| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

オリジナル

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六章


第六章

 彼はだ。ギターを手にして皆に言っていた。まだ開店していないバーの席でだ。
 まだ暗いその席に座ってだ。彼は仲間達に言っていた。
「それでだけれどな」
「ああ、それで?」
「どんな調子だ?」
「難しいな」
 ドレッドは苦笑いで仲間達に話した。
「どうにもこうにもな」
「難しいか」
「そうなのか」
「ああ、難しい」
 彼はまた言った。
「自分で作詞も作曲もやるっていうのはな」
「これまで他人の曲ばかりだったからな、俺達」
「やっぱりそうか」
「難しいか」
「かなりな」
 実際にそうだというのであった。
「もうどんな曲にするか。どんな感じにするか」
「一から十までか」
「わからないんだな」
「何もかもが」
「手探りだよ」
 まさにそれだというのだ。
「完全にな」
「そうか。じゃあ曲できないか?」
「それは無理か?」
「もう」
「いや、できる」
 しかしだった。返答は明るかった。
「確かに手探りで難しいけれどな」
「それでもか」
「いけるんだな」
「これが楽しいんだよ」
 ドレッドは笑顔で仲間達に話した。
「もうな。自分の歌を作るってのがな」
「そんなにいいのか」
「自分の歌ってのは」
「そうさ。俺達の曲だよ」
 彼は今度はこう言った。
「いい曲にするからな。楽しみにしておいてくれよ」
「へえ、どんな曲なんだ?」
「それじゃあその曲って」
「どんな感じだ?」
「それは後からわかるからな」
 ドレッドはここでも笑顔で仲間達に話した。
「できたら言うからな。楽しみにしておいてくれよ」
「ああ、それじゃあな」
「そうさせてもらうな」
「俺達の曲な」
「是非な」
 こうだ。口々に言ってだった。ドレッドがその曲を完成させるのを待つのだった。そうしてそれができた時だ。彼等はだった。
 早速路上で演奏してみた。ライブである。
「じゃあ早速」
「やるか」
「俺達の曲な」
「歌うか」
 こうしてだった。演奏と歌をはじめた。するとだ。
「あれっ、いつもと違うな」
「ああ、アメリカの音楽じゃないな」
「他の国の音楽でもないし」
「フィリピンのこれまでの曲でもない」
「これって」
 彼等を知る観客達はだ。その歌を聴いて口々に言うのだった。マイケル達はそれなりに知られていて固定のファン達もいるのである。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧