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ドリトル先生と京都の狐

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第五幕その八

「今度もまた凄い場所だね」
「何ていうかね」
「木造でこれだけ高いなんて」
「これまた歴史ある建物だね」
「綺麗だしね」
「これもとても古そうだね」
「確かこの塔が」
 どういった場所かとです、先生が皆にお話します。
「五重の塔、ということは」
「うん、東寺だね」
 王子が先生に応えます。
「そうだね」
「東寺についてはね」
「先生知ってたんだね」
「うん、本に乗っていたからね」
 だから読んで知っていたというのです。
「このお寺のことはね」
「そうだね、今度はここに来るとはね」
「そのことは思わなかったよ」
「実は今日回るつもりだったんだ」
 王子はここでこう言いました。
「ここも京都の観光名所だからね」
「だからだね」
「うん、今来ることが出来てよかったよ」
「さて、それでだけれど」
「ここでもだよね」
 ポリネシアとトートーが言ってきました。
「お薬の素があるんだね」
「それが」
「うん、長老さんが案内してくれた場所だからね」
 間違いなくそうだとです、先生は二羽の鳥に答えました。
「あるよ」
「さて、その場所はのう」
 長老も実際に皆にお話します。
「塔の一番上じゃ」
「この五重の塔のですね」
「そうじゃ、一番上じゃ」
 そこにだというのです。
「あるのじゃよ」
「それは一体どんなものですか?」 
 先生は今度の素が塔の一番上にあると聞いてです、長老にそれが一体どういったものかを尋ねました。
「塔の一番上にあるものとは」
「うむ、巣の中にあってな」
「鳥の巣ですか」
「その鳥は霊力のある燕でな」
 長老はその巣の主のこともお話します。
「東寺にいるな、特別の燕なのじゃ」
「それでその燕の巣の中に」
「鶏のものと同じ卵が一つある」
 そうだというのです。
「子供の生まれない卵がのう」
「ああ、無精卵ですね」
「その卵がいつも一つだけあってな」
「その卵を手に入れればいいんですね」
「おお、丁度来たぞ」
 先生とお話しながらです、狐はです。 
 上を見上げました、するとです。
 一羽の燕が来ました、その燕は長老のところに来て上を飛びながら先生に尋ねてきました。
「狐の棟梁じゃない、どうしたの?」
「うむ、実はこの先生達じゃが」
「ああ、この白人の人だね」
 燕はここで先生を見ました、そのうえで言います。
「いい人みたいだね」
「実はわしの一族の者が一人結核にかかってのう」
「ああ、それでなんだ」
「この人はお医者さんなのじゃよ」
 長老は燕にこうお話します。
「結核の薬を作ってくれるな」
「ふうん、じゃあ先生」
 ここで、です。燕はです。先生にこう言いました。
「卵を欲しいんだね」
「うん、お願い出来るかな」
「いいよ、ただね」
 燕は先生に卵をあげることはいいとしました、ですが。 
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