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機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~

作者:setuna
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第十三話 ディオキアでの一時

 
前書き
ディオキアでの一時 

 
ガルナハンを攻略したミネルバは、ジブラルタルより進軍したザフト軍によって解放された黒海沿岸都市の1つ、ディオキアに寄港した。

ナオト「今まで海だの基地だの山の中だのばかりだったから、こう言う綺麗な街っていいね。」

アレックス「ああ、そうだな」

タリア「アレックス、ナオト。これからミネルバと各機体の修理に時間がかかるみたい。あなた達は明後日の出港まで突然だけど休暇にするわ」

アレックス「はい」

ナオト「分かりました」

タリア「しっかり休んでおいてちょうだい」

アレックス、ナオト「「はっ」」

これから休暇を取るというのにきっちり敬礼をし、軍人である態勢を崩す気配の全くないアレックスとナオトにタリアは苦笑してしまった。
本来ならばアレックスとナオトの行動は正しい。
しかし、彼らはFAITHゆえにタリアと同じ位置に立っている上に、どうにも軍人としてなりきれていないメンバーが多いこの艦にいながらその姿勢を崩さないのは、彼らの真面目さと頑固さを感じさせた。
休暇であることを告げようとアスランが4人の姿を探しているとちょうど前方から4人が歩いてきた。

アレックス「4人共。突然だが艦と機体の修理に時間がかかるから、今日は一日休暇を取って、街に降りてもいいぞ」

ルナマリア「本当ですか。やった」

アレックス「ああ」

ルナマリアが軽く歓声を上げ嬉しそうに笑う。

ルナマリア「あ、それじゃあ。アレックスさんとナオトさんも一緒に行きましょう」

ぐいっとルナマリアがアレックスとナオトの腕を引き、艦の入口へ向かった。
6人が通路を歩いていると、艦外からもの凄い歓声が聞こえてきた。
入口の近くであり、しばしの休息ということで艦の入り口が開いていたためとは言え、その凄い音に6人は呆気に取られながらも外へと向かった。

「ラクス様~!!」

「こっち向いてくださ~い!!」

艦の外へ出ると、ディオキア基地在中の兵士達の殆どと思われる人数が集まっていた。
そして、その中心ではピンクの髪が舞っていた。

ステラ「わあ…」

シン「あれって…」

アレックス、ナオト「「(ミーア!?)」」

彼女は確か、議長が自分達に紹介してくれたラクスの代役のミーア・キャンベルだ。

ルナマリア「え、ラクス様が来てるの!?」

ミーアの姿を見てルナマリアが声を上げる。
ミーアはピンク色のザクの掌にいる。
白いグフとディンに支えられていた。

ミーア「勇敢なるザフト軍兵士の皆さーん!!平和のために本当にありがとう!!1日も早く戦争が終わるよう、私も切に願ってやみませーん!!」

ナオト「(ミーア…ちょっとイメージが違わない?偽者と思われたりは…しないか)」

かつての本物のラクス・クラインと比べれば、明らかに性格が違いすぎるために怪しまれないか危惧したが、寧ろ本物より歓声が大きい気がする。









































その日の午後、ミネルバのパイロットはディオキアの街を見下ろすホテルに呼ばれた。

シン「……高そう」

ステラ「おっきい…」

天高く聳え立つような高級ホテルを見上げてシンとステラはぽつりと嘆いた。
隣に立つルナマリアも心の中でしきりに首を縦に振っていたりもする。

レイ「シン、ルナマリア、ステラ。アレックス達に置いて行かれるぞ」

レイの声にはっと我に返るともうロビーへ入っていくところだった。

ステラ「うん…」

シン「うわっ。今いく」

ルナマリア「待ってよ」

ステラとシンとルナマリアは慌ててレイの後についていった。






































ハイネ「失礼します。お呼びになったミネルバのパイロット達です」

デュランダル「やあ、久しぶりだね、アレックス、ナオト。」

アレックス「はい、議長」

ナオト「お久しぶりです」

デュランダル「あぁそれから……」

ルナマリア「ルナマリア・ホークであります」

シン「シ、シン・アスカです!!」

デュランダル「君のことはよく覚えているよ。」

シン「え?」

シンが名前を名乗ると、議長はまた柔らかく微笑んで手を差し出す。

デュランダル「このところは大活躍だそうじゃないか。君をインパルスのパイロットに推薦して良かった。叙勲の申請も来ていたね。結果は早晩手元に届くだろう」

シン「…あ、ありがとうございます!!」

シンは差し出された手を嬉しそうにとり、握手を交わした。

デュランダル「まあ、掛けたまえ。食事の用意が出来ている」

全員【はい!!】

全員が席に着き、食事をご馳走になる。

デュランダル「例のローエングリンゲートでも素晴らしい活躍だったそうじゃないか君は」

シン「いえ、そんな」

席に座ってからも議長はシンに賞賛の言葉を送っていた。
それぐらいシンが活躍しているのは確かだ。
技術はまだまだ粗いところはあるが、シンはミネルバに無くてはならない存在だ。

デュランダル「ナオトとステラ君を除けばアーモリーワンでの発進が初陣だったというのに、みんな大したものだ」

シン「あれはアレックスさんの作戦が凄かったんです。俺、いえ自分はただそれに従っただけで」

デュランダル「この街が解放されたのも、君達があそこを落としてくれたおかげだ。いや、本当によくやってくれた」

シン「ありがとうございます!!」





































しばらくして食事も一息つき、全員が渡された紅茶を飲む。

デュランダル「ともかく今は、世界中が実に複雑な状態でね」

タリア「宇宙の方は今どうなってますの?月の地球軍などは」

デュランダル「相変わらずだよ。時折小規模な戦闘はあるが、まあそれだけだ。そして地上は地上で何がどうなっているのかさっぱり分からん。この辺りの都市のように連合に抵抗し我々に助けを求めてくる地域もあるし。一体何をやっているのかね、我々は…」

議長が嘆くのも分かる。
これでは何のために戦っているのかが分からなくなりそうだ。
勿論プラントを守るためもある。
しかし今の状況を聞く限り、どう動いていいのか分からないのだ。

タリア「停戦、終戦に向けての動きはありませんの?」

艦長が言った通り、始まった戦争は既に終戦に近いのではないかと思ったりもする。
それだけあっさりとしているのだから。

デュランダル「残念ながらね。連合側は何1つ譲歩しようとしない。戦争などしていたくはないが、それではこちらとしてもどうにも出来んさ。いや、軍人の君達にする話ではないかもしれんがね。戦いを終わらせる、戦わない道を選ぶということは、戦うと決めるより遙かに難しいものさ、やはり」

シン「でも……」

デュランダル「ん?」

議長の言葉にシンが真っ先に反応を示し、そこにいた誰もがシンに注目する。

シン「あ……すみません」

デュランダル「いや構わんよ。思うことがあったのなら遠慮なく言ってくれたまえ。」

議長はそんなシンに気にするなと笑いかけると、話を促すように言葉を続けた。

デュランダル「実際、前線で戦う君達の意見は貴重だ。私もそれを聞きたくて君達に来てもらったようなものだし。さあ」

シンは議長を真っすぐ捉えて自身の意見を言い始めた。

シン「はい……確かに戦わないようにすることは大切だと思います。でも敵の脅威がある時は仕方ありません。戦うべき時には戦わないと。何1つ自分達すら守れません。普通に、平和に暮らしている人達は守られるべきです!!」

デュランダル「ふむ。アレックスはどうかね?」

アレックス「私もシンの言葉に賛成です。降り懸かる火の粉は掃わなければいけません。自衛のための戦いも否定するのなら、それは、自殺です。ですが時々思うんです。殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで本当に最後は平和になるのかと…そう思うんです」

デュランダル「そう、問題はそこだ。」

議長はそう答えると、席を立ち、テラスの手すりの方にゆっくりと足を向けた。

デュランダル「何故我々はこうまで戦い続けるのか。何故戦争はこうまでなくならないのか。戦争は嫌だといつの時代も人は叫び続けているというのにね…。君は何故だと思う?シン」

シン「え?それはやっぱり、いつの時代も身勝手で馬鹿な連中がいて、ブルーコスモスや大西洋連邦みたいに…違いますか?」

デュランダル「いや。まあ、そうだね……」

議長はシンの言葉に少し考えるように間を空けると、話を続ける。

デュランダル「それもある。誰かの持ち物が欲しい。自分達と違う。憎い、怖い、間違っている……。そんな理由で戦い続けているのも確かだ、人は…だがもっとどうしようもない、救いようのない一面もあるのだよ、戦争には……」

全員【え?】

誰もが議長の一言に疑問を持った。

デュランダル「例えばあの機体……」

議長は後ろを振り返ると、近くに立っていた白い塗装がされたグフを見た。
アレックス達も勿論グフに目が行く。

デュランダル「ZGMF-2000グフイグナイテッド。かつてのナオトの愛機でもあるが、つい先頃、量産体制に入ったばかりだ。今は戦争中だからね、こうして新しい機体が次々と作られる。戦場ではミサイルが撃たれ、MSが撃たれ、様々なものが破壊されていく。故に工場では次々と新しい機体を造り、ミサイルを造り、戦場へ送る。両軍ともね……」

それは人にも当てはまる。
戦場で兵が死に、また軍から兵が戦場に送られる。
機械の動きのように。

デュランダル「生産ラインは要求に追われ、追いつかない程だ。その1機、1体の価格を考えてみてくれたまえ。これをただ産業として捉えるのなら、これほど回転が良く、また利益の上がるものは他にはないだろう」

全員【っ……!?】

誰もがその言葉に驚愕する。
確かに戦争ほど需要と供給のバランス、サイクルがいいものはない。
でもそれには人の命も付いてくる。
それを産業として考えるなんて今までしたこともなかった。

タリア「議長、そんなお話……」

シン達の表情を見て艦長が議長をたしなめた。

シン「でも、それは……」

シンは困惑しながらも何か言おうとすると、それを遮るように議長が口を開いた。

デュランダル「そう。戦争である以上、それは当たり前、仕方のないことだ。しかし人というものは、それで儲かるとわかると逆も考えるものさ。これも仕方のないことでね……」

アレックス「逆…ですか……?」

アレックスはその意味がわかったのか小さく息を呑んだが、シンとステラは意味が分からず首を傾げる。
そんなシン達を見て、議長は一つ頷いた。

デュランダル「戦争が終われば兵器は要らない。それでは儲からない。だが戦争になれば?…自分達は儲かるのだ。……ならば戦争は、そんな彼らにとっては、是非ともやって欲しいこととなるのではないのかね?“あれは敵だ。危険だ、戦おう”、“撃たれた、許せない。戦おう”…人類の歴史には、ずっとそう人に叫び、常に産業として戦争を考え、作ってきた者達がいるのだよ。自分達の利益のために、ね……今回のこの戦争の裏にも、間違いなく彼らロゴスがいるだろう。彼らこそが、あのブルーコスモスの母体でもあるのだからね」

シン「そんな……」

アレックス「……ロゴス?」

聞き慣れない単語を呟き、戦争の裏を知り、誰もが表情を暗くした。

デュランダル「…だから難しいのはそこなのだ。彼らに踊らされている限り、プラントと地球はこれからも争い続けていくだろう」

ロゴスが存在する限り、戦争は止まることがあってもなくなることはない。
その度に死んでいく人がいて…。
その度に憎しみが増えていく。

デュランダル「出来ることなら、それを何とかしたいのだがね、私も……だが、それこそが何よりも本当に難しいことなのだよ……」

平和を取り戻すためにはロゴスをどうにかしないといけない。
それがこれまでの根本を覆すようなどんなに大変なことだとしても、それを知ることが出来た自分達が何かをしなければならないことだけは明確だった。












































ルナマリア「…本当に、よろしいんですか?」

ルナマリアが戸惑いながらそう尋ねると、前を歩いていた艦長はチラッとこちらを見て口を開いた。

タリア「ええ。休暇なんだし、議長のせっかくのご厚意ですもの。お言葉に甘えて、今日はこちらでゆっくりさせて頂きなさい。確かに、それくらいの働きはしてるわよ、あなた方は……」

ここはザフトが管理しているものではあるが、最高級のホテルにも負けないくらい豪華だ。
そんなところに泊まれるなんて、軍人のシン達にとってはまたとない機会。
そんなシン達の様子を見てアレックスは微笑んだ。

アレックス「そうさせていただけ、シンもステラもルナマリアも。もちろんナオトとレイも。艦には俺が…」

レイ「艦には、私が戻ります。アレックスもどうぞこちらで」

アレックスが気を利かせて言った言葉をレイが遮るように、アレックスにもホテルに泊まるよう勧めた。

アレックス「いや、それは……」

レイ「褒賞を受け取るべきミネルバのエースはアレックスやナオト、シンです。そしてルナマリアとステラは女性ですので、私の言っていることは順当です」

ミーア「アレックス!!ナオト!!」

廊下の前方からヒールの音を鳴らして駆け寄ってくるミーアを見えた。

デュランダル「これは、ラクス・クライン。お疲れ様でした」

議長は駆け寄ってきたミーアにそう挨拶をする。

ミーア「ありがとうございます」

ミーアは礼儀正しく返事を返すと、議長と艦長の間を通り抜け、真っ直ぐアレックスとナオトの方へ向かってきた。

ミーア「2人共ホテルにおいでと聞いて、急いで戻ってまいりましたのよ!!今日のステージは?見てくださいましたっ?」

アレックス「え?ああ、見てたよ。途中までだったけど」

ミーア「ええ?それで、どうでしたか?」

ナオト「生き生きしてて、見てて元気になれたよ、議長。」

ナオトは議長に視線を向けると議長も理解したのか頷いた。

ナオト「紹介するよ。彼女はミーア・キャンベル。ラクスの代役をやってくれてるんだ」

ルナマリア「ええ!?」

ステラ「代役?」

シン「じゃあ偽…もごっ!?」

偽者と言いそうになったシンの口をレイが咄嗟に塞ぐ。

ミーア「がっかりした?」

寂しそうに笑うミーアにシン達は急いで首を振る。

ルナマリア「いいえ!!」

シン「気にしなくていいですよ。歌とか凄い上手かったですし!!」

ステラ「ミーアの歌、好き…」

ルナマリア、シン、ステラの言葉にミーアは満面の笑みを浮かべた。
ラクスにそっくりな顔で浮かべる笑顔にシンは顔を逸らしてしまう。

デュランダル「ミーア。彼らにも、今日はここに泊まってゆっくりするように言ったところでね。彼らと食事でもしてくるといい」

シン達に正体がバレた為に議長も敬語を止めてミーアに言う。

ミーア「はい!!」

議長の言葉にミーアも頷いて、アレックス達を食事に促すのであった。












































ディオキアのホテルでアレックス達と食事を摂ったミーアは、ルナマリア、ナオトを残させて、誰もいないことを確認するとナオトに尋ねる。
ちなみにステラはシンの部屋に向かった。

ミーア「ナオト~」

ナオト「ん?何、ミーア?」

ミーア「ナオトは、アレックスとどの程度の関係なの?」

ナオト「へ?」

ナオトはミーアの質問の意味とその楽しそうな様子の意味が分からず、思ったままに首を傾げる。

ナオト「どの程度って、どういう意味?」

ルナマリア「そのままの意味ですよ!!」

ミーア「そうそうありのままの意味よ」

ルナマリアが満面の笑みを浮かべ、ミーアも同様の笑みを浮かべる。
そして2人の目に何やら期待の籠った眼差しが乗った。
ナオトまた内心で首を傾げる。

ナオト「うーん、そうだね、私はアレックスと一緒に暮らしてるけど……」

ルナマリア「ナオトさん!!一緒に暮らしてるんでしょう!?どうだったんですか?」

ナオト「な、何かルナ、凄く生き生きしてない…?楽しいの?この話」

ルナマリア「そりゃそうですよ、私だって軍人の前に女ですからね!!」

ナオト「ふ、ふうん…。」

身を乗り出して力説されてしまった。
とりあえずありのままと言われたからありのままを話すことにする。

ナオト「えーと、確かに一緒に暮らしてるし…普通に部屋を行き来したりはしてたけど」

ルナマリア「アレックスさんとですか!!」

ナオト「うん、レイもね、3人で集まって話したり色々やったよ」

ルナマリア「ええっと…そういう意味じゃなくてですねナオトさん…」

微妙な顔をしたルナマリアが紅茶のカップを取って中身を揺らす。
何と言えば良いのか良く分からない、そんな感じだ。
ナオトはますます意味が分からなくなり、何度か瞬きをすると、今まで黙ったまま聞いていたミーアがカップを置いた。
ミーアは肩をすくめ、呆れたように笑っている。

ミーア「はぁ~、ナオトも朴念仁よねえ。見てて面白いけど仕方ないわ!!アレックスのためにここは単刀直入に言いましょう!!」

ナオト「何?」

悪戯っぽくミーアに笑いかけられた。

ミーア「ナオト、アレックスのこと好きなんでしょ?」

ナオト「うん、好きだよ。レイも議長も家族みたいな感じで、大好きだよ!!」

これは心の底から言える偽り無い言葉だ。
胸を張って言える。
そう言って見せると、ミーアとルナマリアが笑ったまま少し表情を引き攣らせた。

ミーア「正直な答えでいいんだけどね、そうじゃないの。私達が言いたいのはー…つまりー…えっと…」

ナオト「?」

台詞を区切って、少し考えるような顔をする。
何だろう。
この何とも言えない緊張感は。
ナオトも何となく背筋を伸ばして言葉を待った矢先。

ミーア「likeじゃなくてloveの方よ。アレックスのこと好きなんでしょ?恋愛的な意味で」

ミーアからナオトに爆弾が投下された。

 
 

 
後書き
アレックス達がロゴスの存在を知る。
そしてミーアの正体がシン達にバレました。
次回はホテルでの出来事。 
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