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リメイク版FF3・短編集

作者:風亜
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黒き稲妻・衝動・鉄球

 ───── 死なせてしまった、彼女を。今度は、あいつを───── ?
しんでない……、しんでない、けど………。

────変な巨像が、アムルの北の大陸にあった。
縦に四つ、横に二つずつ列をなしてる。おれは何故か、そこに惹き付けられるように、飛空艇モードから海に着水してそこから陸に上がり、ちょっとした森を抜けて巨像に近づいた。

……他の三人は、何かヤバイものを感じたらしく、近寄ろうとしなかった。おれだって、頭では近づいちゃいけないって分かってた。

けど、"バツ"でも受けたかったのかな。二つの巨像の間を通ろうとしたら──── 黒い稲妻のようなものが、おれを直撃した。……いや、おれにじゃない、イングズだ。

あいつは、咄嗟におれを庇いに出た。……二人して、俯せになった。あいつは、おれの上に覆い被さるように折り重なって──── 意識がなかった。

すぐにそこから離れて、アムルに出戻った。白魔道師のレフィアが何度も回復魔法を掛けても、全然目を覚まさなくて………次に意識が戻った時には、記憶なくしてた。

ぜんぶ。自分の事も、名前も、おれ達の事も、戦い方だって、サラ姫の事まで。
────おれの、せいじゃん。また、繰り返しちまった。しなせてないけど、今までの記憶、全部奪っちまった。

いつも厳しそうな顔してたのに、どこか放心したような、ぼーっと遠くの方を見つめてる。

……こんなに近くにいる、おれの事にも気付かずに。

「なぁ……、イングズ。……おまえの、事だよっ」

「 ────ん、あぁ…、君は…… ルーネス、だったか」

 おれの事は、大体"お前"って云ってたのに、"君"になってる。変な感じ、だな……。サラ姫に会わせれば、記憶戻るかな。もしかしたら、サラ姫を悲しませるだけかも。謝っても、謝りきれないな─────

アルクゥとレフィアは、イングズの記憶をどうすれば取り戻せるか、アムルの宿屋の別の部屋で話し合ってる。

おれは、こんな風にさせた責任もあって、なるだけ傍にいる事にしている。

「 雨……、だな、外 」

 何を話せばいいのかよく分かんなくて、降りしきる窓の外に目を向ける。
……ベット脇に座っているイングズも、同じ方向に目をやる。

「 カミナリも……、鳴ってる 」

「カミ、ナリ………? くろ、い──── うッ!」

 突然、稲光と共にイングズは両手で頭を抱える。

「ど、どうした? 頭痛むのか……!?」

 おれは慌てて、横から両肩に手を置く。

「 ─────るな……ッ 」

「 え? 」

「 私の中に、入って来るなッ!」

 おれはいきなり、片手で強く突き飛ばされる。

────その間にもイングズは、頭を抱えたままもがき苦しむようにベットの上でのたうつ。

 何だよ、これ………あの黒い稲妻のせい、なのか……!?

とにかく落ち着かせようと、おれはイングズに触れようとするけど、逆に何度も手で払いのけられ苦しめるばかりで、何もしてやれない。

────そんなのは嫌だ、おれのせいなんだ、おれが何とかしてやらなきゃ。

……そう想ったら、腕に力が入った。いつもならイングズの方が力の強さは上だけど、今ならおれが上回れる。

ぎゅっと、抱き締めてやる。これでもかってくらい。苦しみを、忘れさせるくらい ────

「ごめん……、ほんとに、ごめん……! おれのせいで、こんな苦しい思いさせちまって……!
守るから、今度はおれが、守るから! 信じてくれ、そしたらきっと、おれは強くなれるから!!」


───── 雷鳴が轟いた。

どしゃ降りだ。

今、雷が落ちてきたって、おれが絶対守ってみせる。

今度こそ ─────



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ─────姫さまのことだけ見ていればいい。姫さまのことだけを─────


(どこの馬の骨とも知らん奴が、サスーン王と姫のお気に入りとは、な………)

(あれだけシゴいでやったというのにあの小僧……、少しは骨があるようだが、所詮は姫様の方があの小僧を"おもり"しているようなものだろう………)

(ふん、厄介者が …… !)


 ────云いたいやつには、云わせておけばいい。自分は、姫さまだけを ─────


(ふふ……、赤ん坊のあなたを最初に見つけたのはわたしなのよ、イングズ。……だからあなたは初めから、わたしの"もの"なの ──── )

 それでいい。姫さまの"もの"なら、光栄じゃないか。


( ────いらないわ、やっぱり。結局あなた、
要らない子なのよ)


 …………え?


(遊び飽きたの。光の戦士のまま、いいのよ帰って来なくて)


(そおだぜ、おれたちいらないものどおし、なかよくやってこおぜ~!)


 ────だまれ! 自分は、姫さまと ………


(さようなら、わたしの遊び道具)




「 う……ッ、あァッ!! 」


「……っ!? イン、グズ……?!」


 ────なんだ、こいつは。"私"のじゃまを、するものか。こんなやわなクビなど、へしおってやる。


「あ…っ、ぐ……、やめ、てくれ、 イン、グ…!
おれ、だ……、ルーネス、だっ…… 」


 ─────るーねす?  知らんな。


「あの、黒い…、稲妻の、せいなんだ、な……。大、丈夫…、わかってる、から……。ごめん、な、おれのせい、で……っ」


 ────くろい、いなずま? "私"のことか。そういうことに、しておこう。


「おれ、は…、信じて、る……。おまえは、
そんなのに、負けない、って……!」


 ────なにをいっている、このこぞう。なにをしんじる、だと─────?


「イングズは、イングズ、だから……、他の、誰でもない、おまえ、自身なんだ……。ダレが、なんと云おうと…! おまえは、おまえで、いいんだよ……!!」


 ─────なに ────?


 ──────!?


「ぐ…ッ、あァ……?!うぅッ……! 私、の……、中、から……、出てゆけ、"黒き衝動"!!」


 ────グオォオォォ ────!?!



「はぁッ、はぁ、はぁ………」


「げほっ、けほ、けほ……っ」


「大、丈夫……、ではないな、お互い………」


「へ、へへ……、どってこと、ねーよ…!元はといえば、おれが……わっ、イングズ…?!」


「届いていたよ、お前の言葉……。ありがとう、ルーネス」

「な、なんだよ…、今度は抱きしめかよ……。
さっきより、苦しくないけどさ。
────おかえり、イングズ」



 外はもう、穏やかに晴れ渡っていた。





END





"黒き稲妻"によって記憶喪失のイングズ────"黒き衝動"に駆られない場合の話 ↓



「 ………みず 」


「 ────へ?」


「水が、出ている。君の瞳から」


「あ……、水って────。なんだおれ、何泣いてんだろ……っ」


「 ないている ………? 」


「ちがうっ…、泣いてなんかないって……!ただの、水だから………あ」


「 ─────しょっぱいな、君の水」

「な、なに人の水拭って舐めてんだよ」

「 ………止められないのか、その水」

「止められるよ! ん~~……… だめだ、あとからあとから出てきちまう……っ。
男のくせに、なさけねーなおれっ……。涙流したって、失くしたもん還ってくるわけじゃないのに───── 」


「なみだ……? そうか、その水は、なみだ
なのか」


「そんなのどーでもいいんだよ! おれ……、おれはっ、エリアに庇われてしなせちまったのに………あんなこと、二度とおこしちゃいけないって……、なのにっ、同じようなことやらかして………今度は、イングズのことを─────
ごめん、ほんとに……!!」



「─────やさしいんだな、君は」

「なんで、そうなるんだよ……。やさしくなんてない! だったら、こんなことには …… ?!何、すんだよ……急に、抱き付くな…っ」


「─────よしよし、いい子だ 」


「頭まで、撫でんなよ……!どんだけガキ扱いなんだっ」


「大丈夫、こわくなんてない。そばにいるから、ずっと」


「 ────けど、無理だろずっとなんて。おれだって分かってる。イングズには、待っててくれる大切なひとがいる。その人の元に帰んなきゃ。そのために記憶、戻さなきゃなっ」


「大切なのは、今の君だ。そのなみだから、まもりたい」


「もう、泣いてないからおれ……!それに、今イングズを守るのはおれの方だっ。おまえにいつまでもガキ扱いされるのは、イヤだしな。ほら、もう離れろよ?」


「 ────ほんとうだ、みず止まってる。………よかった 」


「な……、なんだ、笑えるんじゃん。よかった、ぜ ────」




「喰らいなさい、イングズ! この黒き鉄球をっ!!」


バッコオォーン──── バタッ


「うあ゙ーっ、イングズー?!! れ、レフィア!? いきなり来てイングズの頭に何くらわしてんだよ?!」


「アルクゥと出した結論よっ、やっぱり記憶を取り戻すには、"重い衝撃"でしょ! 宿屋の主人から借りたの、黒い鉄球!!」


「何でそんなもん、宿屋の主人が……!?」


「何でも、ドロボウ撃退用らしいよ」

「いや、アルクゥ、それにしたって重すぎだろ! 記憶戻すどころか、イングズの頭が壊れちま…っ」



「 ─────効いたぞ、今の……ッ」


「あら、目を覚ますの早いわねイングズ! またしばらく目覚めないと思ったけどっ」


「また次に目を覚ました時が記憶戻ってるって想定だったんだよね。……どう、イングズ?」


「 ………お陰で色々と、想い出せたよ。世話を掛けてすまなかったな、皆」


「 ─────うお゙ぉ~っ、よがっだぜぇ、いんぐずぅ~……!!」


「号泣しながら抱き付くな、馬鹿者」

「だっでざぁ、おれのぜいだじ……、ほんどごめんなぁ゙」


「判ったから、もう泣くな……。ルーネス、お前に涙は似合わない、子供のように無邪気に笑っていろ。────その方が、私にとっては好ましいからな」




END 
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