子供嫌いの俺が子育てをする件について
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留守番
前書き
初作品なので前書きや後書きでなにを書いていいのかがよく分からない…
基本的に俺という人間は子供が嫌いだ。なぜかと言われれば第一にうるさいから。次に人のいうことを聞かないからだ。
そんな俺が何故半日とはいえ三人も子供が居る祐理の家に行くかのかと問われれば祐太がいるからだと答えよう。子供の相手は全て祐太に任せることにしているし祐太も俺の性格をしってるので了承してくれている。
そして俺は現在祐太と一緒に祐理の家に向かっているのだが如何せん暑い。祐太の話では今日はこの夏最高気温らしい。
「まだつかないの?」
「もうすぐだよ兄さん」
祐理の家には一度行ったことがあるが正直場所は全く覚えていない。なので道順は祐太に任せている。
そして祐太がとある家の前で立ち止まった。ここまで来れば俺にも分かる。このテレビドラマにでも出てきそうなしゃれた一軒家。ここが祐理の…正確には祐理とその家族が住んでいる家だ。
祐理の夫の姓は『小鳥遊』だ。大昔からこのあたりにある家で戦前は大地主だったとかなんとか。しかし現在はこの家しか残っていないらしい。
最後に来たのは二年くらい前だったか。俺の事を覚えているだろうか?まぁ、どっちでもいいけど。
祐太がインターホンを押し、少し会話をすると中から一人の女の子が出てきた。
「わぁ!お久しぶりですお二人とも!私の事覚えてます?」
正直覚えてないですなどとはさすがの俺でも言えず祐太も結構焦っている。
「最後に会ったのが…二年前ですかねほら。私、すっごく背が伸びたでしょう?」
だから覚えてないんだって…
「あ、すいません。私ったら嬉しくっていっぱい話しちゃいました!外は暑いですよね!さあさあ、上がってください!」
と、目の前の少女は勝手に一人で納得し俺たちを家の中へと案内してくれた。
「ちょっと待っててくださいね!すぐに呼んできますから」
俺たちをリビングに通してくれた少女はそう言い残してどこかへと言ってしまった。誰を呼んでくるんだろうか?
「なんだこれ、パソコン?」
何もすることが無いので近くにあったおもちゃ箱のような物の中に入っていたパソコンのようなおもちゃを取り出してみる。ちゃんとキーボードもついていて適当に押してみると女の人の声で読み上げてくれた。祐理はなかなか教育熱心なんだな。祐太も興味深げに見ていた。
「おいたんたち、だえ?」
「「うお!?」」
声のした方を振り返ると謎の少女、いや、幼女が立っていた。この子には見覚えがある。確か三女のひな…だったか?
「そえ…ひなの」
俺の手にあるおもちゃを見て口をへの字に曲げ今にも泣きそうな顔になっていた。
「え、ああ、悪かったな、返すよ」
泣かれてはたまらないので返そうとするがそれを手に取る気配はなくそれどころかさらに泣きそうになる…いや、まてまて!
ぷっぷくぷっぷっぷー♪
祐太が気を利かせてプラスチックでできたラッパのような物を吹いている。すると先程まで泣きそうだったひなは祐太に興味をひかれていた。助かった…
とりあえずひなの相手は祐太に任せて俺はとりあえずソファに寝転ぶ。冷静に考えれば今日俺いらなくなかった?
「兄さん、ちょっと顔を洗ってくるよ」
そう言った祐太の顔にはひなの涎がところどころについていた。このちょっとの間に何があった?
そして祐太が洗面所に向かった直後、少女の悲鳴が響いた。
☆★☆★
「えーと、改めまして、一応お前らの叔父にあたる瀬川祐一だ」
「同じく瀬川祐太です」
テーブルをはさんだ斜め向かいに三姉妹が座っている。
「じゃあ、私たちもご挨拶しないとねお姉ちゃん?」
「…ふん」
先程この家に響いたのはこの家の長女、小鳥遊空のものだ。理由としては祐太が誤って空が着替えている場面に出くわしてしまったらしい。なので少々、いやかなりご機嫌斜めだ。
「ごめんなさい。お姉ちゃんちょっと無愛想なところあって」
「美羽!余計なこと言わないのっ」
怒るのも分からないではないがそろそろ機嫌を直してもらいたいものだ。非常に面倒くさい。
「叔父さんたちに最後に会ったのってひなが一歳の時ですよね?ということは二年ぶり?」
「まあ、そうなるな」
正直最後に来たのがいつだったかはうろ覚えなので適当に話を合わせておくことにしよう。
「私たちのこと、ちゃんと覚えてました?」
「ま、まあ、一応は…」
「……」
俺に関しては名前しか記憶に残ってませんでしたとは言えず目線を逸らすことしかできない。祐太も似たようなもののようだ。
「あ、今嘘ついたでしょうー」
なかなか鋭い子供だ。
「いや、でもほら!二人ともすごくキレイになってたから、一瞬わかんなかったんだよ」
こういう時の祐太は正直さすがだと思う。俺にはまねできないことだ。
「やだー、祐太おじさんったら、おだてても何もでませんよ」
長女は調子のいいことを言うなとでもいいたそうな目で祐太を見ていた。
「そういや、祐理と信吾さんはどうした?」
祐太は三女のひなとじゃれだしたので祐理たちの居場所を聞くことにする。
「お父さんと祐理さんならとっくに出かけましたよ?」
「…マジか」
せめて俺たちが来るまで待ってくれてりゃ良かったのに。
「てか、俺ら呼ばれたはいいけど何すりゃいいか分かんねえんだけど?」
「それなら大丈夫です!おじさんたちはこの家にいてくれるだけでいいんです!」
「そんなんでいいのか?」
「はいっ」
なんでもこの辺ではセールスの勧誘や怪しい勧誘などが少なくないらしくそういったものの対応に俺たちが呼ばれたらしい。なので娘たちだけを残していくのが不安になった信吾さんは祐理に頼んで俺たちに来てくれるように頼んだらしい。
「だから叔父さんたちはお客さんだと思ってくつろいでてください」
そういうと美羽は一人台所へと向かった。恐らく昼飯を作るのだろう。
することがないというのもそれはそれでしんどいものだ。まあ、祐太は長女の空の機嫌をいかに直すかを考えているようだが。
「おいたん!おいたん!」
「ん?」
とりあえずソファに寝転んでいた俺の服を引っ張られる感じがしたので横を見るとひなが俺の服を引っ張っていた。
「げーむしよ!」
「ゲーム?それなら祐太とやるといい」
俺はゲームをほとんどしたことがない。最近のなんかはなにがあるのかも分からんレベルだ。そんな俺がゲームをしても相手にならないだろう。たとえ三歳児でも負ける気しかしない。
「げーむ、しないの?」
ひなの顔は泣く一歩手前まで来ていた。だから子供は嫌いなんだ…
「分かった分かった。一回だけな」
「ほんと!?」
そういうやいなやひなはてきぱきとゲームの準備をしている。本当に三歳児か?
ひながゲームの準備を終え、いざやってみるとやはり俺の負けだった。以外にも僅差だったが…
「おいたんよわーい!」
僅差であるにも関わらずひなはいかにも圧勝しましたというふうに喜んでいる。まあいいか。
「そんじゃ、次は祐太にバトンタッチだ」
持っていたコントローラーを祐太に手渡し俺は再びソファに寝転ぶ。観戦でもしてようかと祐太たちのゲームを見ていると。祐太は大人げなく本気でやっていた。(俺も本気だったが)
俺と違い祐太はある程度ゲームの経験がある。そんな祐太が本気でやれば祐太が勝つのは明らかだった。ひなを見ると泣きそうになっている。さっき勝たなくて良かった。
そこでやってくるのが長女の空。ひなの仇をとると意気込み祐太と対戦。まあ、いくら経験があってもふだんからやっているであろう空には勝てるはずもなく祐太は負けた。
「昼ごはんできましたよー」
美羽が持ってきたのは素麺だった。ところどころピンクの面が混じっている。
「ぴんくのやつぜんぶひなの!」
「はいはい、分かったからお行儀よく食べなさい」
空が丁寧にピンク色のレア素麺を取り分けている。なかなかに妹思いだ。
「そういえば祐一叔父さんって書道家なんですよね?」
「ん?ああ、まあな」
「書道家ってどんなお仕事なんですか?」
まあ、書道家なんて珍しい職業だし気になるのだろう。
「字を書いて書展に出したり店なんかの依頼で本のタイトルとか看板とか描いたりとかだな。後は人によっては書道教室をやったりとかか」
「結構いろんな仕事があるんですね。あ!そういえばこれ見ましたよ!」
そう言って美羽が取り出したのは俺が取材を受けたことのある雑誌だった。
「何でそんなもの!?」
「祐理さんが買ってきたんですよ!自慢の兄だって言ってましたよ!」
書道家って自慢になるのだろうか?謎だ。
まあ、そんな雑談をしながら昼食も終え、おのおのの時間を過ごしていたが気が付くと祐太は寝ていた。
「叔父さん、宿題見てくださいよ!」
祐太が寝ている横でテレビを見ていたが不意に美羽が声をかけてきた。
「宿題?宿題ねぇ…」
「そんな面倒だみたいな顔しないで下さいよぉ」
「ああ、分かった分かった、ちょっと見せてみ」
そういうと美羽が教科書を渡してくれる。中身は数学…いや、小学生だから算数か。
「へえ、最近の小学生は結構難しいことやってんな」
「もしかしてわかんないなんてことないですよね?」
「大人をバカにするなよ?」
まあ、小学生の問題を教えられないわけもなく普通に美羽が分からないところを教えていく。といっても一、二問あるかないかだが。
「叔父さん教えるの上手いですね!すごく分かりやすかったです!」
「そりゃなによりだ」
そういうと美羽は部屋へと戻って行ったので俺はテレビへと戻る。
美羽の宿題をみてからどれくらい時間が立ったかは分からないが今度は美羽がひなと空を連れてきた。祐太は未だに寝ている。たたき起こしてやろうか…
「叔父さん、一緒に買い物行きませんか?」
「買い物?面倒くせえ」
「もう、そんなこと言わないで行きましょうよぉ、お父さんや祐理さんはいつもついてきてくれますよ?」
それは遠まわしに信吾さんや祐理の代わりにいるんだからついて来いと言ってるのか?ならそれは今ここで寝てるアホ弟に言え。
「おいたん、ついてこーい!」
まさか三歳児に命令される日がくるとは思わなかった。しかも俺の服にへばりついて離れねえし。
「ああ、もうくっつくなって!」
「これはもう行くしかないですね?」
結局、行くというまでひながはなれなかったので仕方なくついていくハメになった。後で祐太を殴ると心に秘めて。
☆★☆★
「あ、お父さん!それに祐理さんも!」
買い物を済ませ、いざ帰ろうという時にたまたま信吾さんと祐理に会った。二人も帰る最中らしい。
「ぬ!貴様、何者だ!うちの可愛い三人をたぶらかして何がねらいだ!」
「はぁ?」
などと訳の分からないことを言いながら信吾さんが掴み掛ってくる。
「ちょ、いきなりなんだ!?」
「やめんかこのバカ亭主!」
と、祐理の一撃(拳骨)が振り下ろされ信吾さんが頭を押さえる。祐理の拳骨は痛えからな。
「いやあ、すまなかったね祐一君」
「はぁ…」
「全くお父さんはそうやって私たちの近くにいる男の人にはいつもそうなんだから」
一体何人この人の餌食になったんだ?
「それより兄さん、祐太は?」
「家で寝てる」
☆★☆★
家で祐理が軽く祐太に説教をして(寝ていたので)今はゆっくりしている所だ。
「さて、俺の役目も済んだことだし、そろそろ帰るよ」
「俺もそうしようかな」
「何言ってるのよ二人とも、泊まって行けばいいじゃない」
「そうですよ。部屋も準備してあるんですよ?」
「おいたん、かえっちゃやー!」
と、ひなは俺にくっついてくる。そういうのは祐太にやってやれ。
「この後仕事あるんだよ」
「俺も大事な用を思い出して」
「…そう。なら、仕方ないわね」
おそらく今の祐理の顔からして俺たちの嘘はバレてるだろうが折角の家族団欒を邪魔したくはないしな。
「叔父さんたち、また来てくださいね。ほら、お姉ちゃんも」
「わ、私はいいって」
正直面倒なことこの上ないので気が乗らないが「そのうちな」とだけ返しておく。祐太も苦笑している。
そんな俺たちの様子を見て祐理が口を開く。
「ね、祐太、それに兄さんも。私たち、今度ま海外出張で一週間ほどいないから一週間ほど、泊まりに来てほしいの。それをお願いしたくて今日二人を呼んだの」
一週間とか冗談じゃないんだけど…
「それは祐太に任せる」
「ええ!俺!?」
「お前今日寝てただけだろうが!ちょっとは働け!」
「う…それを言われると」
結果的に次は祐太一人で来ることになった。
祐理たちの乗った飛行機が行方不明になったのはそれからちょうど十日後の事だった。
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