少年少女の戦極時代Ⅱ
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ヘルヘイム編
第13話 募金をしよう -せいか-
「なんかアッチにぎやかねー」
咲・ナッツ組と離れた所で募金している最中に、トモが何気なく言った。
「ふたりともよくしゃべるほうだもの」
「あー分かる。静かにしてると一番にしゃべり出すタイプよねー。わたしらとは逆」
「え、わたし込みなのそこ」
通りがかった人が募金箱に硬貨を入れた。ヘキサは満面の笑みでお礼を言って、去っていく通行人を見送った。
「それにしてもトモ、募金なんてよく思いついたわね」
「ネットしてたらたまたまワクチンの募金広告見つけたの。そっから思いついた。これならわたしたちでもイケるって」
「イケてるイケてる」
しゃべくっていると、一人の男がヘキサたちの前に来た。
「碧沙――?」
「貴兄さん!?」
ヘキサはとっさに募金箱でユニフォームのロゴを隠した。隣のトモも察してくれたのか、トレーナーのロゴの入った部分をスケッチブックで隠した。
それでもお揃いのユニフォームを着ている点ばかりはごまかせないので、貴虎が言及しないことをヘキサは祈るしかなかった。
「どうして兄さんがこんなとこに? 会社、こっちじゃないわよね」
「取引先との関係で来たんだ。通りかかったらお前が見えた。何をしていたんだ?」
「えっと、ボランティアでちょっと募金を」
「募金? ――ああ、そういうことか」
トモの持つスケッチブックを読んで、貴虎は得心が行ったというふうに肯いた。
――碧沙は知っている。ヘルヘイム感染のニュースを一人観ながら、歯を食い縛っていた貴虎。
近寄りがたかったのは、己への憤りと市民を苦しめることへの悔しさが空気に表れていたから。
「なら俺もいくらか出そう」
「ほんと!? ありがとうっ。兄さん、大好き」
ヘキサはいつものように貴虎に抱きつきたかったが、募金箱を持っていたため断念した。
貴虎はスーツのポケットから財布を取り出し、開けた。
「――――」
「兄さん?」
「――すまない。現金の持ち合わせがない」
呉島兄妹の買い物は基本的にキャッシュカードだ。ビートライダーズに入ってそれでは世間で通じないと分かったヘキサと光実は、崩して現金を持ち歩くようになったものの。
「あらまあ」
「いいわよ。貴兄さんのキモチはちゃんと受け取ったから」
「すまん」
貴虎はヘキサの頭を撫でた。外なのに。トモの目を意識して少し照れた。
貴虎が去ってから、ヘキサはトモがジト目で自分を見ているのに気づいて首を傾げる。
「何でヘキサがブラコンなのかちょっと分かった」
「え。わたし、そんなふうに思われてたのっ?」
「自覚なかったのね……」
ヘキサはますます首を傾げた。呉島三兄妹は歳が離れているから一緒にいられる時間が少ない。だからこそ時間が合えば目一杯甘えるし仲良くする。兄妹とはそういうものだと呉島碧沙は思っていた。
余談だが、翌日、今度は仕事ではなく完全なる私用として、貴虎が募金をしに行ったのは言うまでもない。
――ステージと募金とを日替わりで行って2週間。目標額には程遠いものの、(コドモの認識的に)そこそこの金額が集まった。
中でも大きなプラスとなったのは、やはり紘汰と貴虎が入れた額だろう。
咲とトモが鳳梨病院へ行って、病院の事務局で金額ごとにまとめた募金を渡して、リトルスターマインの募金活動は終了した。
「「たっだいま~」」
咲とトモは二人でいつもの野外劇場に凱旋した。
「おかえりなさい。はいこれ、二人の分のジュース」
「きゃー、ありがとーっ」
ヘキサからそれぞれの好みに合わせた炭酸飲料を受け取る。
「んじゃトモ。カンパイのオンドよろしく」
「え、あたし?」
「今回の発案者、トモじゃん。ほぉら、早く早く」
「じゃあー……募金活動のぶじしゅーりょーを祝して」
『かんぱーい!』
六つの缶ジュースが6人の輪の中央でぶつかり合った。
後書き
無事終了しましたとさ。
ヘキサのとこには貴虎と光実どちらを行かせるか地味に悩みました。で、オチがちゃんとつくのは貴虎だなーと結論を出してアレに至りました。光実だと紘汰とやること被りそうなので。
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