少年少女の戦極時代Ⅱ
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トッキュウジャー合体SP編
第24話 あたしたちの街
“ドルーパーズ”を出たカグラは、“シャルモン”に行きたいはずなのに、あちこちの店を覗いてはすぐに足を止める。どうやら気になった物は放置できない性格らしい。有体に言うと、移り気。
(なりゆきで付いて来ちゃったけど、マジで“シャルモン”に入りそうになったらダッシュで脱走しよう。どんなにおいしくても、凰蓮は大キライだもん。紘汰くんも戒斗くんもいっぱいイジめられたんだから)
「あんな事件があった後で、お気楽過ぎない?」
舞が、また一つの店のウィンドウを覗き込むカグラを指した。
これに対し、ミオは苦笑する。
「まあ、確かにお気楽だけど。お気楽なだけじゃないよ。どんなに辛いことがあっても、いつの日か、あたしたちはあたしたちの街に帰れるって、信じてるから」
「覚えてないのに?」
トッキュウジャーの身の上は“ドルーパーズ”で聞いた。5人とも記憶がない上に、帰るべき街は闇に呑まれてしまった、と。
「だって、あたしたちの街だもん」
疑いも不安も、一欠けもないミオの笑顔。
(あたしたちの、街)
咲は胸に手を当てた。
室井咲の街はここ、沢芽市だ。ここで生まれ育ったし、ここしか知らない。
(でも、ミオさんみたいに、街そのものがなくなっちゃう人もいるんだ。あたしだったら、メッチャ怒る。そんなのゆるせないもん)
この街で育んだ思い出と、これからも思い出を紡いでいく場所を守るため、咲は戦うと決めた。紘汰と一緒に――
キャアアァァァッ!!
咲ははっとし、舞とミオと顔を見合わせた。
咲はアーチに飛びつき、腹を引っかけて下を覗き込む。咲たちがいるアーチ下を潜って逃げ惑う人々。
ライオンインベスがショッピングモールの客を襲っていた。
その中で逃げ遅れた少女が泣いていた。ライオンインベスの爪が少女に伸びる。
咲は戦極ドライバーを装着し、ドラゴンフルーツの錠前を開錠した。
《 カモン ドラゴンフルーツ 》
「変身!」
咲は今度、アーチを片手で跨ぎ、挟み飛びのように越えて飛び降りた。
《 ドラゴンフルーツアームズ Bomb Voyage 》
短い滞空中に月花に変身する。月花は着地するなり、石畳を蹴ってライオンインベスに横から体当たりした。
「咲ちゃん!」
『ひなんゆーどーお願い!』
月花は両手のDFバトンを繋いでロッドにし、それでライオンインベスを牽制する。両者、半円を描きながら対峙する。
ミオとカグラが降りてきた。カグラが少女の手を引いて駆け出し、ミオは残って月花のほうへ駆けてくる。
(ここ――だ!!)
月花はDFロッドでライオンインベスを突き離し、小さめのDFボムを投げた。煙で一瞬視界が途切れる。
「やった!?」
『わかんない、まだ……っ』
言い切る前に煙が切れ、赤い怪物が飛び出してきた。ライオンインベスは月花でなく、ちょうど隣にいたミオを押し倒した。
『なに――すんのよぉ!!』
月花はDFロッドを地面に刺し、それを支えに回転キックをライオンインベスに食らわせ、ミオの上から蹴りどけた。
『ミオさん、だいじょうぶ?』
「大丈夫……ありがとう」
『気をつけて。アレにキズをつけられたら、生きたまま植物の苗床にされちゃう』
ミオは青い顔をしたものの、すぐ表情を凛然としたものに戻して立ち上がった。
「変身してたら、その苗床になるっていうのは効かない?」
『うん』
「じゃあ行くしかないね」
ミオが、線路を模したブレスレットを左腕に装着した。
「ミオ!!」
ふり返る。そこには駆けてくるライト、トカッチ、ヒカリ、カグラの姿が。
(ヒーローはピンチの時にやって来るのがオヤクソクだけど、ホントだったみたい)
ミオが合流した仲間たちと並んだ。
5人が同じブレスレットに、ミニチュアの列車のような物を装填した。
《 変身いたしまーす 白線の内側に下がってお待ちくださーい 》
「「「「「トッキュウチェンジ!」」」」」
5人の若者を赤、青、黄、緑、ピンクのバトルスーツが覆った。彼らは丸い路線図のようなポーズを決めて。
『勝利のイマジネーション! 列車戦隊トッキュウジャー! 出発進行!』
名乗りを挙げるや、トッキュウジャーはそれこそ連結列車のように一直線に、ライオンインベスへ突撃した。
後書き
ライトが紘汰、カグラが舞と組んだので、残る女子のミオと仲良くしてもらいました(*^^)v
街が見つからない人と、街一つしか知らない人。狙ったわけではないのですがいい対比になりました。
せっかくSPなので初心に帰って咲にはドラゴンフルーツ一本で戦ってもらいました。
紘汰も何度かやった「飛び降りながら変身」も取り入れてみました。
いかがでした?
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