ドリトル先生と京都の狐
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第五幕その二
今すぐに急いで行こうとです、王子は提案しました。ですが長老は穏やかな笑顔でこう皆に言うのでした。
「いや、すぐに行けるぞ」
「ああ、縮地法を使って」
「そうじゃ、すぐに行くのじゃ」
そうしてだというのです。
「ではよいな」
「それを使ってすぐだね」
「うむ、急いで行くぞ」
こうしてです、長老はその場で縮地法を使ってでした。そのうえで。
まずは鞍馬山に来ました、すると皆は周りが高い木々に囲まれた場所に出てきました。下は草があまり見られない地面です。
その場所に出るとです、王子は周りを見回しながら先生に言いました。
「ここで牛若丸が修行していんだ」
「源義経がだね」
「うん、天狗達を相手にね」
「それで強くなったんだね」
「そうなんだ、それで天狗の様な剣の腕と身のこなしを身に着けたんだ」
そうなったというのです。
「後で多くの戦に勝っていったんだよ」
「こうした山は日本ならではだし」
「イギリスにはないからね」
「森はあるよ、それも動く森がね」
バーナムの森のことです、先生はシェークスピアの作品のことをジョークに入れてそのうえで言ったのです。
「けれど日本は森と山が一緒になってるからね」
「山は全部木が一杯生えているからね」
「そう、それで源義経はこの山で修行してだね」
「人間離れした身のこなしも身につけたんだ」
そうなったというのです。
「八艘跳びを使ったり、崖を馬で駆け下りたりね」
「イギリスではそういうのがないからね」
「日本ならではだね」
「うん、それでこの山には」
王子はまた山の中を見回しました、王子達の周りには先生とトミーだけでなく動物達も皆います、皆もそれぞれ山の中を見回しています。
ですがよく見るとです、皆の中には。
「あれっ、長老さんがいないよ」
「あっ、そうだね」
先生も王子の言葉を受けて気付きました、確かにです。
長老だけいません、皆もこのことに気付いて言うのでした。
「あれ、本当に」
「長老さん何処かな」
「何でいないのかな」
「どうしてかな」
「まさかと思うけれど長老さんだけこの山に来なかったとか?」
トミーはまずこう考えました、ですが。
すぐにです、自分のその考えを訂正して言うのでした。
「いや、それはないね」
「そうだよ、だって僕達嵐山から一瞬で鞍馬山に来たんだよ」
だからだとです、王子がそのトミーに応えます。
「長老さんの縮地法でね」
「そうだね、それじゃあね」
「うん、長老さんは絶対にここにいるよ」
皆と一緒にだというのです。
「けれどこの山の何処にいるかは」
「わからないんだね」
「ここは下手に動かない方がいいよ」
先生は王子とトミーだけでなく動物の皆にも言いました。
「さもないと道に迷ってね」
「うん、そうしたらね」
「大変なことになるからね」
「今はだよね」
「ここで皆一緒にいた方がいいね」
「動かないで」
「そうしよう。長老さんは絶対にこの山におられるし」
そしてだというのです。
「僕達の前に来てくれるよ」
「よし、それじゃあね」
「今はね」
皆も応えてでした、そうしてです。
皆は今はその場に留まることにしました、動かずに。
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