赤城と烈風
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
波及効果と戦史研究
海軍型7糎半野戦高射砲
トハチェフスキー将軍の縦深突破戦術は冴え渡り、ユーラシア大陸東部を席捲。
北緯50度の樺太国境線にも極東ソ連軍が押し寄せ、日本陸軍は撃退を試みますが。
潜水艦に無策と海軍を罵倒した陸軍も想定外の猛威、鋼鉄の嵐に曝され瞬く間に敗退。
白兵戦重視の高級参謀は戦車対策を怠り、対策が皆無の実態が暴露されました。
95式軽戦車は騎兵旅団に配備され、総勢3桁に達しますが。
36.7口径37粍戦車砲の撃ち出す徹甲弾は軽戦車T-26、快速戦車BT-7の装甲を貫く事が出来ません。
89式中戦車は常設歩兵師団に配備され、総勢2桁を数えますが。
18.4口径57粍戦車砲が発射する榴弾、初速の低い機関銃陣地破壊用の炸裂砲弾も貫通力に劣り無効です。
日本陸軍は第一次大戦に派兵せず、戦車開発の優先度は高くありませんでした。
セクショナリズムの弊害もあり、合理的な選択が行われたとは言えません。
95式軽戦車は高速性能を重視の騎兵用、数を揃える為に敵戦車との戦闘は想定せず。
94式38口径37粍速射砲の威力低下型が搭載され、小銃弾の貫通を阻む防御力に留めています。
89式中戦車も敵戦車との戦闘は想定せず、歩兵の援護と機関銃陣地の破壊用。
18頓の試製1号戦車と異なり、小銃弾の貫通しない程度の装甲で軽量化が図られました。
90式18.4口径57粍戦車砲も砲口初速349.3m/秒、歩兵砲と類似の機関銃陣地破壊用火器。
92式徹甲弾は弾薬重量2.58kgですが快速戦車BT-7型、軽戦車T-26型の装甲には全く歯が立ちません。
ソ連製46口径45粍砲の発射する砲弾は貫通力に優り、89式中戦車を一撃で戦闘不能に陥れています。
94式36.7口径37粍戦車砲は砲口初速574.4m/秒ですが、BT-7型・T-26型の装甲には通用押せず。
95式軽戦車は装甲車BA-10型の標準装備、46口径45粍砲にも撃破されてしまいます。
日本戦車の戦車砲は諸外国と異なり、対戦車砲を軽量化して搭載。
初速と砲身長を低く抑えた代償に貫通力と破壊力も低く、履帯を狙い敵戦車の阻止を試みますが。
1936年の危機は南樺太、千島列島を席巻し陸軍は窮地に追い込まれました。
最悪の事態に直面した関係者は縄張り根性を棄て、戦車対策を協議しますが。
対戦車砲として有効な高射砲は数が揃わず、海軍に頭を下げ援護射撃を要請。
極東ソ連軍は宗谷岬付近に揚陸し海軍も各鎮守府の陸戦隊を急派、艦砲射撃も試みますが。
潜水艦の雷撃を受け緊急避難を強いられる艦艇が続出の為、支援効果は限定的で焼け石に水。
択捉島・国後島・歯舞諸島に続き、北海道東部への強襲も時間の問題と思われましたが。
89式40口径127センチ高角砲の採用後、艦艇から撤去された在庫保管品の急送が実現します。
稚内に到着した海軍陸戦隊は陸軍構築の陣地に潜み、旧式化した高角砲から重量6kgの砲弾を発射。
砲口初速670m/秒の高角砲弾は敵戦車を貫き、歓声が上がります。
艦艇用の高角砲は装備数が僅少な為、波状攻撃を受ければ壊滅は必至でしたが。
大陸方面で急激な進撃を重ねる極東ソ連軍の最高指揮官、トハチェフスキー将軍は合理的に判断。
輸送船の準備まで手が廻らぬ現状に鑑み、渡海作戦の中止が指示されました。
96式艦上戦闘機の活躍で制空権を掌握の後、日本陸軍は樺太南部・千島列島の奪還に挑みます。
3年式8センチ高角砲は総て急送され、一部の艦艇や軍港・要塞からも姿を消しました。
兵力の逐次投入を避ける為に数百門の高角砲が一気に投入され、76.2粍の砲弾在庫も一挙に払底。
砲弾と砲身の製造設備は海軍の管轄でしたが、陸軍に移管し補給の円滑化を図ります。
仮称・海軍型7糎半野戦高射砲は期待に応え、装甲車や戦車を次々に撃破。
壊滅寸前に陥った陸軍戦車旅団の穴を埋め、樺太沿岸の奪還に貢献していますが。
極東ソ連軍は艦砲射撃の援護が届かない森林地帯に退き、強襲は甚大な犠牲が避けられません。
十数隻の駆逐艦に護衛された重巡洋艦、陸戦隊を乗せた輸送船が樺太東方オホーツク海を迂回。
オハ油田一帯を奪取の後に機雷を敷設、逆上陸を阻止する為に駆逐艦と敷設艦が間宮海峡に突入。
潜水艦の雷撃で駆逐艦が着底の代償に重砲、戦車等の輸送船も触雷沈没しています。
千島方面も海上補給線を遮断、上陸部隊を孤立させ艦砲射撃で痛打。
占領地を交換する形で漸く南樺太、歯舞諸島、千島列島が奪還されました。
・3年式8センチ高角砲
口径76.2㍉
砲身長3m(40口径)
砲口初速670m/秒
最大射程1万800m
弾頭重量6kg/砲弾重量9.43kg
ページ上へ戻る