とある女性の非日常
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そして始まる
『(イラズの森…か…)』
先日のことがあってから なかなか足を踏み入れることが出来ずにいたけれど 私のお勤めはここの除霊だもんなぁ…と一人ごちながら彼女は 比較的明るい 日だまりの差す方へ歩いていた。
すると…
『あれ?みんなだ』
何をしているんだろう なんだかみんな焦っている。
声をかけようとした瞬間。
バチィッ!!!
辺りを覆っていた景色が一転した。
景色がクリアになり 私が見たものは
『…!!!あれ…日向と月代じゃないの…!!』
カンナちゃんもいるし と思いながら慌てて駆け寄ろうとした瞬間。
「月代!!死なないで…!!!」
カンナちゃんの悲愴な声が響いた。
私も急いで駆け寄る。
そこに横たわっていたのは 美しい 人だった。長い黒髪と睫毛。
「お前ぃさんは 名はなんとおっしゃるのかえ?この世界の人間と 違うねぇ…」
『!!…菜摘。一ノ瀬菜摘です』
さすが300年生きた犬神だ。私のことは お見通しだったか。
そう思いながら名前を名乗り カンナちゃんの隣に膝をつき 私も月代の左手を握る。
カンナちゃんは 泣いていた。優しく微笑む月代に 私も泣きそうになった。
リョーチンの 月代の顔を見て との言葉に 私とカンナちゃんは 月代の左手を握ったまま 彼女の顔を見た。
…穏やかな 微笑みを浮かべていた。
そして サラサラと輪郭が薄くなり…彼女はその姿を消した。
「連れ合いが死んじまったよ…」
私ははっとした。いけない まだ日向が残っていた。
てっちゃんが呪符を握り 呪文を唱え…
「去れ!!魔性!!!」
『カンナちゃん!!!』
私が止める間もなく カンナちゃんは飛び出し その胸に日向を還そうとした呪札を受け止め しりもちをついていた。
当然 三人は真っ青になっており てっちゃんなんかは 雷の呪札だったら死んでたぞ と冷や汗をかいていた。
ああ ここから 私は始まるのか とぼんやり思った。
月代が死んで 日向がカンナちゃんの家に住むことになり そして…
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