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IS学園潜入任務~リア充観察記録~

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IS学園に潜む者

 
前書き
大半の人は多分初めまして、そして一部の方々お久しぶりです。二次ファンの閉鎖後、ハーメルンで細々と連載を続けていた『金貨の騎士』改め『四季の騎士』、またの名を『四季の歓喜』と申します。この度、特に理由は無いのですが、マルチ投稿に挑戦してみることにしました。

ハーメルンで連載中の本編共々、皆様の暇潰しに一役買えたら幸いです。


 

 




―――IS学園への潜入任務


 それを最初に言われた時、俺は複雑な気持ちになった。俺は産まれてこの方学校というものに通ったことが無く、それどころかずっと裏社会で生活してきた身だ…。
 そんな俺に世界に名だたる重要施設とはいえ、今更になって普通(?)の女子高ともいえるあの場所へ行けとはどういうことなのだろうか…?


「……まぁ、いいや。結局は任務。何はともあれ行ってきますかねぇ…」


 そうとも、所詮は任務だ。俺は上司の命令を聞き、ただそれに従って行動するのみ。例えその内容が『IS学園に潜入して織斑一夏の情報を手に入れてこい』だったとしてもだ…。


「そんじゃ精々楽しませてもらいましょうか、学生デビューを…!!」


 だが、この時俺は失念していた。


―――『織斑一夏』と違ってISを起動できるわけじゃない俺がこの任務を任された理由を…


―――上司が『IS学園に潜入して~』とは言ったが『学生として』とは言ってなかったことを…







◆◇◆◇◆◇◆◇






『あら?機嫌は悪いようね…?』

「……当たり前でしょう。ていうか何度も言わせないでくださいよ、姉御…」


 ISを起動できないくせに『潜入任務=IS学園入学』とか考えていた先日の俺をブン殴ってやりたくなった。今俺が居るのはIS学園の施設内に無理やり作った隠し部屋である。消火栓の奥をくり抜き、大穴を開けて普通の部屋一つ分のスペースを確保した、まさに秘密の部屋と言ったところか…。
 そう、俺はガチの不法侵入と不法滞在による潜入任務を行っている。学生どころか職員としてでも無い、ただの不法侵入者だ。学校の関係者に見つかったら一発でアウトの…。


「ぶっちゃけデュノア社の男装娘よりハードだと思うんですけど…?」

『そう言う割には、任務開始から既に三ヶ月も経ってるわよ?』


 その言葉の通り、気が付いた頃には世間は夏休みの一歩手前。この三ヶ月間、監視対象である織斑一夏を中心に様々なことが起きた…。


―――あの朴念仁野郎が篠ノ之束の妹と同室になったり…

―――イギリスの代表候補生と決闘して善戦してたり…

―――中国の代表候補生と共闘して篠ノ之束が送りつけてきた無人機と戦ってたり…

―――デュノア社と黒兎隊から転入生が来たり…

―――デュノア社の御曹司はホモかと思ったら女の子だったり…

―――黒兎隊のISに搭載されていたVTシステムが暴走したり…



―――そして何より、あの病的鈍感男子に関わった女子全員が奴に惚れとる…




「……あの無自覚ハーレム野郎がぁ…」

『…大丈夫かしら?』

「大丈夫なわけ無いでしょうが!!こちとらコソコソしながらビクビクする毎日を送ってるってのに、何が悲しくてリア充の観察日記みたいな真似しなきゃいけねぇんですか!!」

『仕方ないわよ、任務だもの…(笑)』


 笑ってやがる、むしろ嘲ってやがる!!上司の同僚じゃなければこの女ああぁぁぁ!!……上司の同僚ってことは上司じゃん…。


『ふぅ…息抜きもここまでにしようかしらね。『6(セイス)』、貴方にとって下らない内容かもしれないけど、引き続きこの任務頑張ってちょうだいね?』

「…了解。『フォレスト』の旦那によろしく頼みますぜ」


 極力恨み言的な内容で頼んます。出来ることなら俺の代わりに藁人形でゴッスンしといて…。


『あ、最後に少しいいかしら…?』

「はい…?」

『もしかして、“彼女”はそこに居たりする…?』

「彼女?……また抜け出したんですか?」

『腹が立つことに私でなく、フォレストから外出許可を貰った上でよ…』


 まぁ、直属の上司であるアンタにお願いしたとこで、許可を寄越すわけ無いのは目に見えてるけどな。そもそも無理に逆らったら冗談抜きで殺されるし…。


『彼はいったい何を考えてるのかしら…』

「さぁ?フォレストの旦那が考えてることはサッパリ…」


 姉御の部下に外出許可をあげたり、俺にこんな任務を寄越す時点で訳分からん…。












『あら“オータム”が呼んでるわ……そろそろ時間のようね…。それじゃ、またねセイス。』


「はい、“スコール”の姉御。では失礼します、通信終わり…。」








 そう言って俺は通信機のスイッチを切った。それと同時に後ろを振り向き…。


「許可を貰って来たんじゃなかったのか…?」

「“スコールの許可”とは言ってないだろう?」


 うちの組織の隠れエースが、俺の仕入れてきたスナック菓子を頬張りながら漫画読んでた…。


「…お前のコードネームって、実は『マダオ』の略?」

「殺されたいのか貴様」

「こんな狭い場所でスターブレイカー(IS装備)向けんな…!!」


 余談だが、こいつが影で姉さんと呼んでいる『織斑千冬』は生活面においてマダオであるということが分かってしまった。織斑千冬の部屋を初めて偵察した時、俺は本気で部屋を間違えたのかと思った。そして同時に、本人に見たことがばれたら間違いなく消される気がした……存在ごと記憶を…。
 命の危機を感じた俺はその場から全力で逃走。その際、癒し系オーラを纏った着ぐるみ少女とエンカウントし、ノリと勢いで和気藹々としたのは良い思い出…。
 その子と別れたすぐ後に更識家の当主と全力で鬼ごっこする羽目になったのはトラウマである…。


「ていうか、その武装を持っているってことは…」

「あぁ、イギリスから帰ってきたばかりだ」


 成程、任務達成の暁に貰った特別休暇なのね。でも何故に俺の隠れ家に来るのかね…?


「ここは他の場所より落ち着く。隠れアジトのくせに生活感たっぷりでな…」

「生活感たっぷりだと?そんなわけ…」



―――書店並の冊数を誇るマンガとラノベの数々

―――最新鋭のゲーム機にパソコン

―――膨大な量のお菓子やインスタント食品

―――申し訳程度に置いてある仕事道具



「……オカシイな、最初はこんなじゃ無かったのに…」


 基本的にこの部屋から出れないので、このようなインドアクオリティーな状況になってしまったのだが、自覚してみるととんでもないなコレ。引き篭もりの末路と言っても過言では無い有様である…


「まぁ、ここに来る理由はそれだけでは無いのだが………む、菓子が無くなった…」


 何やら呟いていたマドカだったが、菓子袋の中身が空となるや否やそれを放り捨て、近くにあったポテチ(未開封)に手を伸ばした。って、ちょっと待て… 


「お前さっきからバリボリ食ってるが、それ何袋目だ?」

「4つ目」

「没収!!」

「だが断る!!」


 全力で飛び掛かる俺、それを避けるアイツ。『亡国機業(ファントムタスク)』のエージェントという無駄にハイスペックな二人による携帯の奪い合い。二人とも随分と派手な動きをしてるのに部屋の備品は何一つ壊れず、飛び散らないのは流石というべきか…。


「てぇい!!」

「ぬあ、貴様!?」

「ったく、人の食料をなんだと思ってやがるんだ…」

「おのれ……仕方ない、ポテチが無ければこの冷凍ピザを食べれば良いか…」

「ふざっけんな!!」



 監視対象である織斑一夏は現在、臨海学校の最中でこの学園におらず、その間は別のエージェントが奴の事を担当している。だから、奴が帰ってくるまで俺は、実質休暇期間中である。


 けれどぶっちゃけた話、凄く暇だった。


 休暇つっても、無暗に外に出れないのは変わらない。ハーレムドンカーンの監視以外にやることと言ったら、部屋に置いてある暇つぶし道具とスコールの姉御との通信ぐらいしかない。
だからコイツが来てくれたのは正直に言うと嬉しかった……恥ずかしいから絶対に言わないけど…。


「返せ、俺の夕飯を返せマドカぁ!!」

「ほほう、これはセヴァスの夕飯だったのか。では、一思いに頂くとしよう」



―――『亡国機業』、『フォレスト』チーム所属
 
―――コードネーム『6(セイス)』

―――正式名称『Artificial・Life-No.6』

―――ニックネーム『セヴァス』(一人しか呼ばんが…)



「させるか、電子レンジはここだ!!」

「む、先を越されたか……ちょっと待てセヴァス、私が悪かった、素直に謝る。だから、頭上に振り上げた、その明らかに重そうな電化製品を降ろし…」

「ダーイッ!!」

「ぬわああああああああぁぁぁぁ!?」


―――馬鹿を監視しながら、馬鹿と馬鹿やりながら、それなりに任務と人生を楽しむ馬鹿でございます。
 
 

 
後書き
基本的にハーメルンの奴を移すだけですが、ちょくちょくと改訂もしたいので、周一ペースでやっていこうと思います。 
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