魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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Ep18くろがねの戦鳥 ~AGUILAS~
大空を高速で翔ける5機編成の漆黒の戦闘機隊・エスコルピオン。漆黒の翼が大気を切り裂きながら、なのは達と互角の空戦を繰り広げていた。
「くっそ、速ぇ!」
ヴィータが“グラーフアイゼン”を振り上げながら必死に追いかけるも、複雑な機動のエスコルピオン隊に攻撃を与えることが出来ずに空振りが続く。直接攻撃が出来ないのなら射撃魔法で、という手段を先程から取るなのはだったが、射撃魔法アクセルシューターの速度でも追いつくことが出来なかった。
「私のスピードなら・・・!」
≪Sonic move≫
フェイトが高速移動魔法ソニックムーブで一気に距離を詰める。そして並列したところでザンバーフォームとなっている“バルディッシュ”を振り下ろす。
「AMF!!?」
雷光の刀身がエスコルピオン隊の1機に触れようとした瞬間に消滅した。フェイト、離れていたところで見ていたなのは達の表情が驚愕に染まる。魔力結合を分断するフィールドAMFによる障壁による効果だった。
≪AMF正常稼働を確認。各機、敵戦力の掃討に移れ≫
≪了解。2から5、攻勢へと出ます≫
エスコルピオン・リーダーより全機へと攻勢に出るように指示が出る。背後から高速で迫るシグナムとヴィータを撃墜するためにコブラ軌道を取り、シグナムとヴィータをやり過ごし、前方に六角形魔法陣を展開。漆黒の砲撃を放った。
「うお!?」 「むっ!」
シグナムとヴィータはギリギリで回避に成功。前方から迫る5機のエスコルピオン隊の上へと移動し、すれ違いざまにシグナムは紫電一閃を、ヴィータはギガントフォルムへと変形させた“グラーフアイゼン”を叩きつけた。
しかし、かなりの強度を持っていたAMFによって決定打を与えることが出来ない。「チッ」と舌打ちするヴィータをあざ笑うかのように5機のエスコルピオン隊は一瞬で後方へと距離を開けていく。
「レイジングハート、どこか弱点とかない?」
≪砲撃を撃つ瞬間にもAMFが解除されませんでした。ですが、空気と魔力を取り込んでいると思われる部位にだけAMFがありません。そこを攻撃すればあるいは≫
攻撃の通用しないエスコルピオン隊を見て、なのはは愛機“レイジングハート”へと尋ねると、1つの打開策を提示された。空気と魔力を取り入れる部位――エアインテークのことだとなのははすぐに察した。
『フェイトちゃん、ヴィータちゃん、シグナムさん。前方、空気と魔力を取り込むエアインテークにはAMFが無い。だから・・・!』
『真正面からのガチンコ、か。よっしゃ!』
『了解した。私とヴィータで誘導する。お前とテスタロッサで撃墜しろ』
『『了解!』』
シグナムとヴィータが誘導役を買って出て、すぐに行動に移る。シグナムは“レヴァンティン”をシュランゲフォルムにして、エスコルピオン隊の軌道を妨害するため行動開始。
≪エスコルピオン2から各機。まずは騎士2名を撃墜することを提案する≫
≪エスコルピオン5は2に同意≫
エスコルピオン2の提案に次々と同意していくエスコルピオン隊。そしてエスコルピオン・リーダーが最後に同意し、全機に命令を下す。騎士であるシグナムとヴィータを優先して撃墜せよ、と。エスコルピオン隊は散開し、一斉に2人を狙い始めた。
「シューット!」
――エクセリオンバスター――
「ファイアッ!」
――プラズマランサー――
なのはとフェイトは待ち伏せを知られないために、一定の間隔で砲撃や射撃を放っていくが、エスコルピオン戦闘機を全方位で覆うAMFによって防がれてしまう。
「うぉぉらぁぁあーーーーーーーッ!!」
――ギガントハンマー――
ヴィータが声を上げながら“グラーフアイゼン”を振るい、エスコルピオン隊の1機にすれ違いざまに叩きつける。攻撃を弾いたエスコルピオン3は≪何度やっても同じだ、諦めろ≫とヴィータを諭す。
「やってみなきゃ判かんねぇだろぉがッ!!」
聞く耳持たずといった風に怒鳴るヴィータに迫るエスコルピオン4の漆黒の砲撃。ヴィータはすぐさまその場から離れ、エスコルピオン3はスライスバックで砲撃を回避。そのままシグナムへとロックオンする。
「レヴァンティン!!」
≪Explosion≫
シグナムは自分に敵が向かって来ていることを知り、鞘へと納めている“レヴァンティン”のカートリッジをロード。そして一気に抜き放つ。
――飛竜一閃――
砲撃級の魔力付与斬撃がエスコルピオン3へと一直線に向かい、直撃。そして爆発が起きる。爆煙の中から無傷のエスコルピオンが現れる。
≪無駄な足掻きを≫
憐憫を含んだ機械音声でシグナムに語りかける。シグナムはフッと鼻で笑った後、「やれ。テスタロッサ」と呟いた。
≪Plasma Barret≫
シグナムの背後に控えていたフェイトが手にする“バルディッシュ”が術式の名を告げた。放たれた雷光の魔力弾プラズマバレットが10発、エスコルピオン3のエアインテークへと吸い込まれた。
≪なに・・・っ!?≫
――ソニックムーブ――
フェイトはシグナムの手を引いて、ソニックムーブでエスコルピオン3の軌道上より離脱。そして2人の後方へと高速ですれ違って行ったエスコルピオン3は、強烈な閃光に包まれ爆散した。なのはとヴィータと交戦していた残りのエスコルピオン隊はその光景を信じられないといった風に見ていた。
≪エスコルピオン2から各機。3が撃墜された。どういうことだ?≫
≪リンクからの映像が途切れ詳細不明。各機最大警戒を怠るな≫
≪警戒しろ。単独戦闘は危険だ≫
≪各機、各個撃破へ作戦変更だ。確実に1人ずつ撃墜する≫
エスコルピオン3が撃墜されたことで警戒レベルを跳ね上げたエスコルピオン隊。そして攻撃対象を1人ずつとして戦闘行動を再開した。
「これならいける・・・!」
エスコルピオン3の撃墜成功に、この空戦は勝てると確信したなのは達。そんななのはとヴィータに再度砲撃を放つエスコルピオン・リーダーと2と4。そこに5が参加し、2対4となった。なのはの射撃・砲撃はAMFに弾かれ、ヴィータの一撃も空振る。苦戦を強いられている2人へフェイトとシグナムが応援に向かう。ここで4対4となり、戦況が安定する。
≪思っていた以上に厄介な奴らだ。全機、こうなれば帰還を考えるな。道連れにしてでも撃墜しろ≫
互いに決め手が打てないことに焦り始めたエスコルピオン・リーダーからの捨て身戦法の命令。エスコルピオン隊全機が≪了解≫と即答、機体に負担の掛かりそうな無茶な軌道も平気でするようになり始めた。
「ディバイン・・・・バスタァァァァーーーーッ!!」
ヘッドオンしたなのはが桜色の砲撃をエスコルピオン5へ撃つ。しかしエアインテークには入れることが出来ずにAMFに弾かれた。だが、なのははすれ違いざまにアクセルシューターを右のエアインテークにねじ込むことに成功し、エアインテークが爆発。機動がフラついた5へと、ヴィータがトドメのシュワルベフリーゲンを左のエアインテークに打ち込んだ。
≪やられた・・・!?≫
両エンジンが停止したことで推力を失ったエスコルピオン5は墜落し爆散した。エスコルピオン・リーダーが≪魔導師が我らの弱点に気付いていたとは≫と驚嘆の声を上げた。
≪おのれ・・・! よもや数コンタクトで知られようとは・・・!≫
エスコルピオン4が前面に展開した六角形魔法陣よりマシンガンの如く魔力弾を連射していく。4人は一斉に散開。なのはとフェイトとヴィータは迫るエスコルピオン4に魔力弾を撃ちこんでいく。
≪タネが判れば、貴様らの攻撃など!≫
しかし4は連続ロールすることによってエアインテークへの攻撃を弾く。4に続いてリーダーと2も一斉に攻勢へと移る。常にロール飛行を維持し、エアインテークへの攻撃を完全に無効化していた。味方への誤射をものともしない魔力弾の雨が4人を襲う。
『くそっ。どうすんだ!?』
ヴィータが全力で回避行動をとりながら誰とも言わずに怒鳴るように尋ねる。なのは達も手をこまねいている。バインドで動きを止めるか、とも考えたが一瞬で却下。AMFがある以上バインドを構成する魔力は掻き消される。
≪これで終わりのようだな魔導師、そして古の騎士。大人しく落とされろ≫
エスコルピオン・リーダーが諦めろと言外に告げる。もちろん諦めるつもりもない4人が必死に思考を巡らすも、なかなか良い手が思い浮かばない。そんなとき、なのははふと右手の中指に光る指環に視線を移した。お守りとしていつも持ち歩いている、親友シャルロッテのデバイス“トロイメライ”の指環。
「(力を貸して、シャルちゃん)トロイメライ!!」
なのはは“レイジングハート”を右手に持ち替え、左手に起動した“トロイメライ”を携える。今のなのははさながら騎士のようだ。左手に長刀を、右手に長槍を持つ騎士。フェイトとヴィータとシグナムは、久しぶりに起動している“トロイメライ”を見て無意識に笑みを浮かべていた。
「トロイメライ、ゼーゲフォルム!」
長刀からチェーンソーのような大剣へと変形した“トロイメライ”。なのはは向かって来ているエスコルピオン4にアクセルシューターを連射。フェイトもそれに続いてなのはに近付こうとするリーダーと2にプラズマバレットを連射する。シグナムとヴィータも、フェイトを援護するようにリーダーと2に攻撃を加え始めた。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇッ!」
なのはは迫り来るエスコルピオン4のAMFに、唸りを上げる“トロイメライ”を全力で振り下ろした。カンッ!と短い金属音が響き、エスコルピオン4はなのはの後方へと抜けていった。
≪そんな・・・バka・・・na・・・≫
エスコルピオン4のキャノピーに納められているコアが粉々に吹き飛んだ。“トロイメライ”の一撃はAMFをものともせずに突破、エスコルピオン4のコアを破壊していたのだ。エスコルピオン4はしばらく飛行した後、木っ端微塵に爆散した。
≪やりましたねマスター≫
「うん。ありがとうシャルちゃん、トロイメライ。・・・さぁ次!」
なのははフェイト達と合流、残り2機の撃墜へと動く。
≪何たることだ。栄えある鷲の名を冠する我らがこうも容易く撃墜されていくとは≫
≪エスコルピオン2からエスコルピオン・リーダー。地上部隊にも大きく損害が出ているようだ。このままではこの拠点が落とされてしまう≫
エスコルピオン隊のリーダーと2が4人に攻撃を続けながら、地上で行われている戦闘の状況からオーレリア基地の敗北を危惧する。
――フォトンスマッシャー――
≪しまっ――≫
エスコルピオン・リーダーが地上の戦況をデータリンクで確認したその一瞬、なのはの高速砲・フォトンスマッシャーが、リーダーの右のエアインテークを撃ち抜き爆発、AMFもろとも消し飛ばす。
≪まだだ! まだ終わらんよ!≫
それでもなお飛行するリーダーへのトドメとして、フェイトが砲撃プラズマ・スマッシャーを放った。AMFが無ければもう防御する術は無く、普通に直撃。エスコルピオン・リーダーも爆散、撃墜された。残りエスコルピオン2のみ。しかしエスコルピオン2はすでに終わっていた。
≪残るは私1機のみ!?≫
リーダーの撃墜により戦術リンクシステムに一瞬のエラーが発生。そのエラー解除に用いた2秒。その2秒の間、2はロール機動を停止していた。その隙をもちろん見逃すはずもないなのはとフェイトは、同時に射撃魔法を2のエアインテークに撃ち込んでいた。
≪こんなことが・・・≫
エスコルピオン2はそう言い残し、爆散していった。
『こちらスターズ1。敵航空戦力を全機撃墜。これより地上捜索部隊と合流します』
・―・―・―・―・―・
地味な作戦で何十人という“レジスタンス”を昏倒させたスバルたち地上捜索部隊は、縦穴へと進入し下へ下へと降りて行った。
広大な底へと辿り着いた4人は、工場という名目の空軍アギラス・エスコルピオン隊の射出基地へと近付いていく。そこは天然の要塞のようだった。自然が生み出した絶壁の縦穴の底に建造された基地だ。
『誰も出てこない・・・。地上で昏倒させた連中で全員だったのかなぁ・・・?』
『そうかもね。だってここはほとんど自動運用されているみたいだし』
『幹部たちが居ないということはあまり重要な拠点じゃない、ということなんでしょうか?』
『それを調べるのよ。警戒を怠らないで。慎重に行くわよ』
『『『了解!』』』
ティアナの指揮の下、スバル達は基地内を調査しようとした時、基地の奥の洞窟から「おいおいおいおい」と声が漏れてきた。4人は構えを取り臨戦体勢に移る。
「礼儀を知らないようだな。人様の家に許可なく土足で入り込むとは」
その言葉と同時に洞窟から闇色の炎が噴き上がる。それを目にしたスバル達の心の内に絶望が広がっていく。闇色の炎。それは、シグナムとヴィータとセレスを撃墜したカルド隊の証だからだ。
ガシャガシャッと音を立てながら洞窟の奥から出てきたのは、漆黒の甲冑を身に纏ったカルド隊だった。甲冑の至るところに闇色の炎が燻り、手にする大剣も同様に闇色の炎が燻っている。
「よぉ、騎士エリオ。お前が居てくれてオレは嬉しいぜ」
「グラナード・・・!」
カルド隊だけでなく、巨大サソリ――黒鎧の毒精フォヴニスの頭部に立って腕を組んでいるグラナードも姿を現した。そして最後にもう1人。
「特務六課の魔導師を確認した」
髪色は蒼に近い銀、瞳の色は深紅。蒼銀の長髪は毛先に向かうほどふわりと左右に広がっている。背には三対の翼があり、右側が白翼で左側が蒼翼だった。
「ルシルさん・・・!」
ルシリオンとリインフォースのユニゾン形態“ゼーゲン・リッター”だ。今この場に、6人の“テスタメント”幹部が揃っていた。戦力的にも圧倒的に不利。それ以前に戦いにすらならない。
『ティア、ちょっとヤバくない? これ・・・!』
『ちょっと・・どころじゃないわね。かなり、よ』
『かなり、でもないかと。すごく、じゃないですか・・・』
『ど、どうしましょう・・・!?』
後ずさっていく4人。それを見たグラナードが「待てよ騎士エリオ。騎士が背を向けて逃げんのか?」と名指しで止めた。そんな挑発だと丸判りな発言に、エリオは自らを奮い立たせるように咆哮し、“ストラーダ”を構える。キャロは「エリオ君!?」とエリオの袖を引っ張り、戦おうとしているエリオを止めようとする。
「・・・あなた達に聞きたいことがあります」
ティアナが前に躍り出て、そう声を掛けた。それは時間稼ぎだった。なのは達が来るまでの。闇色の炎が縦穴の上まで達していた。なのは達はきっと気付いているはずだと信じて、ティアナはこの時間稼ぎに賭けた。
「話すことはない。ヴォルケンリッターはどこに居る?」
「こちらの話を聞かないあなた達に話すことはありません」
カルドのフルフェイスの兜から覗く瞳がティアナを貫く。ティアナは逃げ出したい衝動を抑え、話を続けようと懸命に立ち振る舞う。その2人の間に割って入るのはルシリオン。彼は「聞きたいこととは?」と深紅の瞳をティアナに向けた。
「っ・・・あなた達は、管理局に勤めて、そして殉職した元管理局員なんですか?」
「・・・何故そう思う?」
ティアナへとカルド・デレチョが聞き返した。すると今度はスバルがそれに答える。
「アマティスタという人はあたしのお母さんで、アグアマリナという人はティアナのお兄ちゃんだから。それに、グラナードとカルド・イスキエルド。エルジアで2人が見せた素顔は管理局員のデータベースにあった。殉職者として・・・載っていた」
グラナードが「まぁあんな完全に見られたらバレるよな、やっぱり」と手を叩きながら笑った。その様子にキャロが「それじゃあやっぱり」と呟いた。すると顔を隠しているカルド隊は兜を取り、グラナードも自らフードを取った。
「その通りだ。俺たちはかつて管理局に勤め、そして任務中に殉職した亡霊」
ココアブラウンの髪をオールバックにした30代後半と思しき男性がそう告げる。彼はカルド。生前の名はガウェイン・クルーガー。シグナムによってその生を、未来を奪われた局員。
「俺たちはヴォルケンリッターへの復讐のために」
スキンヘッドの二十代後半と思しき男性。彼はカルド・デレチョ。生前の名はジョシュア・エルグランド。ヴィータによってその命を奪われた局員。
「この手で必ず奴らを叩きつぶす」
赤色がかった茶色の短髪に黒色の瞳をした青年。彼は報復せし復讐者の左腕カルド・イスキエルド。生前の名はジータ・アルテッツァ。“闇の書”暴走時に死亡した。
「オレは管理局上層部への恨みとか、未練とかのために」
黒の短髪の二十代半ばの青年。グラナード。生前の名はメルセデス・シュトゥットガルト。死因は公には事故死。
「他の人もそうなんですか?」
「教えるのは自身のことだけだ。さぁこっちは話したぞ。ヴォルケンリッターはどこに居る?」
キャロの質問の即切り捨てるカルド。兜を被り直し、大剣を構えてスバル達へと歩み寄ろうとする。
「我らはここだ!!『スバル! 防火障壁!』」
――シュツルム・ファルケン――
縦穴上空から一筋の光が降ってきた。それはシグナムの愛剣“レヴァンティン”の弓形態シュツルム・フォルムでのみ放てる一撃だ。一直線にカルドの頭上を襲撃し、彼は矢を払うように大剣を振るう。大剣と矢が衝突した瞬間、紅蓮と闇色の炎が爆ぜる。
「マッハキャリバー! ファイアプロテクション!」
スバルはシグナムの念話の通りに防火障壁・ファイアプロテクションでティアナとエリオとキャロを護る。爆炎と黒煙が縦穴内を覆い隠す。煙の中、ルシリオンは風を起こして縦穴内より全ての煙を地上へと出す。
「待たせたな、お前たち」
「コイツらには指1本と触れさせねぇ!」
視界がクリアになったそこには、アギトとユニゾンを果たしたシグナムと、リインフォースⅡと合流しユニゾンを果たしたヴィータが居た。そしてなのはとフェイト、対神秘の戦力として加わったレヴィも一緒に居た。
9対5。喜ぶべきだが、しかし現状それに意味は無い。幹部たちは1人で数人分の力と、なのは達には無い神秘を有しているのだから。
「ははは、来たなヴォルケンリッター!」
カルドの咆哮と同時に彼の甲冑から闇色の炎が噴き上がる。レヴィが「アイツが一番厄介・・・!」と歯がみし、
「ルーテシア、魔力を借りるよ」
“生定の宝玉”へと未だに流れ込むルーテシアの魔力をレヴィは解放。レヴィの身体が神秘を宿し“許されざる嫉妬レヴィヤタン化”する。それを本能的にまずいと直感したカルド隊は、今だけレヴィへと標的を変える。
――慈悲すら許さぬ業火――
カルド隊は一斉に大剣を槍のように突き出し、炎を螺旋状にして撃ち出した。レヴィはなのは達に「他をお願いします!!」と頼み、シグナムとヴィータを引き連れ交戦に入る。闇色の炎がレヴィの張った障壁に衝突。大爆発を起こす。
「キツイ! けど・・・!」
闇色の炎は障壁にヒビを入れ、徐々にヒビが大きくなっていく。ヴィータは「ダメか・・・?」とレヴィを見る。しかしレヴィは「問題無しですっ」と返した。レヴィは障壁によって威力が弱まっていく闇色の炎を相殺するべく神秘の一撃を放つ。
――死は確実――
すみれ色の閃光が障壁もろとも闇色の炎を消し飛ばす。驚愕に染まるカルド隊は、直接大剣で斬り捨てる為に接近してきた。
「ここじゃ思いっ切り戦えない! 外に出ます!」
「ああ!」「おう!」
レヴィはなのは達を巻き込まないために地上へ出ることを提案し、シグナムとヴィータはそれに賛同して縦穴から出て行った。復讐の対象であるヴォルケンリッターが飛び去ったことで「逃すかッ!!」とカルド隊も3人に続いて縦穴から出て行った。
「やっとうるせぇのが行ったな。さて、オレ達も戦おうぜ騎士エリオ」
手うちわで顔を仰ぎながらグラナードがエリオへと視線を向ける。そしてエリオの返答を聞かずにフォヴニスへと砲撃発射の合図を送った。フォヴニスの両ハサミが開き、エリオを中央としたなのは達へと砲撃が放たれようとしたその時・・・
「ぐおっ!?」「がぁっ!?」「ごふっ!?」
上空からカルド隊の3人が墜落して来て、彼らは地面に叩きつけられた。さすがにこれは異常事態だとしてグラナードはフォヴニスに砲撃を中止させる。そしてルシリオンが「何事だ!?」と上空を見上げた。
「まったく」
凛とした女性の声が縦穴に響き渡る。なのは達も空を見上げ、そこに浮遊する女性の姿を見て驚愕に目を見開いた。
「何を考えているわけ? この現代に“魔族”を、しかも幻想一属を引っ張りだすなんて」
その女性は脹脛まであるアクアブルーの長髪を風に靡かせ、アザレアピンクの双眸でこちらを見下ろしている。
白のブラウス、背に三対の翼を携えた葡萄十字が刺繍された黒のベスト、赤いネクタイ。白のプリーツスカートに白のニーソックス。黒のローファーという出で立ち。そして右手には、彼女の身長(推定165cm)と同じくらいの桜色の刀身を持つ長刀を携えている。
なのはは無意識にその女性の名を口にした。
「シャル・・・ちゃん・・・?」
背に真紅の両翼を背負った女性。5年前に別れた親友シャルロッテ・フライハイトがそこには居た。
彼女の周囲にはレヴィとヴィータとシグナムが戸惑いの表情で浮遊している。シャルロッテはゆっくりと降下してきて、“テスタメント”幹部たちとなのは達の間に降り立ち、なのは達へと振り向き、声をかけた。
「あなた達、少しは腕があるようだけど相手が悪いわ。ここは私に任せて、あなた達はここから離脱しなさい。ハッキリ言って足手まといよ」
シャルロッテは、なのは達のことを知らない他人とでも言うように感情の無い声でそう告げた。
後書き
はい、お待たせしました!のでしょうか?
猪突猛進・暴走ノンストップ特急なシャルロッテ・フライハイトの再臨です!が、少し様子が変。シャルの事も含め、次回で色々と真実を明かしていく予定です。
ちなみにテスタメント空軍アギラスの戦闘機のモデルは、ACE COMBATシリーズのファルケンです。
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