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少年少女の戦極時代Ⅱ

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ヘルヘイム編
  第19話 7分の6の現実 ③



 ヘキサと咲が向かったのは、街の真ん中に架かる歩道橋の上だった。
 クラックがあるであろう場所は、工事現場を装って通行止めにされていた。

「ここ?」
「うん、まちがいないわ」

 ヘキサは地図アプリを終了してスマートホンをコートのポケットに入れ直した。

「ユグドラシルの奴ら、どっから見てんだろーね」
「――、あっちかな」
「またヘキサのカン?」
「なんとなくだけど、そんな気がする」
「ヘキサが言うんならきっとそーなんだろーねっ」

 ヘキサは()()()()()気になった方向に軽く手を挙げて微笑んだ。これで本当に貴虎が観ていたら、自分が地上にまだいると伝わるだろうが、果たして――

 そうしてからヘキサは、欄干に足をかけていた咲に並んだ。

(そういえば咲と二人きりってひさしぶり。いつもリトルスターマインのみんなでいっしょにいたから。みんながイヤとかじゃないんだけど。でも、ちょっとうれしい、かな)


「学校の屋上とかもだけどさ、こういう高いとこにいると、空がちょっとだけ近くに感じるね」
「そうねえ。わかる」
「あーあ。空飛べたらなあ。てか今なら飛べそう? な気がする~♪」
「どうしたの、急に」
「昔の歌詞にあったんだって。君がいれば空も飛べる~、みたいな」
「咲がわたしを抱えて飛んでくれるの?」

 ポップな絵面しか想像できなくて、ヘキサはついくすり、と笑った。

「やれるもんっ。ヘキサがいっしょならそれくらい」

 咲がぷう、とほっぺたを膨らませた。女子の自分が女子に向ける感想ではないが、かわいい。

「――紘汰くん、だいじょうぶかな」

 咲が見やったのは、クラックがある一画。

 光実からのメールに、紘汰はヘルヘイム側でインベスを食い止めてあると書いてあった。すぐ手が届く場所で葛葉紘汰は戦っているのかもしれないのだ。咲が紘汰の身を案じてもしようがない。ヘキサはそれを少し寂しく思う。

「今からでも葛葉さんのとこに行く?」
「行かない」

 シークタイムゼロだった。多少は答えに詰まるだろうと予想していただけに、意外さを隠せなかった。

「あたしが今いたいのは、ヘキサのとなりだから」

 心臓が一つ大きく跳ねるくらい凛々しいまなざしが、ヘキサを射抜いた。

「ヘキサだってコワイでしょ。いつバクハツしちゃうかわかんない街にいるの。だからあたしがヘキサのそばにいてあげる。こういう時はヘキサのそばにいるって、あたし、決めてるもん」
「……ありがとう」

 ヘキサは改めて咲と手を繋ぎ、遠い空を仰いだ。


 見上げた先のユグドラシル・タワーで、リングは不気味なほど静かにゆっくりと、回る。 
 

 
後書き
 まさにその方向ですヘキサさん。
 監視カメラを観て兄さん、光実が龍玄だと知った時と同じくらいびっくりしたという、自分の中ではそういう想定です。
 ちなみに咲が話題にした曲は作者の中ではス/ピ/ッ/ツ/の「空/も/飛/べ/る/は/ず」ですが、読者様方は自由にお好きなBGMを当ててください(*^_^*) 
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