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少年少女の戦極時代Ⅱ

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オリジナル/未来パラレル編
  第38分節 終末の光景

『浮い、てる?』


 折れた房はそれそのものが人工衛星のように、ゆっくりと、上方へ向かって浮かび上がっていく。
 それはもはや房というよりは“花”だった。――徒花の大開花。

 緑の枝に白い花が仄かに光り、その花から白い種子が放たれて行く。

(ヤバイ)

 長年培ってきた勘が告げた。月花はカッティングブレードを拳で叩き落とした。

《 ドラゴンフルーツスカッシュ 》

 月花はDFボムを放てるだけ放った。月花と似た予感を持ったアーマードライダーもいたのか、数人が頭上へ向けてそれぞれの得物を投げた。
 それらは白い綿毛に似た種子を爆散させた。

『キャアアアアーーッ!!』

 はっとふり返る。一人のアーマードライダーの肩に種子が付着し、ヘルヘイムの蔦が生え、あっというまにそのアーマードライダーを覆い尽くした。『十戒』のワンシーンのようにざっとライダーの垣が割れた。

 蔦が消え、現れたのは、インベス。

『うわああ!?』
『ヒィイイ!!』

 被害は一人には留まらない。降り注ぐ種子に少しでも触れようものならば、そこからアーマードライダーは次々とインベス化していく。ヘルヘイムの果実を食べていないのに。

(これが戒斗くんの言ってた、最後の侵略なの?)

 全ての種子を防ぎきれるわけもない。種子が付着してインベス化し、またはヘルヘイムの植物の苗床になり、一人、また一人と倒れていく。


『諦めるなっ!! まだ全員がやられたわけじゃねえ!!』


 混乱を極める場にあって、鎧武の声はよく通り、動きを止めたアーマードライダーを叱咤した。

 鎧武はイチゴの錠前をバックルに付け替えた。鎧がオレンジからイチゴに換装されるや、鎧武は空にイチゴクナイを何十本も放った。ヘルヘイムの種子が爆発によって燃え落ちた。

『種子に直接触るな! インベスになるぞ!』

 この混乱した状況で、指針になる声がかけられたか、他社のアーマードライダーで火炎系・爆弾系の者が落ちてくる種子を焼くよう武器を放ち始めた。月花もすぐにDFボムを構え直し、空に投げた。

(やっぱり紘汰くんはスゴイな。みんなが惹かれずにいられないモノを持ってる)

 こんな室井咲でさえ、紘汰が一緒なら何でもできる気がした。紘汰となら絶望を希望に変えられると思った。

『ごめんね』

 聞こえないとあえて知って言葉にした。


 春。お天気のいい日に、桜の散る木の下でお弁当を食べたかった。
 夏。海へ行って水着を見せて、泳ぎを教えてほしかった。
 秋。散った銀杏で敷き詰められた並木道を、腕を組んで歩きたかった。
 冬。同じコタツでぴったりくっついてテレビを観たかった。


(ただの恋人みたいなことを、たくさん、したかった)


 でも現実は、戦いばかり。自分は何度も錯乱しフラッシュバックを起こして紘汰に迷惑ばかり。
 そんな日々が続けば、未来が明るいものだと信じられるわけもなくて。
 自分はいなくなればいいんじゃないか、という思いを止められなくて。


(ヘキサ。大丈夫だよ。今からヘキサが一番だった咲に戻るからね)


 仮面が邪魔だ。紘汰の顔が見たいのに。紘汰に顔を見せたいのに。

『今日まで、ありがとう』

 月花は泣き笑いでヒマワリの錠前を取り出し、開錠した。 
 

 
後書き
 毎日インベスとの戦い戦い戦い。そして恋人なのに紘汰といる時間は甘い男女のそれではなくて。
 最初のほうで紘汰が咲に甘かったのは、彼自身も「ただの恋人みたいなこと」をしたくて、記憶喪失の咲にならそれをしても許されるんじゃないかと思ったからだったのです。

 この種子が放たれるシーン、ウロブッチーの作品を網羅されている方でしたら、何のオマージュであるかはすぐお分かりになると思います。
 その通り、この未来パラレル編はあの伝説の純愛作品をリクペストしていたのです。 
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