戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十章
書状の中身×鬼退治の結果
「駿府屋形が乗っ取られた?武田信虎にか?」
「泰能さんの書状ではそうらしいよ。現実に考えて、鞠が空腹になってまで長久手まで逃げてきたっていうのが、状況的証拠になる」
「・・・・かもしれんな。しかし、ふむ・・・・泰能とはまた面白い名前が出てきた」
「傅役の人?何かあるの?」
「正式には朝比奈泰能という。通称、不死身の泰能と言ってな。確か田楽狭間の戦いで頸を討ったはずだが・・・・」
「うわ!何だそれ?頸討ってもまた生えてくるみたいなのかよ!なあ鞠。この書状を書いた泰能は、鞠の知っている泰能なのか?」
「うん!泰能はね、鞠が大変な時は、いつもどこかからか現れて鞠を助けてくれるの!」
忠臣は何度も蘇るという事かな?もしくは泰能は人間ではなく、不死鳥だったりして。それか仙人とか。俺も神だからなのか、24歳になってから歳は停まっているし、いつの間にか不老不死になったもんな。まあ神殺しの毒で、肉体は消滅した事はあるけど、本体は異空間にあるから何度も蘇った。
「さて。鞠とやら。駿府屋形から退去するに際し、どうして小田原ではなく、我を頼った?今川と北条、武田は雪斎坊主が仲介して、甲相駿で三国同盟が成っていたであろうに」
雪斎坊主・・・・・今川義元の片腕。もし雪斎が生きていれば、田楽狭間で討たれたのは信長であっただろう、と云われるぐらいの凄い人。
「泰能がね、東はダメだって言ったの」
「ふむ?どういう事だ?」
「小田原に頼っても、駿府を取り戻そうと動いてくれないって。だから頼ったらダメって言われたの」
「・・・・しかし小田原は元々、今川の被官だったはずであるが・・・・」
「そんなの、お母さんの代で縁が切れちゃったもん」
「ふむ・・・・確か花倉の乱での確執だったか。なるほど。それで西か。・・・・しかし義元公亡き後、岡崎を頼る手もあったのではないか?」
花倉の乱・・・・・今川家のお家騒動。今川義元とその姉・玄広恵探が戦った、家督争いの事。
「泰能が葵ちゃんの所もダメって言ってたの。葵ちゃん、何を考えてるか分からないって。・・・・泰能、葵ちゃんの事が嫌いだったみたい」
「ふふっ、まぁ言いたい事は分かるが」
「やっぱりそうなのか?あの葵は?」
「そういう傾向があるというだけだ。それに家臣の一部がその気になっているというのもあろう」
「三河武士は総じて面倒な人が多いですからね」
「面倒ねぇ。あいつがそうなのかもな、悠季って奴。何か知らんからムカついて覇気や殺気を解放したり、俺のハリセン喰らわしたりした。主に俺に対して失礼な事だったか」
「確かにそうでしたね。偉そうな事を言い出したら、脅してましたものね。案外綾那さんも面倒かもしれません」
「そうだな、・・・・女は見た目では分からない」
「ふふっ、よく分かってるじゃないか一真。話は分かったが、なぜ織田に来たのかが分からん」
それについては、書状を見れば分かると言った後に見た久遠。俺的な解釈で書状の内容は。まず駿府屋形で起きた異変に、そして信虎が乗っ取られた経緯と今川家終了宣言。まあ滅亡って言った方がいいかもな。鞠を連れて逃げた後、周辺諸国を見た時、鞠のためになりそうな勢力がいなかったからだ。北条は動きが鈍く、守勢の国であるから駿府を取り返すために力を貸せないだろう。松平は元家臣であり有能であるが、独立した以上、今川への意趣があるかもしれない。それに鞠を担ぎ上げて、東三河、果ては駿府まで己の物にする可能性が高いから鞠を任せるのは危険極まりない。
つーか、あいつ嫌いだしとか書かれていた。あと武田など以ての外。海を欲するが故に、必ず鞠を利用して、駿府を自分の物にしその後、鞠を処分するだろう。その点、織田は、田楽狭間の戦いがあったとはいえ、織田が勝利している時点で、今川への意趣返しはないだろう。また美濃を制圧した勢いもあり、駿府を取り戻すために動く可能性は十分高い。この書状を大義名分にした上で、鞠を担いで駿府を取り戻す形は、松平と同じであるが、現当主・信長が駿府をうまく治めるために、鞠を悪いようにしないだろう。うつけと呼ばれていた信長ではあるが、中々骨もあるし、美濃を制圧した手腕は並のモノではない。まぁ、これだけ賞賛したんだから、鞠を大切にしないと呪って祟って殺っちゃうぞ?というのが、おおまかな意訳満載の書状内容だ。
「全く、今川家というのは、上も下も、総じて居丈高なものだ」
「上から目線と言うより、呪うって事が満載だけど、言っている事は間違いないかと」
「そうだな。織田に目を付けたというだけで、朝比奈がどれだけ情報を集め、分析していたのかが分かる。我をうつけと侮りたい者が、まだまだ多い今の状況で、ここまで冷静に分析しているのは評価出来るな」
敵だった人に評価されて嬉しいのかな?久遠が珍しい事を言っている。
「で、鞠の事は、俺は保護したいと思う。今は上洛と越前の戦が先だからな、駿府を取り戻すのは、随分後半になるが鞠には我慢してもらう事になるけど」
「鞠は構わないの。国を追われて流浪人になった今、鞠、ワガママ言わないよ?」
「ふむ。鞠とやら。お前は何が出来る?」
「出来るって?」
「働かざる者食うべからずと言ってな。お前は駿府のお屋形様ではなく、一人の武士だ。ならば食い扶持は自らの手で稼がなければなるまい?銭や米を手に入れるために、お前は何を代価とするのか」
と鞠は考え出した。この子は意外と聡明で物分りが良い子だからな。
「んとね、鞠、一真の部下になるの!鞠ね、鹿島新当流皆伝だよ!あとね、幕府のれーしきとか作法とか、そういうの、全部知ってるの!本当は護衛の方がいいかなって思ったけど鞠より強いから!」
「なるほど。それで部下、か」
「うんなの!」
「詩乃、どう思う?」
「典礼に通じる者が居れば、外交で侮りを受ける事も無くなり、一真隊の行動範囲・・・・簡単に言えば、出来る事が飛躍的に広がります。私を含め、一真隊は礼式などに疎い者ばかり。鞠様のように人材を得られれば、一真様の力となりましょう。向後の事を考えれば、適材を得、適所に配置するのは一真隊にとって良い事かと」
「デアルカ。・・・・分かった。一真」
「うん?」
「鞠の面倒は一真が見ろ」
「分かった。けど、俺の部下になるという事は、前線に行く可能性もあるけど、いいのかな?」
「適材でしょう。私は頭脳労働専門の軍師でころは部隊指揮、ひよは兵站や隊の運営。・・・・となれば、一真様の背中を守れる者がおりません。鹿島新当流と言えば、剣豪として名高い塚原卜伝によって生み出された最上級の兵法。確か一葉様も卜伝様より皆伝を受けていたかと思います」
「一葉もか、じゃあ鞠もそれぐらい強いって事か」
「さて。それは何とも」
「あれー?皆一葉ちゃんの事知ってるの?鞠、最近全然会ってないのー。元気にしてるかなー?」
「鞠、一葉の事を知っているの?」
「うん!一葉ちゃんは鞠のなの!それに新当流ではお姉ちゃん弟子になるんだよ」
「そうか。今川家は確か足利宗家の親族、吉良家の流れであったな」
「そうなの!」
「御所が絶えなば吉良が継ぎ、吉良が絶えなば今川が継ぐ・・・・と言われる名家ですからね。今後の一真隊に、とてつもなく箔が付く事でしょう」
箔か、それがあるだけで、名が知れるし。名が知れたら、相手は恐れて無駄な戦いは回避できる。
「という事で、鞠は一真隊で面倒を見よう。俺と一緒に戦う覚悟はあるかい?」
「覚悟、あるの!鞠を助けてくれたの一真に尽くして、その恩を返すのが武士なの!それが今の鞠がしなくてはならない事なの!」
「その覚悟聞いたよ。歓迎するよ鞠。一真隊の頭は俺だから、指示を出したりした時はちゃんと言う事を聞くって約束出来る?」
「もちろんなのー!」
「よし。ではこれで鞠は一真隊の一員だ。これからもよろしくな」
「うん!」
「あとで、他の仲間にも引き合わせるよ」
「えへへー、楽しみなのー♪」
はしゃぐ鞠の姿に、皆が一様に微笑みを浮かべる。やがて、一通りの話が終わった頃。
「一真。鬼退治を繰り返してみて、どうだった」
いつもより真剣な表情を浮かべた久遠。恐らく、鬼について詳しく聞きたいんだろうな。
「エーリカの予想もあながち大袈裟って訳ではないがな」
俺は今まで出会った鬼の事を細かく詳しく説明した。鬼の生態や能力などもね。
「・・・・そこまでのものか」
「単体は楽勝ではあるが、複数でそれも統率が取れたら、いくら森の二人であっても勝てるかどうかだ。黒鮫隊は完全に対鬼戦に関して頭に叩き込んでると思うし」
「うむ。黒鮫隊の事は信用しているが、越前が心配だな」
「織田勢と浅井勢、それに松平勢。・・・・かなり大規模な軍勢になる。出来るなら黒鮫隊はあまり出したくないが、武士だけで勝てるかは分からん」
「しかしやらねばならん」
その言葉は何度も聞いている。それに、俺の力やブラック・シャーク隊の力も、合わせれば恐らく大丈夫だろう。こちらには、現代兵器にISに対ドウター戦によるMSも毎日整備をしている。今は俺のストフリとジンクスⅣが10機にサバーニャとケルディムが1機ずつ、ハルートは3機とインフィニットジャスティス1機ある。
「そうだな。それに俺は全力で支えるからあまり気にするな」
「うむ。分かっている。とにかく打てる手は全て打つつもりだ。一真・・・・力を貸してくれ」
「無論だ!」
久遠の言葉に力強く答えてはみたが、国産の鬼ばかりだったらどうしようかね?トレミーでは、イエローかレッドだと戦闘態勢に入るしな。それに俺は神だしな。未来を切り開いてほしいのは、俺ではなくこの世界の人間がしてほしい。だけど世界が崩壊=破滅の道になったら久遠達を保護して拠点にて生活してもらう。それにここで退いてしまっては、日本中が鬼の世界になるかもしれない。
「久遠、越前の後はどうするか考えている?」
「越前の鬼を根切りにした後は、畿内に包囲網を布き、鬼を閉じ込める。その後は、長尾や武田に共闘を持ちかけてみるつもりだが」
「武田は分かるけど長尾って?」
「越後の長尾だ。長尾景虎と言う」
長尾景虎って、上杉謙信だったな。確か。
「越後に、武田ねー。武田は強いのか?」
「兵馬ともに精強であり、勇将知将を数多く抱えている。日の本でも随一の強国だ。越後も同じく、兵強く、国力も高い。それに当主である長尾景虎は、周辺諸国に戦の天才と恐れられている」
「ふむ。どちらも強そうだな。果たして力を貸してくれるか問題だな」
「うむ。だが・・・・」
「強いところが、わざわざ織田と手を組む何て選択はないだろう」
「そういう事だ。手を組むのならば何かしらの工作が必要になるが・・・・」
「何も閃かない?」
「いくつか考えている事はある。が、今はまだ決心が付かんのだ」
「まあいいよ。今は保留と言う事で、無理に出すと現状打開できないし」
「・・・・確かにそうだな」
俺の言葉に同意したのか、苦悩に満ちた表情を緩んだ。これで肩の力も抜いたのだろう。落ち着くようにこの部屋には、癒しの力を出している。皆は気付かないように。
「それで松平勢との評定はどうするんだ?」
「旅の疲れもあるだろうから、しばし休んでもらう。その後に大評定を開き、出陣までの手筈を詰める事になるだろう」
「眞琴と一葉には?」
「既に早馬を出してある」
「そうか、いよいよか。楽しみだぜ」
「うむ。まずは京。そして越前。・・・・ザビエルとやらの野望を潰し、日の本にいる鬼を一掃する。力を貸してくれ、一真」
「当然だ。そんじゃ、今日は一真隊の出陣準備の仕上げがあるから、長屋に戻る」
「あ・・・・もう行くのか・・・・」
「仕事があるしね。けど何かあったら呼んでな」
「分かった、頼りにしてやろう」
「おう。それじゃな」
と言って俺達は、部屋を出て玄関に行った。そしたら結菜が、もう帰るのかと聞いてきたけど。
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