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dark of exorcist ~穢れた聖職者~

作者:マチェテ
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第15話「クリス・フランペア 廃ビルでの交渉」

―――【アメリカ・ニューヨーク】


「アメリカに来るのは初めてです………すごい……」

クリスは、まるでおもちゃを貰った子供のように眼を輝かせ、ニューヨークのビル群を見回していた。

「おまけに人もスッゴいいるからねぇ~……あ、クリスちゃん、よそ見してると迷子になるよぉ~」

クリスの少し後ろには、アイリスではない少女がいた。

「あ、すいませんでした………あの、フランさん。ちゃん付けで呼ぶのやめてください……」

「えぇ~、クリスちゃんって可愛いじゃんかぁ~」

「うぅ~ん………」

クリスはフランの言葉に困り顔を浮かべた。




クリスとペアになった少女の名前は「フラン・ベアリング」。
"ルークス・ソーリエ"の悪魔狩りの中では一番小柄。
アイリスには「フランちゃん」と呼ばれ、アリシア、キリシマからは「チビ」と呼ばれている。
元々はパトリックと同じ"ヴィクトワール"に所属していた。













「今回の討伐目標は、ゴブリンとバフォメット、でしたね」

「そうだねぇ~。聞いた限りだと、連中は街中じゃなくビルの上で確認されたっぽいねぇ~」

「人目を避けてるってことは、悪魔狩りを警戒してますね」

「わたしはクリスちゃんと違ってビルからビルへ飛べないからねぇ~。頼むよぉ~」













2人の会話で出てきた"バフォメット"とは、下位悪魔の名前だ。







<<バフォメット>>

下位悪魔の中でも強力な個体。
山羊の頭を持った大柄な人型で、かなりの筋肉質。
その筋力から繰り出される体術は、コンクリートすら易々と破壊するほど。
また、バフォメットの特有の雄叫びは周囲の下位悪魔を呼び出す力があるため、悪魔狩り達は
バフォメットを最優先で倒すように心掛けている。

















―――【廃ビル・14階】

クリスとフランは、悪魔の目撃情報があったという廃ビルの屋上に向かっていた。
クリスは廃ビルの壁を歩きながら眺めていた。壁中が落書きで埋めつくされている。
つい最近描かれたのか、真新しいスプレー缶がゴロゴロと転がっていた。

「不良少年達かなぁ~? お仕事の邪魔しないでくれよぉ~」

「でも、本当に仕事の邪魔をされるのは困ります。それに、巻き込むわけにはいきません」

「むふふ~、だから追い払ってしまおうということなのさぁ~」


15階に上がってすぐに、4人の人影が見えた。
その4人は、見て一発で"不良"と分かる若者達だった。

その内3人は、金髪でピアスをしている。そして、一人はタバコをくわえている。
リーダー格と思われる若者は、金と黒のリーゼントで、全ての指にゴツゴツとした指輪を嵌めている。

「んだ、テメェら?」

「俺らになんか用か、あぁ?」

若者達はいきなり喧嘩腰でクリスとフランに詰め寄って来た。
しかし、クリスとフランは表情を崩さず、自分達の要件を伝えた。

「落ち着いてください。僕らは喧嘩をするつもりはありません」

「そうそう~、このビルにさぁ~、危ない武器を持った人がいるって聞いてねぇ~」

「僕らは武器を所持した不審者を探してここに来ました。危険なので、ここから出てくれませんか?」

"武器を持った不審者"を理由として、不良少年達にこの廃ビルから出て行ってもらう、という考えだった。
しかし、不良達は引き下がらなかった。

「不審者だぁ? 適当なこと言ってんじゃねぇぞコラ!」

「俺らのテリトリーに入っておいてただで済むと思うなよ」

「テメェらぶっ殺されてぇのか、あぁ!?」

3人の金髪が喚き始めた。


「オイ、テメェら黙ってろ」

リーダー格のリーゼントが、3人を黙らせクリスとフランに歩み寄って来た。

「………テメェら誰だ? 明らかにサツじゃねぇだろ?」

「何故そう思うんですか?」


「さっき不審者が来たって言ったな? 『何か知らないか』じゃなく『出てくれないか』と聞いた。
サツが俺らの心配するはずがねぇ。お前ら本当は何しに来た?」

「……………鋭いですね」

クリスはどう言ったものか迷っている。
"悪魔を狩りに来た"と正直に言って信じてもらえるはずがない。


「……………………その不審者を殺しに来た、と言って信じてもらえますか?」


不良達はクリスとフランに向けていた警戒心を明確なものにした。

「……そうかよ…………分かった、出てやる」

「アニキ!?」

「いいんすか!?」

「構わねぇよ、コイツらだって永遠にここにいるわけじゃねぇんだ」

クリスとフランは正直驚いていた。
もっと反対されたり、最悪暴力沙汰になるかも知れないと思っていた。
しかし、リーゼントがそれを静めた。

「………ありがとうございます」

「いい判断に感謝感謝~」

リーゼントに礼を言うと、2人は不良達を横切り屋上へ向かった。












「アニキ、本当によかったんすか? アイツら何するか分かったもんじゃないっすよ」

「いいんだよ、さぁ行け。アイツらの巻き添えは御免だろ?」

リーゼントは3人の金髪を廃ビルから出した。




「…………………"ルークス・ソーリエ"の悪魔狩りか……」 
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