会場だと、誰も助けに行けないぞ。」
ショールの口調が徐々に強くなっているのは誰にでも分かった。ここでようやくリョウが振り向いた。
リョ「その時は、その時だ。」
ショ「はぁ?」
リョウの返答にショールはショールらしくない、何ともマヌケな声を出す。
リョ「俺の性格、お前等は知ってるだろ?」
リョウは顔を再び正面に向けながら問い掛けるように言うと、
ユ「楽観的で、バカそうに見えるけど意外としっかりしてる頼りになる存在。」
今までずっと黙っていたユモが口を開く。本人は気づいてないかもしれないが、リョウにとって結構失礼な事を口走っている。
ユ「そして、一度決めた事、約束した事は最後までやり抜く精神を持っている、でしょ?」
最後は悲しそうな笑みを浮かべて本人に確かめるように首を傾げる。
リョウは黙って頷いた。
リョ「お前等は妖精の尻尾の魔道士であり、俺の大切な仲間だ。俺が危険な目に合っても、まずは自分のやるべき事をやってくれ。」
グ「でもよっ!」
何かを言おうとしたグレイをエルザが手で制止する。
エ「・・・分かった。お前の言うとおりに、私達4人は行動する。だが―――――」
エルザは一旦話を区切ると、別空間から銀色に光る剣を1本取り出し、刃先をリョウの首筋に向けた。
グ&ユ&ショ「!!!」
その様子を見たグレイとユモとショールは息を呑み、背筋をピーンと伸ばす。
エ「さっき自分が言ったとおり、私達はお前の大切な仲間だ。その大切な仲間を傷つけるような事だけは、絶対にするんじゃないぞ。分かったかっ!」
エルザの目付きが鋭くなった。
リョウは一切怯む事無く、しばらく真顔でエルザの事を真っ直ぐ見つめていたが、小さく微笑むと黙って頷いた。
それを見届けたエルザはリョウの首筋からゆっくりと剣を離すと、
エ「行くぞ。」
先頭に立って暗がりの道を歩き始めた。その後を慌ててグレイ、ショール、ユモという順に追う。ユモは一度立ち止まり、リョウを振り返った。振り返ったユモに向かって、リョウは黙って頷いた。それに応えるように、ユモも力強く1回だけ頷くと前の3人を追って走り出した。
リョウは4人の後ろ姿を見届けた後、会場に向かって足を進めた。
会場のど真ん中にリョウとレッタが向かい合う。
チャ「えー、ここで主催者側からお知らせがあります。」
そこまで言うと、チャパティ・ローラはスーツのポケットから2つに折り畳まれた白い紙を取り出し、紙を広げ書かれている文章を読み上げた。
チャ「「妖精の尻尾Bのリョウ選手は聖十大魔道の1人であり、世界に“3人”しかいないと言われる聖剣使いなので、観客の皆様に被害が及ばないように、この試合だけ観客席を覆うように会場に透明の屈折壁を張らせて頂いております」との事です。」
それを聞いたナツが待機場所から身を乗り出してみる。が、
ナ「ぐへっ!」
何も無いところで何かにぶつかったかのようにナツは変な声を出した。
屈折壁は確かに、観客席を覆うように張られていた。ナツのように身を乗り出してまで確認する者はいなかったが、触ったり、叩いてみたりして確かめる者は他のギルドや観客の中にもいた。
ル「本当だ、見えない壁が張られてる。」
ト「すごい仕組みですね。」
ルーシィとトーヤも屈折壁が張られているのを手で触って確認をする。
ル「聖剣って、そんなに危険な物なんだなぁ~。」
会場にいるリョウを見ながら呟く。
チャ「「尚、この屈折壁は30分経過しないと解けない仕組みになっているので、試合中は会場に誰も近づけない」という事になっております。」
ヤ「スごい設備だねぇ。」
ラ「恐れ入りますね。」
ヤジマとラハールも感心する。
チャ「それでは、最終試合、開始ッ!!!」
チャパティ・ローラの実況と共に像の上にいる男が銅鑼をゴォォォォォン!!と力強く叩いた。試合が始まった。
レ「初めましてだな。」
レッタが黄土色の髪を揺らしながら顔の右半分だけ隠れる灰色の仮面越しで言う。
リョ「あぁ、よろしくな。」
リョウが笑う。
リョウの口は笑っているが、リョウの茶色い瞳には揺るがぬ意思が宿っていた。
レ「んじゃ早速―――――」
リョ「待て。」
レッタが背中に手を回し、何かを取ろうとした瞬間、リョウが口を挟んで止めた。
リョ「勝負する前に、お前に聞きたい事が幾つかあるんだが、勝負はそれに答えてからで良いか?」
リョウが表情を変えずに問う。
レ「・・・まぁ、別に良いけどよ、早く済ませろよ。」
リョ「それはお前の答えによって決まる。」
レッタの目付きが変わったのをリョウは見逃さなかった。
そして、リョウは唐突に言った。
リョ「お前・・・聖剣使いだな。」
レ「!」
レッタはこれまでにないくらい大きく目を見開いた。が、すぐに顔を伏せると、
レ「・・・ブッ!ブハハハハハッ!」
と腹を抱えて笑い出した。リョウの表情は一切崩れない。
レ「あぁ。アンタの言うとおりだ。」
笑いすぎたせいか、涙を左手の甲で拭いながらレッタはリョウの問いに答えた。
チャ「な・・なななな何という事だぁぁぁっ!死者の仮面のレッタ選手は、世界に“3人”しかいないと言われる聖剣使いの1人だったあああぁぁあぁあああああっ!!」
これには会場中が驚嘆の声で包まれた。
観4「マ・・マジかよっ!?」
観5「んじゃあこの試合、聖剣使い対決って事かよっ!?」
観6「そ、それってちょっと・・ヤバいんじゃねーのか・・・?」
観7「“ちょっと”じゃなくて“かなり”だろ。」
会場は大騒ぎだ。そんな中、レッタが腰に手を当ててチャパティ・ローラに向かって叫んだ。
レ「“3人”じゃねぇよ。聖剣使いは、“今”は俺とコイツの“2人”だけだ。」
チャ「え?で、でも・・・」
レッタの言葉にチャパティ・ローラは慌てふためく。
リョ「レッタが言ってる事は嘘じゃねぇ。真実だっ!」
リョウが会場中に聞こえる大声で言った。会場が静寂に包まれた。驚きすぎて開いた口が塞がっていない者や目を丸くしている者も大勢いる。
リョ「“今”は俺とレッタだけだが、“以前”は幸福の花のユリって言う女の聖剣使いがいたんだ。だが、ユリは2,3ヶ月前に、殺された。そうだろ?」
リョウは幸福の花の応援席にいるアカネを方に視線を移した。アカネもそれに気づいたのか、リョウに向かって小さく頷いて見せた。
さっきとは違う静寂が会場を包み込んだ。幸福の花の待機場所ではハマナスとツツジは口元に手を当てて驚いていたが、他のメンバーは顔を伏せていた。
ル「・・う、嘘・・・・ユリが・・殺され、た・・・?」
ルーシィは両目に大粒の涙を溜め、口元に手を当てて小刻みに震えていた。
リョ「そして・・・そのユリを殺したのが―――――」
リョウはゆっくりと右手の人差し指だけを立てて目の前にいる殺人犯を指差した。
リョ「死者の仮面の、レッタ・リガニョフだっ!!!」
会場が再び騒ぎ出す。
リョ「いや・・・本当の名はレガフ・リョニッタ。」
リョウの声だけがやけに大きく、淡々と響いた。
観8「お・・おい・・・レガフ・リョニッタって・・・あの高速の弾丸のレガフ・リョニッタかぁっ!!?」
観客の誰かが叫んだ瞬間、会場は冷静さを失った。
リョ「その通りだ。そして、死者の仮面の魔道士全員が、20年以上逃亡を続けている闇ギルド、高速の弾丸の魔道士だぁっ!!!」
リョウの視線が死者の仮面の魔道士達に移動する。
オ「ふっ。よく見抜いたな。」
オーガンスはそう言うと、死者の仮面の魔道士達は顔に着けていた仮面を外した。その瞬間、死者の仮面の魔道士達の体が白い煙に包まれた。
煙が晴れると、そこにいたのは死者の仮面の魔道士、オーガンス、リノ・ハビュット、レッタ・リガニョフ、コネティ・ラドゥ、アーキリーズの5人ではなく、高速の弾丸の魔道士、ガンオース、ハビノ・リュット、レガフ・リョニッタ、ライネド・テコウ、リーキアズーの5人がそこにいた。
観9「うわあぁあっ!」
観10「ファ、ファファ・・高速の弾丸だあぁあぁぁあああああっ!」
死者の仮面の待機場所の近くに座っていた観客達はその場から遠ざかった。
ガ「小僧、いつから気づいていた。」
オーガンスに姿を変えていた高速の弾丸のリーダー、ガンオースが待機場所からリョウに問い掛ける。
リョ「大魔闘演舞の初日から、薄々勘付いてはいたんだ。だが、確かめる時間が無くて、3日目まで月日が経っちまったんだ。」
ガ「なるほどな。」
納得したかのように、ガンオースは不気味な笑みを浮かべた。
そして―――――、
ガ「黙っておればいい事を、ベラベラとこんな大勢の人間がいる前でバラしおって―――――!」
リョ「え?」
リョウの動きがほんの一瞬だけ止まった。
ガ「レガフ、殺れ!」
レ「了解!」
その僅かな時間で、ガンオースが黒いマントをひるがえしながらレガフに指示を出した。
それを待っていたかのように、レガフはものすごい速さで背中に手を回し、聖剣の1つである、ユリを殺して奪った『花錦剣』を鞘から抜くと、刃先をリョウに向けて駆け出した。
ナ「リョウ!避けろおおぉぉおおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ナツが叫んだ時にはすでに手遅れだった。
『花錦剣』を手にしたレガフはすでにリョウの目の前まで来ており、聖剣、『花錦剣』の銀色に光る刃はリョウの腹部を貫いていた。
リョ「・・ゥ・・・ァ、カハッ・・・・」
リョウの口から乾いた声と血が同時に出る。リョウが着ている緑色の着物は、リョウの腹部から流れ出た鮮血であっという間に真っ赤に染まり、地面に鮮血の水溜りが出来上がった。
ル「リョオオォォォオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
ルーシィの悲痛な叫び声が会場に響き渡った―――――。
後書き
第178話終了~♪
な、なななな何とっ!死者の仮面の魔道士達は高速の弾丸の魔道士達だった!しかも、幸福の花のユリを殺したのは高速の弾丸の魔道士の1人、聖剣使いのレガフだった!それを見抜いたリョウだが、レガフに刺されてしまった!果たして、リョウの運命は・・・!?
FT友恋大魔闘演舞の出場ギルド%出場メンバーのキャラ説第2弾の死者の仮面の説明に、高速の弾丸の説明も付け足して起きますので、よければそちらもご覧下さい。
次回は最終試合・・・いや、もうそんな状況じゃありませんね。次回は高速の弾丸が妖精の尻尾に復讐をする!高速の弾丸は妖精の尻尾に何の恨みがあるのか・・・!?
それが分かるのは全て次回で~す♪
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