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オリジナル

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第五章


第五章

「売り上げは好調なんだな」
「前よりもずっとね」
 笑顔で話すマネージャーだった。二人は今質素な喫茶店でコーヒーを飲みながら話している。その店はというとであった。
 そこはこれまでリーゼント達が通っていたアメリカ調の店ではなかった。教会を思わせる静かな店だった。そこで話をしているのである。
「いい感じだよ」
「前もそこそこ売り上げよかったよな」
「そうだね。けれど前よりもだよ」
「ずっとかよ」
「アメリカはいいよ」
 マネージャーもそれは認めた。
「けれどそれ以上にね」
「今はか」
「そういうことさ。色々な国のものがある方がね」
「特にフィリピンの音楽のが一番いいよな」
「そうだよ」
 その通りだと答えるマネージャーだった。
「本当にね。凄い売り上げだから」
「そうか。やっぱりな」
「ううん、いい感じになってきたんじゃないかな」
 マネージャーは今度はこう言った。
「お店も君達もね」
「俺達もか」
「だから。色々な音楽を知ってね」
「それでなんだな」
「それでフィリピンの音楽も知って」
 またそのことを話すマネージャーだった。
「音楽の幅も広くなったよ」
「アメリカの音楽の幅って凄いんだけれどな」
 リーゼントはコーヒーを飲みながら話した。そのコーヒーもアメリカンではない。フィピリンの濃い独特の香りと味のコーヒーだった。
「それもかなりな」
「それでもだよ。他の国の音楽も知ると」
「余計に広くなるか」
「そういうことだね、やっぱり」
「じゃあ俺達は」
 リーゼントはだ。そのフィリピンのコーヒーを飲みながら話していく。
「今まで偏ってたんだな」
「そうなるね」
「アメリカの音楽ばかりに」
「けれど今は違うね」
「ああ、そうだな」
 それは自分自身でもわかることだった。確かに答えられた。
「今度さ、俺達な」
「どうするんだ?今度は」
「自分達の歌を作ろうって思ってるんだ」
 こうだ。決意した顔でマネージャーに話すのだった。
「俺達の歌をな」
「ほう、そうなのかい」
 それを聞いてだ。マネージャーは喜びの声をあげたのだった。
「それは何よりだな」
「いいっていうんだな」
「いや、そうあるべきだよ」
 これはマネージャーの返事だった。
「君達にはセンスがあるんだ」
「音楽のだよな」
「そうさ。アメリカンもいい」
 これまでのアメリカを追い求めていた姿勢や音楽も否定しなかった。
「けれどそれでもな」
「オリジナルの音楽をやっていくのもか」
「それもいいんだ。というよりは」
「というよりは?」
「それを待っていたんだよ」
 マネージャーは満面の笑顔でリーゼントに話した。
「君達がそうなるその時をね」
「そうだったのか」
「そうだよ。それじゃあ」
「ああ、それじゃあ」
「期待しているよ」
 また笑顔で言うマネージャーだった。
「そのオリジナルの音楽をな」
「ああ、それじゃあな」
 こうしてだった。彼等はオリジナルの音楽を作って演奏することにした。作詞と作曲はだ。ドレッドヘアが担当することになった。
 
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