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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS戦術解説
  砂漠戦①


——地上における極地である、砂漠地帯でのMS戦——

 砂漠というと「砂の海」のような印象を持つことが多いが、実際の砂漠は岩肌が露出した乾燥地帯が多く、サハラ砂漠やゴビ砂漠などに見られる砂の大地は、砂漠地帯全体の数割にも満たない。

 それでも、かつて連邦議会が置かれていたアフリカのダカールが砂漠化への道を辿ったことからも理解できるように、旧世紀以降、地球上の砂漠地帯は確実に広がっている。

 砂漠地帯はその特殊な環境のため、戦力の空白地帯となることが多かったが、砂漠に対応した兵器の拡充も促した。この結果、ジオン公国を始めとする地球侵攻を目指した勢力も砂漠での運用能力に局地戦用MSの開発を行い、MSを投入した砂漠戦が発生することとなった。

 MSによる砂漠戦での最大の問題は、地球上におけるMSの主要手段である「脚部を用いた歩行」による機動性が、砂地独特の軟弱な地盤によって大幅に低下することである。

 人間であっても砂地を歩く、走るといった行為は足腰に大きな負担を掛けることから、黎明期においては全備重量が80tを超える機体もあったMSは、接地圧の問題から簡単に砂中にスタックしてしまった。

 この状況をさらに悪化させたものが、砂そのものの存在である。戦車砲弾をも跳ね返すMSの装甲も完全無欠ではなく、関節ユニットやカメラ・システム、吸気/廃熱ダクトなどが設置されている隙間から砂が入り込み、稼働不良やオーバーヒートを引き起こす原因となった。

 また、上述の砂漠独特の歩行性能の低下が、関節ユニットへの負担に直結していた。そのために砂の関節部分への侵入は関連パーツの摩耗を促進し、整備性の低下を招くこととなった。

 それでも、砂漠地帯に対応したMSの出現によって、MSは砂漠でもその威力を発揮するようになった。軟弱な砂地を滑空するホバー走行システムや接地圧を下げる増加装備、さらには関節/ダクトの密封構造による戦砂能力を持った局地戦用MSは、その機動性を用いた一撃離脱戦法や隠密性を生かした奇襲攻撃を実施、MSは砂漠においても「最強の起動兵器」として君臨したのである。

 特にMS-09(ドム)に代表されるホバー走行による一撃離脱は、砂地に直接接地しないために絶大な機動性を発揮し、砂漠戦におけるセオリーとなった。また、MS-06D(ザク・デザートタイプ(ディザート・ザク))やMS-07B(グフ)など、ホバー走行能力を持たない機体は、砂の中に潜行に、敵機にアンブッシュを掛ける奇襲を実行し、軟弱地形を利用した戦法を編み出したのだった。

 だが、一年戦争中期以降に出現したサブ・フライト・システムや、ホバー走行能力の一般化、MSの大幅な軽量化に伴う接地圧の低下は、防塵機能以外の特殊装備なしでの砂漠戦を可能とした。MS関連技術の向上により、砂漠は「局地」ではなくなっていったのである。



——特殊環境下におけるMSの運用——

 砂漠がいかに特殊な環境であるかはこれまで述べてきた通りである。そのため作戦や戦域が限定されていない限り、砂漠用MSが通常の部隊に配備されることはきわめてまれである。通常の陸戦用MSなどでも砂漠での任務に対応しているが、防塵処理などの問題から、整備性が著しく低下するうえ、稼働率が低下するなどの問題を抱えている。

 MSの多機能化と一部の例外を除き砂漠用MSは姿を消すが、それでもなお、砂漠は水圏同様、MSにとって過酷な環境であることは変わりなく、それを味方につけたものこそが砂漠での戦いを制するのである。


■砂漠における汎用MSの運用法

 汎用MS(この場合は陸戦MSも含む)を砂漠で使用する場合、仮設部分やエア・インテークなどに防塵処理を施す必要がある。

 一年戦争時には地球連邦軍極東方面軍所属の第08MS小隊が砂漠地帯での任務にあたり、RX-79[G](陸戦型ガンダム)の関節部などに砂除けカバーを装着するなどの防塵対策を行っている。しかし、これは万全ではなく、所属のMSは作戦予定地に着くまでに数度に渡り、パーツを交換しなければならなかった。


■「砂」を利用した戦闘法

 砂には、水がビーム兵器の威力を軽減するといったような特殊な効果は望めない。しかし、前述のように身を隠す障害物となるだけではなく、敵に砂を吹き付け目くらましとするケースもわずかだが確認されている。





補足事項

——砂漠での戦いにおける指揮管——

 砂漠での戦いは陸戦の中でも特殊な戦術が必要とされ、さらにそうした戦術に秀でた指揮官を輩出した。その多くはジオン公国軍の軍人で、一年戦争時にアフリカ大陸に展開していた部隊を指揮していた。戦後、彼らは各地に潜伏すると共に連邦軍に対するゲリラ活動を継続していた。

 彼らは砂漠用MSなどを装備していただけでなく、砂漠の特性を最大限に活用することで戦果を挙げていたのである。


●ロンメル

 ジオン公国軍の中佐で、「砂漠のロンメル」とも呼ばれる。一年戦争時にアフリカに降下した部隊の指揮官で、戦後は砂漠の町に潜伏していた。ネオ・ジオンの地球降下に呼応して決起、付近で活動中であったガンダム・チームと戦闘を行った。


●ノイエン・ビッター

 キンバライド基地の指揮官で、階級は少々。活動地域は完全な砂漠地帯ではなく、東アフリカのサバンナ地帯であったため、一年戦争中に中東へと脱出しようとした部隊を糾合していものと考えられる。部隊はドム・トローペンなどを装備していた。
 
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