ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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フードの妖精
アルヴヘイム・オンライン、そこは妖精たちの国をモチーフにしたVRMMOである。
その世界の空で飛ぶ一筋の光、シルフの少年、少女は今追われる身にあった。
「クッ!!しつこい!!」
追ってくるのはサラマンダーのプレイヤー、数は三人。先ほどまで五人いたが戦闘の末、二人は減らした。しかし、未だ不利あることに変わりはない。
「うわああ!!」
シルフの少年は地上から伸びた複数の炎の渦をくらい、空中で停止してしまった。
「バカ、止まるな!!」
少女の叫びが届く前にサラマンダーのランスが少年の体を貫いた。
「ごめえええええん!!」
断末魔と共に少年は《エンドフレイム》とよばれる死亡エフェクトと共に消滅。そこには《リメインライト》と呼ばれる炎が残る。
少女は奥歯を噛み締めるが、すぐに切り替えて長刀を構え、叫んだ。
「来い!!」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「フムグ!!」
深く暗い森の中、スプリガンの少年キリトは間抜けな声と同時に顔面から地面に墜落した。
しばらくして体を起こすと、以前感じていた感覚を五感で感じた。
「また・・・来ちゃったなぁ・・・」
性懲りもなくと思いながら一つ呟くと、メインメニューを開く。そしてログアウトボタンを確認すると安堵の表情を浮かべる。
「あ、あった・・・」
安心しながらウインドウを操作しているとあることに気付く。
「うあ・・・マジかよ・・・!?」
ウインドウにはキリトという名前、スプリガンという種族名の表示、そしてHP、MPといったステータス表示がそれぞれ400、80といかにも初期数値のものが並んでいる。ここまでは良かった。
しかし、その下に書かれていたものは目を疑うものだった。
片手剣や体術、武器防御といった戦闘系スキル、釣りなどの生活系スキルなどが並び、さらにその熟練度はほとんどが900台で中には完全習得したものもある。
そしてそのスキルの数々はかつてSAOの中で習得したものだった。
「ここは、SAOの中なのか・・・?」
なんだかよく分からないままアイテム欄を開く。
「うわ・・・」
そこには文字化けした数十行もの羅列があった。
おそらくSAO時代に持っていたアイテムだろうと思いながらスクロールする。
そこで指が無意識のうちにぴたりと止まる。そこにはライムグリーンに発光する《MHCP001》という表示があった。
その表示にキリトは息を呑む。
「おい・・・ウソだろ・・・!?」
キリトは恐る恐るそれを選択、アイテム取り出しボタンを押す。
すると、目の前に雫の形にカットされたクリスタルが出現する。彼は人差し指でそれをクリックする。
直後、白い光が爆発し一人の少女が現れた。四方にたなびく長い黒髪、純白のワンピース、華奢ともいえる手足。そんな少女がキリトの目の前に舞い降りた。
光はすぐに消えていき、少女はゆっくりと目を覚ました。
「俺だよ・・・ユイ。解るか・・・?」
キリトは少女にそういうと少女は嬉しそうに微笑んだ。
「また、会えましたね、パパ」
ユイは大粒の涙を流しながら、キリトの胸に飛び込んだ。
「パパ・・・パパ!!」
ユイは細い腕でキリトを強く抱き締めた。
あれから二ヶ月の月日が経っている、ユイはその間サーバーの中で一人寂しく過ごしていたのだ。甘えたいのも無理はない。
しかし、キリトには一つの疑問があった。
「なあ、ユイ。一つ聞いてもいいか?」
「はい?」
「どうして俺のサーバーにいたんだ?ユイは確かシオンのサーバーに・・・」
「はい。確かに私はにぃにのサーバーにいましたが、SAOが終わる前にパパのサーバーににぃにが移したんです」
「移した?」
「基本的には自由に行き来できますが、SAOが終わる直前で急遽パパのサーバーに移されました」
「どうしてまた・・・」
「恐らくにぃには自分が死ぬかもしれないというのを示唆していたんだと思います・・・。最後の戦いでかなりの無茶をしていましたから・・・」
「そうか、でも死んではいないから安心しろユイ・・・」
「本当ですか!!」
ユイは喜びの声をあげる。
「ああ、ただ・・・」
「ただ?」
「記憶が無くなってな・・・。取り戻しつつはあるんだが、SAOでの二年間の記憶が抜けてるんだ・・・」
「そう、なんですか・・・。あの言葉はそういうことだったんですね・・・」
「あの言葉?」
ユイはキリトの問いに対して頷いた。
「はい。SAOが終わるとき、最後ににぃにから言われたんです。『俺はこの世界のことを忘れるだろう』と・・・。そこでもう一つ言われたのがパパに伝えてほしいと言われました」
「俺に?」
「はい。『キリト、救いたい者がいれば迷うな。守りたい者がいればとことん守れ。後悔なく生きろ!!』と言っていました」
その言葉にキリトは苦笑する。
「まったく、アイツらしいな・・・」
そしてキリトはその後、この世界がSAOのサーバーのコピーの可能性があることを知る。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
キリトとユイが話しているより時間より少し後、とある少年は・・・。
「あらら、どうやら迷っちまったみたい・・・」
森の中で迷子になっていた。
「ったく、システムはバグるは、マップは出ないは、散々だよまったく・・・ん?」
ふと、少年が空を見ると上空を飛ぶ黄緑色の光が一閃、そしてそれを追う赤い光が三つ見えた。
「ほぉう、あれがシルフとサラマンダーだっけか?しっかし、三対一とは随分とやるね~・・・」
そう言って眺めていると黄緑色の光が森の中へと落下していった。
「あれま、墜ちちゃった・・・。しょうがない、行ってみるか」
そう言うと少年は光の落ちた場所へと歩きだした。
落ちた場所の近くまで来るとそこにはシルフの少女を囲むサラマンダーのプレイヤー、その数三人。
シルフの少女は曲剣を構え、臨戦態勢である。その姿に藪の中に隠れている少年は、
「あーあー、あんなに力入っちゃって・・・。これじゃあ、どっかの誰かさんを見てるようだよ・・・」
呆れながらも加勢に入ろうとしたその時、空から今度は黒い影が勢いよく降ってきた。
「あだっ!!」
なんとも間抜けな声と共に顔面から落ちたのはスプリガンの少年だった。髪はツンツンと逆立っており、初期装備ともいえる片手剣を携えている。
「いってて、着陸がミソだなこれは・・・」
スプリガンの少年は緊張感の欠片もない言葉と共に立ち上がり目の前の状況を確認する。
「何してるの!早く逃げて!!」
「重戦士三人で女の子一人を襲うのはちょっとカッコよくないなぁ」
「なんだと貴様!!」
「ついでに言うならそこの藪に隠れてるやつも出てこいよ」
そう言われて少年は渋々藪から出てくる。
「あらまあ、やっぱり分かっちゃいましたか?」
「て、てめぇ何者だ!!」
サラマンダーの一人が少年に尋ねると少年は、
「通りすがりのコート着た妖精っすけど?」
「ふざけているのか・・・」
「さあ?それは自分で確かめな♪」
そう言うと少年は拳を構える。
「さぁ、相手になりますよ!!」
「バカが!武器を持たず戦うなど!!」
サラマンダーのプレイヤーの一人はランスで突進する。
「危ない!」
シルフの少女は叫ぶが少年はそのランスの先を止めた、人差し指と中指だけで。
「なッ!!」
「遅いっすよ♪」
少年はパッと離すと、後ろに後退する。
「ねえ、そこのシルフのお姉さん♪」
「あ、あたし?」
「コイツら、倒しちゃっていい?」
「え、ええ。少なくとも、向こうはそのつもりだし・・・」
「りょーかい、そんじゃ後は任せます♪」
「いいのか?俺がやって?」
「構いませんお願いします♪」
「そんじゃ、遠慮なく」
そう言うとスプリガンの少年は地面を蹴り、サラマンダーのプレイヤーの一人を斬り倒した。
「ほう・・・」
「速い!!」
その速さにシルフの少女は唖然とし、フードを被った少年は興味のある視線で見つめる。
「どうする?アンタも戦う?」
残り一人になったサラマンダーのプレイヤーはお手上げというように両手を挙げた。
「いや、やめておくよ。もうちょっとで魔法スキルが900なんだ、死亡罰則が惜しい」
「正直な人だな。そちらのお姉さんとフードの人は?」
「あたしもいいわ。今度はきっちり勝つわよ」
「自分は通りすがりですからね、戦う理由がない」
「君ともタイマンやるのは遠慮しておくよ、特にそこのフードの君とはね」
そう言ってサラマンダーのプレイヤーは空へと飛び去っていった。
赤いリメインライトは一分経過したところでふっと消え、シルフの少女は緊張した面持ちで尋ねた。
「・・・で、あたしはどうすればいいのかしら。お礼を言えばいいの?逃げればいいの?それともたたかう?」
「うーん、俺的には正義の騎士がお姫様を助けたっていう場面なんだけどな」
「は?」
「感激して、涙ながらに抱きついてくる的な・・・」
「ば、バッカじゃないの!!」
「ははは、冗談冗談」
スプリガンの少年はカラカラと笑いながら冗談を言う。そこに。
「そうですよ!そんなのダメです!!」
「あ、こら、出てくるなって」
スプリガンの少年の胸ポケットから小さな妖精が出てきた。鈴の音のような音がする羽を羽ばたかせながら少年の顔のまわりを飛び回る。
「パパにくっついていいのはママとわたしだけです!」
「ぱ、ぱぱぁ!?」
「ブハッ!!」
フードの少年はその小さな妖精の発言に思わず吹き出してしまう。
「あ、いや、これは・・・」
「ねぇ、それってプライベート・ピクシーってやつ?プレオープンのキャンペーンで抽選配布されたっていう・・・」
「わ、わたしは・・・むぐ!」
何か言いかけたところで妖精の顔をスプリガンの手が覆う。
「そ、そう、俺クジ運いいんだ!」
「ほーう、まあ言いっすけど自分はもう帰りますわ」
「え、ちょっと!!」
「お前、名前は!!」
「通りすがりの妖精ですよ自分は。ではでは~♪」
「あ、おい!!」
そう言ってフードの少年は闇のなかに消えた。
「なんだったんだ、アイツ・・・」
そこにはスプリガンの少年とシルフの少女だけが残された。
「不思議です・・・」
「どうした、ユイ?」
「似てるんです、雰囲気が・・・」
「雰囲気?」
「はい・・・」
そこでユイと呼ばれた妖精が言った人物は───。
「向こうにいたときの、にぃにに・・・」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「久しぶりだと疲れるな・・・」
『大丈夫か?』
「ああ・・・」
先ほどスプリガンの少年とシルフの少女と別れた少年は誰かと会話しているように思えた。しかし、そこには彼以外誰もいない。
『驚いたものだな、まさかこの世界にあの男がいるなんてな・・・』
「なにも驚くことはないさ、アイツはそういう男さ」
『随分と楽しそうだな・・・』
「そうか・・・?まあ、確かにそうかもな・・・」
少年は口元に笑みを浮かべると、羽を広げた。
それはどの種族にもない白く透き通った美しい羽だった。
「さて、まずは・・・」
そう言って少年は棒を立てて離した。倒れた先は───。
「・・・北だな」
『北というとケットシー領か・・・』
「ケットシー、猫みたいな奴等か・・・」
『そうだな』
少年はうーんと暫く悩むと、
「よし、行くか!」
そう言ってフードを外すと先ほどまで白銀色をしていた髪は黒く染まっていた。そして、ルビーのような紅の瞳がそこにはあった。
「まずは、獣竜だな・・・」
黒い髪を揺らしながら彼は空へと飛び立っていった。
後書き
はい!最近手料理に迷っている作者です!!
このフードの少年、読者の皆さんはシオン、アルモニー、オリキャラ。
色々な予想が飛び交っていますが(飛び交っているかは知りませんが)、その真相はもう少しお待ちください。
コメント待ってます♪
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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