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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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八章
  上洛の準備

「・・・・・以上がこの日の本を取り巻く状況です」

説明を締めくくる言葉を聞いて、軍議の場はより一層、静まり返ってしまった。

「そして先日、小谷より放っていた間者と一真の情報がある。・・・・一真」

「はいよ」

久遠に促され、次は俺が説明する事になった。小谷で聞いた事と、俺が放った偵察機による物と合せて報告をした。あと印刷した資料を各家中に配り終えた後に、一枚ずつ説明をしたけど。出来るだけ詳細にして、丁寧にしていたらいつの間にか夜になってた。

「・・・・以上が小谷城の間者の情報と俺が放った偵察機からの説明を終了する」

「難しい事態だな・・・・」

「あの不明の鬼が、越前を落とした何て・・・・」

「事態をややこしくしているのは、まだある。・・・・異人の先兵と言うが、異人全てが敵ではないのだ」

「はい。日の本を侵略しようとしているのは、ザビエルという者を中心とした一派。正確には把握出来ておりませんが、恐らく十人にも満たないらしいのです」

「その十人が外法を使って、越前を落として見せたというのか・・・・」

「それほどまでに悪魔・・・・鬼の力は強いのです。そしてその鬼に対抗できるのは武士しかいない。いえ・・・・日の本に武士が居てくれたこそ、ザビエルの目論見は遅々として進んでいないのだと思います。しかし・・・・」

「越前が落とされた事を考えれば、時間的に猶予はそうないという事ですね」

「・・・・(コクッ)」

エーリカの頷く姿を見て、皆が皆、その表情を一様に曇らせる。

「だが、我の方針は変わらん。天下布武である!」

堂々と言い放った久遠は、勢いよく立ち上がる。

「柴田勝家、丹羽長秀!」

「「はっ!」」

「織田家中、一丸となって上洛する!疾く、完璧に準備してみせぃ!」

「「御意!」」

「上洛の後、公方と合流。返す刀で越前の鬼を根切りに致す!共々、覚悟せぃ!」

「おっしゃー!久しぶりの大戦だぜ!」

「燃える!燃えるよ、真っ赤に燃えるぅ!」

「まぁがんばりましょー」

「うむ。それでこそ織田の母衣武者よ!三若の働き、期待しておる!」

「「「はい!」」」

「上洛には三河勢も呼ぶ。誰ぞ急使に立て」

「では私が参りましょう」

「うむ。頼もう」

「はっ!」

今回の戦は、織田・松平勢の総力を挙げるようだ。速く速く、中山道を駆け下りて、六角と三好、松永を破ってから公方である一葉と合流。合流後に小谷で浅井家と落ち合う流れだと。全てにおいて出来るだけ速く戦をする。皆の奮戦に期待するとな。そして、ここにいる者全員が、戦支度に取り掛かるために駆けだす。

「第一歩だな・・・・」

「・・・・・・・・」

無言になる久遠。久遠は誰もいなくなった上段の間の天井を睨みつけていた。

「・・・・久遠。今、久遠が考えているのか、当ててみようか?」

「・・・・・・・・」

「未知の敵との戦いを始めなければならない不安と負ける事の出来ない、これからの戦への恐怖。仲間を危険に晒す事も。そして危険な状況が続いた後での、自分に向けられるかもしれない不信を想像して、臆病になっている。とこういう事か」

「・・・・・ふん」

認めたくないのか、そっぽを向いてしまった。俺は久遠に近付き、俺はその小さな顔を両手で包み込んだ。

「な・・・・・・」

「なぁ久遠。いい加減素直になろうぜ?俺は久遠を支えるためにここにいるが、俺だけではない。仲間達全員だ。過去に何かあったかは知らんが、ここにいる者達全員はお前を支える事を喜びにしている者達ばかりだ。それにな、神の言葉は信じられないか?仲間を信じろ、俺を信じろ、自分自身を信じろ」

俺はそのまま翼を展開し、俺と久遠に包み込んだ。

「・・・・・そんな事、出来るはずが」

俺は翼を温かくしながら久遠にキスをした。一瞬の出来事でパニックになっているが、翼の所為か落ち着きを始める。長くキスをしていたが、誰か来ると察知してキスをやめた。そして翼も閉じた。

「俺の気持ち、伝わったろ?」

「うむ・・・・やはり神というのは伊達ではないな」

「あ、いたいた。軍議が終わってから、いつまで経っても来ないから呼びに来たわよ」

「悪い悪い。少々久遠と話してた。でも最初からいただろう?お前ら」

と言ったら、隠れてたような隠れてないような。いつもの三人がこちらを見ていた。顔を赤く染めたが、俺は久遠にだけ聞こえるように言った。翼で隠れていたから問題ないと。そしたら礼を言ってきたけど。その後、キスする前から見ていたと言ったら逃げてったけどな。

「さてと、一真隊の面々もいるし、俺達も準備はしないとな」

「はいっ!って言っても、出陣はまだ先ですし、時間はありますからね」

「次の戦は長丁場になるでしょうから、時間をかけてしっかりと準備をしないと」

「その辺りは任せる。黒鮫隊については任せろ」

「「はいっ!」」

「詩乃は、って詩乃はまだ腹が立っているのか?」

詩乃はどうしてその事を?と言ってたから、神の勘だと告げた。ここで結菜が、風向きが変わるかもよと。さて、ご飯を食ってゆっくりと寝るとしましょうかね。あの時久遠を落ち着かせるために、使ったあの力は結構体力を持ってかれる。あれは愛する者しか効果のない輝きである。  
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