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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十章
  美濃へ帰還

「よくぞおいで下さいました。織田家家老を務める、柴田権六壬月、葵様のお迎えに参上仕りました」

「同じく家老、丹羽五郎左衛門尉麦穂。僭越ながら松平衆のご接待を仰せ仕りました。何事もお気軽にお申し付け下さいますよう」

「明智十兵衛エーリカと申します。此度は我が殿、上総介より蔵人佐様のご接待を仰せつかりました。何事もお申し付け下さいませ」

蔵人佐・・・・・律令制下の令外官の一つ。官職名。

「これはこれは・・・・名高き鬼柴田と米五郎左殿が、私のような田舎者を出迎えて下さるなど恐悦至極。葵は何と果報者か」

感動した体で応えた葵が、ゆっくりと頭を下げる。

「しかしながら、織田殿の下に異人が居られるとは初耳です。しかも日の本言葉が大変お上手でいやはや、驚き申した」

「我が母は美濃明智庄出身で、明智光安様の妹。幼き頃より日の本の武士として教育されておりました。此度、様々なお導きにより、織田殿の幕下に入る事となった次第。蔵人佐様、以後お引き回しの程を」

「相分かり申した。こちらこそよろしくお願いします。三河岡崎城主、松平次郎三郎葵。柴田、丹羽、明智がお三方。何とぞよしなに」

「「「はっ」」」

「上総介は評定の際にご挨拶させて頂くとの事。今宵はひとまず御宿に案内仕る」

「痛み入る。・・・・綾那」

「はいです!」

「兵の差配は任せます。丹羽様の言う事をちゃんと聞くのですよ」

「お任せなのです!」

「歌夜と悠季は、久遠様と評定の前に、私と共に明智殿のお話に同席を」

二人とも返事をした。そしてそれぞれは行動をした。接待の仕方が決まっているんだろうな。麦穂やエーリカはそれぞれの役割を果たすために葵達と共に消えた。

「ふぅ・・・・こういう仕事は肩が凝るわ」

「とりあえず、お疲れさん」

「うむ。時に一真様。お出掛けになるのはよろしいのですが、久遠様にはちゃんと伝えておいて下さいませ。大層、心配しておいでだった」

「分かってるよ。というか気付いていたんだな」

「織田随一の騒がし屋である、森の連中と連んでいたら、そうもなりましょう」

「そうか。後で謝っておく」

「で、本題だが、鬼はどうであった?」

「やはり気になるか?まあ森親子と一緒に血祭りにしてあげたけど、笑いながらやっていたとな」

「今後、戦うであろう敵の事は、知っておきたいが。そうか血祭りか、まるで戦闘狂が増えたみたいだな」

「それは半分分かっているつもりだ。知ってる範囲で教えるとだな」

今まで出会った鬼達の事を簡潔にそして詳細に話した。国産の鬼についてもだけどね。

「なるほどの。国産の鬼とやらは、それ程の強さを持っておるのか」

「まあな。国産の鬼が大量発生したら、エーリカの言う通り、この国の人達を根絶らしにされるよ」

「そうなる前に・・・・」

「ザビエルを倒して、鬼を駆逐するしかないと思う」

「そのための上洛。そしてそのための越前討ち入りか」

「足利将軍という錦の御旗を手に入れて、周辺諸国に協力を要請する・・・・その流れは正攻法だと思う」

「ふむ、何か心配事でもあると?」

「独立独歩で勢力を築いてきた大名達が、名だけあって実のない足利将軍の言う事を、素直に聞いてくれるかな?とね。それも鬼の出現がまだ少ないかもしれない、畿内以外の大名が」

「ふむ。一理あるな」

「だが、言う事聞かなければ俺達の部隊で全力を持って退治したいと思う。それか神の名のもとに言う事を聞かせるかとか」

「まあそうだな。黒鮫隊の実力は分かっている事だが、一真様の御姿を見せれば言う事を聞くかもしれんな。仮にも一国の主が相手だが・・・・」

「そうだな。一真隊の皆の命も預かっているんだし、一人で背負い込む必要無いだろう?」

「そうだ。一真様は織田家の一員。だから一人で悩む必要はないぞ」

「分かっているさ。これでも軍の司令官なんだ。上司が部下の悩みも聞かないような者でもないから」

と言ってから、壬月はまだ仕事があると言って見送った。その後、俺は詩乃と鞠を連れて久遠の屋敷に向かった。

「ただいまー。結菜いるー?」

「あらお帰り。いつ帰ってきたのよ?久遠、心配してたんだからね」

「まあそうだろうと思っていたけど、帰ったのはついさっき」

「そう。それで今日はどうしたの?いつもなら長屋の方に行ってるはずなのに」

「今日の要件なんだが、急用でな」

「急用?何それ」

キョトンとした結菜に、俺は鞠の一件を詳細にして伝えた。

「氏真って・・・・久遠が討った義元公の娘よね?」

「そういう事。鞠、ちょっとこっちに来て」

「はいなのっ!えへへ・・・・鞠なの!こんばんはお姉ちゃん!」

「こんばんは、鞠ちゃん。・・・・この子が?」

「うむ。この子が今川彦五郎氏真。通称・鞠。出会ったきっかけは、さっき話した通りだ」

「・・・・??」

「こちらは織田久遠の奥さんで、俺の恋人でもある、帰蝶さんだよ」

「帰蝶?初めましてなの!」

「初めまして。通称は結菜だから、そう呼んでね。私も鞠ちゃんって呼んで良いかしら?」

共に自己紹介をした後に鞠をどうするかと聞かれたら、俺は保護と言った。久遠には何と説明するの?と聞かれたから、傅役の人から書状を預かってると。

傅役・・・・・家庭教師、お世話係など、いろんな意味を持つ。

「ところで久遠は?」

「ああ、久遠は部屋であなたの事を待っているから」

「じゃあ、入るか」

結菜に先導されて、久遠が待つ部屋に行った。

「お帰り。・・・・鬼退治はどうだった、一真」

「楽しかったし、良い経験になったよ。あとごめんよ。黙って行ってしまって」

「そうか。だが、森のと一緒だから、あまり心配はしてなかった。ところで今日はどうした?見知らぬ顔がいるようだが」

さっき結菜に説明したのと同じように説明した。それと共に、鞠から預かっていた傅役の人の書状を久遠に渡した。 
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