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ドリトル先生と京都の狐

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第五幕その一

           第五幕  慌ただしい一日
 起きるとです、皆まずはです。
 お風呂に入って朝御飯を食べます、王子は皆に言いました。
「もうすぐにね」
「すぐに?」
「すぐにっていうと?」
「荷物は車に積んで」
 キャンピングカーにというのです。
「それで旅館を出よう」
「ああ、今日で神戸に帰るからだね」
「うん、そうだよ」
 先生にもその通りだと答える王子でした。
「だからね」
「そうだね、それじゃあね」
「今日はお母さん狐の霊薬の素を集めてお薬を作って」
 そうしてというのです。
「お母さん狐にお薬を飲んでもらったら」
「お家に帰らないとね」
「明日からまた学校だから」
 日常がはじまるのです、だからです。
「今日のうちに全部終わらせて家に戻らないといけないからね」
「急がないといけないね」
「今日はかなり忙しくなるよ」
「そうだね、それじゃあね」
「今のうちにね」
 荷物を全部積んでだというのです。
「チェックアウトしよう」
「よし、それじゃあね」
 先生も王子の言葉に応えてでした、そのうえで。
 皆御飯を食べてすぐに荷物を全部車の中に詰め込みました、そしておかみさんにお別れの挨拶をするのでした。
「ではまた」
「はい、いらして下さい」
 おかみさんは明るい笑顔で先生達に挨拶を返しました。
「お待ちしていますので」
「本当にまた京都に来た時は」
 その時はです、先生も応えます。
「泊まらせてもらいます」
「それでは」
 こう一時の別れの挨拶をしてでした、そのうえで。
 皆は車に乗り込みに向かいます、するとです。
 車の前にもう長老がたっていました、長老は好々爺のお顔で先生達に言ってきました。
「では今からのう」
「はい、京都の各地を回ってですね」
「霊薬の素を集める」
 そうするというのです。
「ただしじゃ」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「鞍馬山だけでないのじゃよ、回るのは」
 長老はこう皆に言うのでした。
「他にも回るのじゃよ」
「金閣寺ですね」
「うむ、そこも回るしな」
 それにというのです、先生に答えます。
「大江山にも行く」
「ああ、酒呑童子の」
 王子は大江山と聞いてすぐにこの名前を出しました。
「あの京都を騒がしたっていう」
「そうじゃ、もうあの山にも鬼はおらぬ」
「というか本当にいたんだ」
「そうだったのじゃよ、あの山には鬼がおった」
 鞍馬山には天狗がいてです、大江山には鬼がいたというのです。
「しかし今は鬼も大人しくなってのう」
「大江山から出たんだ」
「都で静かに暮らしていたりしておる」
「へえ、人間の中に住んでいるんだ」
「いい鬼はのう」
 そうしているというのです。
「悪い鬼はあらかた人間に退治されたわ」
「酒呑童子みたいにだね」
「そうじゃ、そうして鎌倉の頃にはいなくなったわ」
 平安時代にはまだいたのです、ですが鎌倉時代になりますと。
「もうおらん」
「悪い妖怪もいなくなったんだ」
「そうじゃ、とにかくじゃ」
「最初はどっちに行くのかな」
「鞍馬山じゃ」
 天狗の方だというのです。
「そこに行こうぞ」
「じゃあ急がないとね」
 京都から鞍馬山までは距離があります、だからです。 
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