ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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桐ケ谷家
あれから二週間、和人と俺の会話が続いた。年越しと共に俺は退院し親父と共にパワードスーツの開発に励んでいた。
そして1月17日、目覚めてからちょうど二ヶ月が経った。
俺は一人電動車椅子に乗り、一軒の家を目指していた。
「確かこの辺・・・って、あれ?」
俺は電動車椅子の速度が遅くなったのを感じた。
どうやらバッテリーが切れそうなようだ。
「やべ、充電しとけばよかったな・・・」
今は坂の途中、こんなところでバッテリー切れにでもなったらたまったもんじゃない。
そんなとき後ろから声が聞こえた。
「あれ、雪羅君?」
振り返るとそこにはジャージを着た少女がいた。
「ああ、直葉ちゃん」
竹刀を携えたこの少女は桐ヶ谷直葉、和人の妹である。
和人と出会ってからすぐに紹介された中学生であり、剣道はかなりの実力だと聞く。
「どうしたの?」
「ああ、車椅子のバッテリーがな。コイツを使ってもいいんだけどな、これもバッテリー食うから」
俺は自分の足に取りつけてある機器をコンコンと叩く。
あれから改善、実践を繰り返し、完成に近付きつつある《パワードスーツプロジェクト》
俺はそのテスト生として、活動している。
「押そっか?」
「すまんな、頼む」
車椅子の電源を切り、手動に切り替え直葉ちゃんに押してもらうことにした。
「今日はどうしたの?」
「直葉ちゃんに会いに来た」
「えっ!?」
直葉ちゃんは顔を赤くして驚いていた。その姿はとても面白く、吹き出してしまった。
「ハハハ!冗談だよ!いや、ある意味冗談でもないか、和人の家に行くんだし」
「もう、雪羅君ってもしかしていじめッ子?」
「さあ、どうかな?」
桐ヶ谷家の目の前に来ると和人が迎えてくれた。
「よう、雪羅!スグと一緒だったのか」
「ああ、そこでな」
「そうか、てゆーかスグ、何で顔赤いんだ?」
「な、何でもない!あたし、もう行くね!」
そう言って直葉ちゃんは家の中に入っていった。
「どうしたんだ?」
「さあ?それより和人、頼む」
「おう、了解」
俺は和人に中に入れてもらうとリビングに案内された。
「どうだ、足の方は?」
「相変わらずだよ、プロジェクトの方は順調だけど」
「そうか・・・」
「しょうがねーよ、医者からも完治は難しいって言ってたし・・・。だからコレがある」
俺はPSに手を置く。白く塗装されたそれは、まだ試作段階のものでこうしてたまに起動させて運用テストをしている。
「・・・てい!・・・やあ!」
「直葉ちゃんは朝稽古か?」
「ああ、毎日の日課だよ」
「へぇー、全中ベスト8だっけ?凄いよな・・・」
「ああ・・・本当に・・・」
そう言っている和人の顔は何処か悲しげだった。
「・・・直葉ちゃんのこと、まだ気にしてるのか?」
「まあな、努力はしてるんだけど・・・」
「そうか・・・和人、そこの水、取ってくれるか?」
俺はテーブルのに置いてあるペットボトルに入った水を指差した。
「えっ?ああ、ほいっ」
「サンキュ」
俺は水の入ったペットボトルを持って直葉ちゃんのいる縁側に向かった。
「せいっ!」
直葉ちゃんは竹刀を降り終わると息を整えた。
「直葉ちゃん!」
「ふぇあ!!」
直葉ちゃんは随分と間抜けな声を上げた。
「だ、大丈夫?」
「えっ!?ああ、うん・・・」
「はい、水」
「あ、ありがと・・・」
水を受け取った直葉ちゃんは縁側に座り水を飲んだ。手元に置かれた竹刀を見て俺は直葉ちゃんに尋ねた。
「ねぇ、その竹刀重い?」
「真竹だから重いはずだけど・・・」
「ちょっと貸して」
俺は直葉ちゃんから真竹の竹刀を受け取ると片手で軽く振ってみる。
するとある違和感に気付く。
「・・・軽ッ」
「えっ!?うそ!?」
「家にある竹刀よりは軽いかな・・・1.2キロ程・・・」
ボソッと呟いたその一言に直葉ちゃんは愕然とした。
「に、2キロ!?」
「おお、いい反応!」
「いや、そうじゃなくて!」
「まあ、確かに居合い用の刀は900gあるからな・・・十分重いか・・・」
「お前、一体なんつーもん振ってんだよ・・・」
そう言って和人も竹刀を振ると、
「確かに軽いな・・・」
「お兄ちゃんまで!?」
「いや、イメージというか、比較の問題というか・・・」
そう言って和人は先ほど直葉ちゃんが飲んだペットボトルに口をつける。
「何と比べてるのよ・・・」
直葉ちゃんはボソッと呟いた。
水を飲み終えた和人は直葉ちゃんにある提案をした。
「なあ、ちょっとやってみないか?」
「やるって・・・試合を?」
「おう」
「ちゃんと防具つけて・・・?」
「うーん、寸止めでもいいけど、スグに怪我させちゃ悪いからな。じいさんの防具があるだろう、道場でやろうぜ」
「ほーお、ずいぶんとブランクがあるんじゃございません?全中ベスト8のあたし相手に勝負になるのかな~?それに・・・」
最初はニヤリとしていた直葉ちゃんは表情を改めた。
「体のほう、大丈夫なの・・・?無茶しないほうが・・・」
「ふふん、毎日ジムでリハビリしまくってる成果を見せてやるさ」
和人はにやっと笑うと空になったペットボトルを握り潰した。
「なら、俺もいこう。二人の試合を見させてもらうとしよう」
「了解、んじゃ行くか!」
俺は和人に連れられて母屋の東側に来た。そこには小さな道場があり、直葉ちゃんも毎日そこで稽古に励んでいる。
道場に一礼して入ると手入れが行き届いていることが見てとれる。
「ここは毎日直葉ちゃんが掃除を?」
「うん、たまにお兄ちゃんもしてくれるけどね」
「そうか・・・」
直葉ちゃんは胴着に着替え、和人もサイズの合う胴着を見つけたらしく胴着に着替えた。
「さて、一本勝負でいいか?」
「ああ!」
「うん!」
「よし、では・・・」
俺は手を上げた、そして。
「はじめ!!」
降り下ろすと同時に二人は間合いを詰めた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
試合は短時間で決着がつき、直葉が和人がバランスを崩したところに面を打ち込んだ。
「そこまで!」
和人は数歩ふらつくが、なんとか踏みとどまる。
「だ、大丈夫、お兄ちゃん!?」
「・・・いやぁ、参った。スグは強いな、ヒースクリフなんか目じゃないぜ」
「・・・ほんとうにだいじょうぶ?・・・」
「おう、終わりにしよう」
和人は竹刀を左右にひゅんひゅんと振ると背中に持っていった。
直葉はその姿を見て、
「あ、頭打ったんじゃ・・・」
「ち、ちがう!!長年の習慣が・・・」
そんな風に会話していると試合を観ていた雪羅が近寄ってきた。
「いやいや、お見事!流石は全国ベスト8!!」
「そんなことないよ、お兄ちゃんも中々強かったよ!」
「ときに直葉ちゃん、まだ体力は余ってるかな?」
「え?うん、まあ・・・」
「そう、なら・・・」
そう言って雪羅は近くにあった竹刀を手に取る。
「俺ともやってくんない?試合」
「えっ!?」
「お前、本気か!?」
「ああ、本気」
「でも雪羅君、足・・・」
直葉は雪羅の足を見る。雪羅自身足が悪いことくらい本人も分かっている、普通なら無理である。
そう、普通なら───。
「忘れた?俺は今、コレ付けてるんだけど?」
そう言って雪羅は自身の足に付けている機器を叩く。
「起動実験も兼ねて試したい、いいかな?」
「う、うん・・・」
「まあ、別に起動しなくてもいいんだけどなー♪」
雪羅は意地悪な顔をして直葉に言った。
「なッ・・・!」
「さぁ、やろうか!」
雪羅は和人の祖父の胴着を借り、面を被る。そして、直葉と向き合う形に移動する。
「これよりパワードスーツ、試作三号機《アクア》の可動実験を行う。《アクア》、起動!」
そう言って雪羅はアクアのスイッチを入れる、そして立ち上がる。
「おお・・・」
「すごい・・・」
二人はただその姿に感動した。雪羅は屈伸などをして機能性を確かめる。
「おし、間接部に異常なし、バッテリー70%、強度も───」
つま先でコンコンと床を叩く。
「問題なし、さて───」
雪羅は竹刀を片手にだらんと持つ、先は床についている。
「やろうか・・・」
雪羅の目は先ほどの優しい目ではなく、鋭い集中した目になっていた。
「ッ!!」
直葉はビリビリと何かを感じ取った。それは和人も感じ取っており、それはつい二ヶ月前にまで感じていたものだ。
「あの野郎ォ・・・記憶は無くても、感覚が覚えてるじゃねーか・・・」
和人は頬に冷や汗を流す。雪羅が発しているもの、それは《殺気》《威圧感》。
しかし、和人は今まで感じていたものより種類が違った。例えるならSAO時代の彼の殺気は刃物のような殺気、しかし今は内に秘めたものを発しているものである。和人はあの世界にいたから知っている、『この類いのものは最も厄介である』と───。
「では・・・」
和人は手を上げる、そして───。
「はじめ!」
「はぁあああ!!!」
合図と同時に動き出したのは直葉だった。雪羅は最初の位置から動かないどころか、構えを崩さない。
『どうして?構えを崩さない?』
疑問に思いながら直葉は雪羅に接近する。
「てやあああ!!」
直葉は雪羅の面目掛けて竹刀を降り下ろす。しかし───。
「ッ!!」
「いい面だ、只・・・」
雪羅は直葉の竹刀を片手で受け止め、それを手首の動きで弾いた。
「もう少し、力の使い方を学んだほうがいい・・・」
「クッ!はぁあああ!!」
直葉は雪羅に向かって竹刀を振るう、しかし雪羅は直葉の攻撃を竹刀で受け止め、弾いていく。その行動に和人も直葉も疑問を抱く。
『どうして、返してこないの?』
『あれくらいの動きができるなら返してもおかしくない、寧ろもっと速く決着がついてるはず・・・』
しばらく雪羅は弾いていると───、
「不思議か?」
「ッ・・・!」
「返さない剣士というのは“弱い”、“臆病”なイメージがある。確かにそれは間違いではないかもな、だが、それは偏見だ」
雪羅は弾きながら続ける。
「臆病者に臆病者なりの戦い方がある。それに、“もう十分見た”」
「えっ・・・」
雪羅は数歩下がると構えを変えた。
「焔星剣流・・・二の太刀・・・」
「焔・・・星剣流だと!?」
和人はかつて聞いたその流派を思い出す。
雪羅は直葉との詰める。
「クッ!」
直葉は負けじと雪羅に向かって竹刀を振る、しかしそこには雪羅の姿がなかった。
「えっ・・・!?」
直後、直葉の竹刀は弾かれ、宙を舞った。
そして、雪羅の竹刀は直葉の胴を捉えた。
「星崩し・・・」
こうして、直葉と雪羅の勝負は雪羅の勝利となった。
後書き
疲れた・・・(´・ω・`)
引っ越しって大変なんだな・・・
そして、雪羅が人じゃなくなってる・・・
コメントお待ちしております!!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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