ドリトル先生と京都の狐
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第五幕その九
それでもだとです、先生に言うのでした。
「僕の家は一番上にあるからね」
「塔のだね」
「そうだよ、一番上の屋根のところにね」
そこにあるというのです、燕の巣は。
「そう簡単には行けないよ」
「そうだね、少なくとも僕には行けないね」
「あっ、先生は行かない方がいいよ」
五重の塔の一番上の屋根にはというおです。
「絶対にね」
「そうだね、僕が行ってもね」
「落ちるよ」
燕は先生のその丸々とした大きな身体を見ました、その身体を見ただけで先生が運動神経が鈍いことがわかります。
実際にです、燕はこのことについてかなり率直に尋ねました。
「先生運動神経悪いよね」
「運動は全部苦手だよ」
「そうだね、じゃあ先生は登らない方がいいよ」
塔の上にはというのです。
「他の誰かが来た方がね」
「あっ、それじゃあね」
「僕達が」
ここで名乗り出たのはポリネシアとトートーでした。
「今から燕さんの巣まで行ってね」
「そうして」
「君達が取って来るんだね、それだったらね」
燕は二羽の言葉を受けました、それででした。
ポリネシアとトートーは燕に案内されて塔の一番上まで飛んで行きました、そしてです。
そのうえで先生達のところにすぐに戻ってきました、ポリネシアの右足に七色に輝く卵があります。その卵こそがです。
「これがじゃよ」
「霊薬の素ですね」
「そうなのじゃよ」
こう先生に答える長老でした。
「これでまた一つ、あと一つじゃ」
「最後ですか、いよいよ」
「そうじゃ」
その通りだというのです。
「ではすぐに行こうぞ」
「頑張ってね、先生」
燕も先生にエールを送ってきます。
「応援させてもらうわ」
「悪いね、卵を譲ってもらって」
「いいよ、だって子供が生まれる卵じゃないから」
だからいいというのです、燕にしましても。
「それに何時でも一個あるしね」
「それでなんだね」
「これで誰かが助かるならそれに越したことはないよ」
燕もそれでいいというのです、ずけずけ言いますがその心根はいい人なのです。
「だからね」
「譲ってくれるんだね」
「お礼はいいから」
それもいいというのです。
「役に立ててね」
「うん、それじゃあね」
先生も燕の言葉に笑顔で応えます、そうしてでした。
先生達はまた別の場所に移動しました、今度の場所はといいますと。
植物園です、京都の植物園です。そこに入ると老馬が目を細めさせて言いました。
「いやあ、いいよね」
「そうだね」
「同意だよ」
オシツオサレツもその前後の頭のそれぞれの目を細めさせています。その前後の頭でお馬さんに同時に答えます。
「ここはね」
「何か食べたくなるよ」
「あっ、御飯は後で出すから」
王子は二匹にこう言って注意しました。
「ここの草木は食べたら駄目だよ」
「うん、それはわかってるよ」
「ちょっと強い誘惑を感じるけれどね」
「我慢しているから」
二匹もこう答えるのでした。
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